第二十八話 助けに来たんだ
格納庫を飛び出して、まずは状況を確認しようと飛び上がる。
跳躍の時点で機体の性能に驚くのに、更には背部ジェットが莫大な推進力を生み出し金切り声を上げるようにして機体を空へと押し出すのだから口の端が吊り上がってしまう。
確かに今日はラウラの言う通り良い天気で、空から見下ろす公都の街並みは美しく陽に照らされている。
そして不釣り合いな兵器達もよく見えた。
『敵は大した補給も受けられていない非正規部隊だ!軽く蹴散らせ!』
『おい!劣等種の部隊はまだ来ないのか!?』
混沌とした状況に陥っているのはオレだけではないようだ。
無線からは怒号が聞こえて来る。
(狙うは総督の首!怪しげな計画を実行に移す前にノゥルを取り戻すぞ!)
(潜入した同志達が上手く撹乱してくれているようですね。出て来ているのは殆どエルフだ)
眼が捉えたレジスタンスの通信は整然として、やはり総督殺しを計画したのはオレ達だけではなかったようだ。
そして今日を決行としたのもヤドリギ計画に呼応しての事。
三つ巴……と呼ぶには第三勢力はオレ一人。
更には目的が一応同じなのだからどうしたものか困ってしまう。
ともかく丁度良い戦場を見繕って膠着状態を作り出し、総督が安心して作業を進める事が出来る状況を作り出さなければ。
機体は落下軌道に入り、着地地点はそこそこの数が集まっている太い道路。
アルラウネの武装はゲテモノを除けばライフルと剣というシンプルなもの。
今までと異なる点は一つ、魔力を用いる事。
(なんだ!?上から──)
(この音……十年前の、あの時のっ!)
引き金を引く度に光が迸り、レジスタンスのゴーレムを穿ち道路にまで余波を届ける。
赤い飛沫が血のように飛び散って、手脚を失ったゴーレムが地に伏してゆく。
目的は同じなのだから命を奪うまでしなくても良いだろうと、無力化に留めて。
『蒼いゴーレム……?まあ良い、味方なんだな?レジスタンス共は有象無象だが数と勢いだけは大した物だ、手を貸せ』
無線に応えるのは不味いだろう。
エルフの機体に劣等種が乗っているなんて、と激昂されるのが目に見えている。
返答はただレジスタンスのゴーレムへの銃撃で示す。
『寡黙だが腕は確かか。乗っているのがかつての英雄なのかそうでないのかは知らんが、この場は任せた。我々は孤立した味方の救援に向かう』
エルフのゴーレムは去っていって、この場に残るのはオレとレジスタンスのゴーレムのみ。
ジリジリと、包囲するように動く何機ものレジスタンス戦力に対してオレは単独。
不利を重ねたこの状況で、一つ試してみる事にした。
(この機体……何故、大公から授からねば纏う事の出来ない蒼で機体を染めている?)
この色にはそんな意味があったのか。
それはつまり、ラウラがオレを認めたという事。
ただそうは受け取ってくれないだろう事は分かる。
(長耳の悪魔め!我等から誇り高き蒼すら奪うというのか!)
案の定、レジスタンスの精神を逆撫でしたアルラウネに銃口が向けられ間を置かず鉛弾が殺到する。
だがこの機体なら来ると分かっている攻撃ならば容易く回避可能だ。
飛び上がり、反撃には気になっていた武装を展開する。
背部に格納された自在魔力砲塔はその名の通りにゴーレムサイズの短杖の見た目をしていた。
それを幾つも射出して、その一つ一つがオレの意識と繋がって意のままに宙を滑る。
全てがオレの眼、オレの触覚。
先端から光線を放ち、ゴーレムの関節を狙って溶断する一連の動作は流れるように……あっという間にオレを包囲していたゴーレムは四肢を失い地に伏せた。
(速過ぎる……)
(これはまさに、あの時のゴーレム……ならば戦えるのはあの方しか)
機体の調子は万全だ。
思うままに動いてくれる。
本当の意味でゴーレムと繋がって一つになったような感覚が、戦いの中で僅かな隙すら生じさせない完璧な動作を実現させた。
これは凄い機体だ。
だが、ワンドを使ったからだろうか。
再び鼻血が垂れてきて、拭った手の甲はさらに血に染まった。
「ウヴゥ」
呼吸も少しゴロゴロと引っ掛かるような感覚が混じっていて、調子の悪さを無視出来ない。
機体はこんなに調子が良いというのにままならないものだ。
『こちら南街区!お、おうえ、応援──ぁああ!?』
『クソッ!劣等種如──』
『貴様の飼い主が誰か忘れたのか劣等の騎士がぁぁ!』
無線機から悲鳴が聞こえる。
エルフが立て続けに少なくとも三機落ちるような戦場が南にあるらしい。
流石にその勢いでエルフ側の戦力が削られては総督は逃げ出してしまう可能性がある。
だがそれは困る、なんとしてでも今日殺さなくてはならないのだ。
その為にはやはりオレが南に向かって、戦力の均衡を維持しなくてはならないだろう。
機体を南に向け、飛び上がらせる。
市街を渡る高架を足場に南へ移動し、目当ての戦場を探す。
戦いが激しいのなら音や光で多少は目立つと思ったのだが、無線から聞こえた南街区の高架の上から街を見渡せどもゴーレムの姿は見当たらない。
『……なんで』
無線が捉えた声は聞き慣れたもの。
同時に高架上に現れた蒼い機体、四脚の特徴的なシルエットに大きな騎乗槍が相手が誰かを疑いようなく示していた。
『なんでそんな機体に乗ってるの……?』
アリナは無線越しの荒い音質ですら分かる程に動揺している。
それは、こちらも同じなのだが。
『その蒼、ラウラが関わって……?』
その疑問に答える能力をオレは持っていないのだ。
ラウラに連絡してみろとも言えないし、オレが繋げる事も出来やしない。
かと言ってこのままラウラの居る城まで素通りさせるわけにも、いかないのだ。
『狼ちゃん、もう休んでいいの。これから私達はノゥルを取り戻す。そうしたらもう、戦わなくて良い……だから退いて』
「ヴゥ」
『もう命令を聞く必要なんて無いの。分からない?』
「ヴゥ」
『エルフに心まで支配されたわけじゃないでしょ!?』
ゴーレム越しに向き合って、それでも空気が張り詰めているのが分かる。
まだ武器こそ向けていないが、いつでも攻撃に移れる状態である事は明白だ。
こちらの状況を伝えられたら、アリナは協力してくれただろうか。
『リシルはもうすぐそこまで迫っているの。そして容赦なんてしない。エルフを倒す為ならこの街を焦土にする事だって躊躇わないんだから……私達の手で取り戻すしかない』
ラヴィーニが槍を構える。
『乱暴な手を使ってごめんなさい。でも大切なものを守る為の手段はこれしかない!』
高架上を滑るように、ラヴィーニが迫る。
手にする槍は先端から熱線を放つ警戒すべき物。
だが間合いの外の遠距離ならばこちらが有利。
ライフルの連射で牽制しつつ距離を取る。
『黙っていた事、怒ってる?』
スクロールから魔弾を放ちつつ、アリナは友人と喧嘩でもしたかのような事を言う。
機体推力で振り切って、装甲を動かし損傷を抑えて反撃の機を狙うがアリナはやはり巧い。
巨大な武装を扱う為に脚を増やして、あのラヴィーニは相当扱いづらいはずだ。
だというのに、あの鈍重な機体でこちらを捉えて離さない。
『公都まで後退した時にレジスタンスからの接触があったの。ラウラに危険が及ぶから最初は断っていたけど……このままだとリシルと公都で戦う事になるから協力する事にした』
ワンドを展開して光線を放ってみても装甲の分厚いところで受け止めて、ワンドを掴んだり蹴り飛ばしたりして浮遊する他のワンドにぶつけるのだ。
しまいには槍の先から放つ熱線で薙ぎ払うのだからアリナの戦いは滅茶苦茶。
四つ脚をダンスでも踊るようにバタつかせ、攻撃を回避する動作全てが交感無しのマニュアルというのだからとんでもない。
『分かるでしょ?エルフにとってここは変えが利く占領地の一つでしかない。私にとってここは故郷。貴女だって大切な友達の一人!』
高架上を飛び回り、遠距離では埒が開かないと時に肉薄して左腕のブレードで斬り掛かる。
槍で受け止めパイルバンカーで牽制し、四つ脚故の独特な間合いをアリナは見事に使って戦いづらい。
斬撃は装甲を掠める程度で留まって、有効打が決まらず膠着状態に。
『それを使い捨てるエルフの走狗になんてなっちゃダメ!私がそうはさせない!』
至近距離でライフルの射撃も斬撃もワンドの照射も駆使して攻め立て、アリナは見事に受け流す。
ダンスのように一進一退、オレとは違い交感による直感的な操作も精密動作も出来ない筈なのに大した物だと正直驚く。
『だからちょっと眠ってて──アンタは左の注意が薄い!』
ラヴィーニがドリフトするように、推力任せのスライドで回り込む。
オレの左方、槍を構えて先端の砲口の奥には火が点る。
装甲を集中させたとて、喰らえばただでは済まない一撃。
それを撃つ左方は確かにオレの警戒の薄い部分なのだろう。
いつも負傷も損傷も左側だった。
だが……もうオレに意識の外なんてものは無い。
「ッヴアア!」
ワンドはこの時の為に待機させていた。
槍の基部、熱線を放つ為に高エネルギーを蓄えた箇所に光線を幾条も放つ。
金属が赤くなり、程なくして発射機構に到達……暴発。
けたたましい音と激しい光が迸り、アリナのラヴィーニがたたらを踏んだ。
『チッ……これくらい分かってるか!でも──!?』
光刃を一振り。
左腕ごとパイルバンカーを斬り落とす。
『速いっ!』
アリナが即座に飛び退く事も分かっていた。
こんな時の為にワンドがある。
『背中!?』
光線の照射により背負ったコンテナ──スクロールを破壊。
これでアリナのラヴィーニに残る武装はただ槍としての機能しかない金属塊のみ。
それを持つ機体自体も先程の高エネルギーの暴発により損傷を受けている。
『その機体……ほんと嫌い。一度も勝てた事ないし』
「……」
『勝ち誇るくらいしてよ。私、これでも相当なもんよ?』
確かにアリナは強い。
強いが、今のオレの敵ではなかった。
経験の差を機体性能と強化の差が凌駕して、こちらは大した損傷を負わずにアリナを下す結果に至る程度には。
銃口を向け、あとは手脚を撃ち抜いて無力化しておけば良いだろう。
『じゃあ力押しは無理だったから感情に訴えかける。これ以上戦っちゃダメ』
「ヴゥ……」
『あの子が……444号が生きてるの』
「──ア?」
444号が……生きている?
どうやって?
油断させる為の嘘?
何故?
何を言っているんだ?
『アリナさんと戦っちゃだめ!』
アリナの言葉に意識を割かれ、急速接近する赤黒の機体に気が付かなかった。
大きな盾を構えて突撃してくるそれに慌てて射撃を行うも、盾の表面で光が霧散しまるで効かない。
一度乱れた集中は中々元には戻らず、飛び退くべきだと気が付いた時には盾で押し込まれて高架から突き落とされていた。
『聞こえる!?聞こえるよね!』
赤黒の盾の表面には何かの力場……魔力障壁か、それが張り巡らされている。
慌てて稼働させて集中した装甲と触れ合いバチバチと激しくスパークを放つ。
赤黒の機体、ヴェールが放つ閃光……嫌な事を思い出す。
『わたしだよ!444号!』
このまま機体を地面に叩きつけられては堪らない。
盾を蹴り込み、地面スレスレで飛び退いた。
『聞こえてる……?448号だよね?』
赤黒の機体が立ち上がる。
背中から伸びたサブアームで大きな盾二枚を保持した頑強な機体。
この色は、スコーチ部隊の機体だろう。
「……ッ、アー」
『そう、だよね!そうだよね!会いたかった……』
オレの知る444号よりも饒舌だ。
それに機体も、タイミングも、何もかもがオレを追い詰める。
本当に444号ならここに居るべきじゃないし、騙る意味が分からないから偽者なら余計に混乱してしまう。
アリナは何処だ?
あの人に説明してもらいながら444号も無力化しなければ……
『助けに来たんだ。わたしみたいに首輪を取ってもらって、そうしたらもう戦わなくて良いの』
ライフルを撃つ。
手足を撃ち抜けば良いだろう。
当てる気で何発か撃ち、全てが盾に防がれる。
反応の速さは流石強化兵か。
『っ!ねぇ!戦わなくていいの!助けたいの!』
ワンドで包囲し、防御の死角を狙って追い回し……ライフルは盾を懸架するサブアームを狙う。
あの厄介な防御を取り除かなければ無力化どころではない。
『チョコレートを一緒に食べよう!?他にも沢山やってみたい事があるの!二人で一緒に!』
……心が痛む。
こちらの攻撃を防ぐばかりで反撃する事もなく、必死に説得しようとしているというのに無視して一方的な攻撃するというのは。
しかしこちらだってやらなければならない理由がある。
このまま444号を行かせてしまえば何が起こるか分からない。
総督の支配を受けてどんな状態になってしまうのか分からないのだ。
やはりこれはオレがやらなければならない事。
アルラウネの高機動を活かしてワンドと共に苛烈に攻めて、盾を蹴り建物を蹴り宙を舞って縦横無尽に光を叩き込む。
だがしかし、防御があの機体の長所なのだろう。
中々決定打に繋がらず焦れていると、飛び上がったオレよりも高い位置からゴーレムが飛び掛かってきた。
『話聞きなさいって──』
いなすように、降ってきたアリナの機体を蹴り込み地面に打ち込む。
破損したボロの機体では着地すらも負荷が掛かって火花が散る激しいもので、スピンしながら体勢を整えていた。
『言ってんのにもおおおお!頑固過ぎる!こうなったら叩きのめして無理矢理引き摺り出すわよ!』
『でもっ……うん、分かった』
444号はいよいよ反撃をするようで、ゴーレムは2丁のライフルを構えてこちらを見据えている。
アリナも唯一残った武装である槍を片手で構えて444号と並び立つ。
二人を相手に、更には殺さず無力化をしなければならないとは面倒だ。
だがこれはオレがやりたいと思った面倒、やると決めた面倒だ。
ならそれに挑む時にはもっと前向きにやらないと。
『絶対に、助けるから!』
444号の射撃を回避し反撃に一発……割り込んだアリナが槍を盾にして防ぐ。
続いて二射、三射と撃ってみても、やはりアリナは容易くはやられてくれない。
射撃武装としては使えなくとも、金属の塊だけあって槍は相当な防御だ。
軋む機体を操って、片手で槍を引き摺りながら構えて脚を止めずにどんどん肉薄してくる。
『そんなに強いのにエルフに従うだけしか出来ないんじゃ意味ないって分からない!?』
言葉が出てきたなら、誤解を解くくらいは出来ただろうに。
ラウラと話して貰えれば、とも思ったが通信は繋がらず。
結局オレに出来るのは殺さないようになんとか無力化を試みる事。
広く展開して挟み込むようにする444号への牽制射撃と接近戦を仕掛けてきたアリナの相手を同時にこなし、ワンドを操作し射撃に対する防御として装甲を動かし続ける。
再びポタポタと垂れる鼻血を自覚するが、これを拭っている暇は無い。
機体は酷い有様でもアリナはエースで、444号はオレと同じ強化兵。
脳が引き裂かれるような集中を全方位に広げて維持し続けなければ負けすら有り得る。
(私が注意を引き付ける、建物の影に隠れて奇襲して!)
(で、でもアリナさんの機体はもうボロボロで……)
(これでも私って強いんだから!任せといて!)
特に何かしらの策に嵌ってしまえば。
誰も知らないだろう、オレの見えない左眼が通信の傍受をしているなどとは。
慎重に、ごく自然に444号から注意を逸らしたように見せかける。
目の前のアリナの粘り強くしつこい接近戦に苛立っているような、そんな素振りを演出した。
その甲斐あって444号は姿を消して、代わりに左眼が建物を挟んだ向こう側に魔力の反応を捉えている。
『アンタに黙っていた事は謝るわ。リシルに仲間を殺されているから、そこと繋がっているレジスタンスとの協力は嫌がるかと思ったの』
聞いていたら多分、受け入れたさ。
オレはアリナからだとどんな風に見えていたんだろう。
そんなに頑なで、信頼に値しない存在だっただろうか。
ラウラより先に声を掛けられていたのなら、それが待ち望んでいた機だと思って協力しただろう。
『信じられなくてごめんなさい。でも貴女を守りたかったのは本当の気持ち……だから!』
アリナと444号が何らかの動きを見せるより先に、銃口を建物に突き付けて引き金を引く。
準備していた最大出力を叩き込まれた白い石材の美しい七階建は、大きく赤熱した風穴を開けてその向こうに居る赤黒の機体……そのサブアームの一本を撃ち抜いた。
『なんで!?』
444号が驚愕の声を上げて硬直している隙にワンドと光刃を奔らせ、アリナのラヴィーニの残る隻腕と四つの脚を落とす。
『その強さ……まだ辿り着けないの──!?』
一歩遅れて現れた444号を待ち構え、斬撃と蹴りで防御を暴く。
『まっ……っ!お願い!助けたいの!一緒に居られるならそれだけでいいの!』
後退する444号に一足で追い付き剣を振る。
斬り落とされたライフルの半分が転がった。
『話をしたいの!ずっと一緒だけど貴女の事何も知らないから!』
あとは遮るものが無い。
推力を上げて、コクピットのある胸部への蹴りの一発にて終わり。
ガン、と金属同士の衝突音が響く。
案外と小さく、しかし確かに内部へ衝撃を浸透させる一撃。
『おねが……い』
赤黒の機体はそのまま仰向けに倒れ込み、無人の市街に二つの人型が転がった。
片方は四肢──六肢だろうか──を失っているが。
「──フゥ」
ようやく鼻血を拭う事が出来る。
そろそろ手の甲がべっとりと血塗れなのだが、襟も垂れた血で濡れているし態々お気に入りのコートの袖で拭いたくもない。
「ゴホッ!ゴボッ……」
ああ、少し水っぽい何かが通った感じがする。
やむなしに口内に溜まったものをコクピットに吐き捨てて、そのまま何度か咳き込む。
『調子はいかがでしょうか448号さん』
無線機からはいつもの調子のラウラの声。
だがその後ろからは銃声や爆発音が聞こえてきている。
何をやっているんだか。
「……アァ」
『生きていて何よりですわ。私は城内の掃除に掛かり切りでして、これから一層忙しくなるかと』
つまりエルフは外からはレジスタンスに、内側からはラウラに挟まれている状態なのか。
こうなったのは因果応報だろうが、あまり追い詰め過ぎても計画に支障が出る筈だ。
『通信を押さえましたので総督の現状を把握出来ています。現在、総督は公都地下にて霊樹との接続作業を行っているとか。仕掛けるのであれば今ですよ』
「アァ」
『少し元気を取り戻されましたか?公都の地下道は頭に入っていますわね?近くの入り口から侵入し、総督の為の地下墓地へどうぞ』
そうだな……この城が総督の墓標、反逆の成功を記すモニュメントになるだろう。
全身に力を込め直し、機体を飛ばす。
本番はこれからなんだから、まだ死ねない。
あの日出来なかった444号を守るって想いも、幾つもの後悔もこれから取り返せる。
オレの死に場所はこの先にあるんだから。




