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第一章 狂人ダガー 1
無限に広がる青い空、小さな雲ひとつない快晴、嗅いだ記憶のない草や潮の混じった空気の匂い。
村はどうした?焼かれてしまったのか?いやそんなはずはない。だとしたらこの大草原はなんだ?
……いや、よく見てみればここは村があった場所の景色とは全然違う。こんな近くに海なんてなかったのだから。あの魔族の攻撃で、どこか遠くまで飛ばされてしまったのだろう。
…その割には、足元もその周囲も随分と綺麗なんだけど。
「おーーい!!」
遠くから誰かの声が聞こえる。ゆっくりと振り返ると片手剣と大きな盾を背負った少年がこちらに向かって走って来ている。見覚えはない。
「おいリオン!何やってんだよ!そろそろ稽古の時間だぞ?時間に遅れると連帯責任だ!って全員のしごきがキツくなるんだからよ?お前だってわかってんだろ??」
……どうやらこちらに向かって話してるみたいなんだけど、どうやら人違いをしているらしい。稽古?リオン?全く身に覚えがない。
だってオレの名前は、
………名前は、、、
………名前が、思い出せない…だと……?