心と意思
時々、自分にはふたつの人格があるように感じる。
ひとりは頭で思考していて、もうひとりは心で思考している。
もちろん、そんなことはありえない。
思考を司っているのは頭で、心が司っているのは感情だ。
考え事をして頭が疲れることはあっても、心が疲れることはない。
それなのに、気がつけば心で思考してしまっている。
いろんなことを考えて眠れない夜、
意識の存在している場所が頭ではなくなってしまう。
まるで僕のすべてが心になってしまったように、
頭では何も考えられなくなる。
この瞬間だって、意識こそ頭の中に存在してはいても、
僕を支配しているのは心のほうだ。
心ではなく頭できちんと思考できている僕は、
滅多なことでは姿を現してくれない。
彼が出てきてくれているときは、
不安も怖れもきれいに消え去ってしまうのに。
もっとも、彼は出てきてくれたとしても一瞬だけ。
すぐにいなくなって、どこかに行ってしまう。
子供のときから、彼のことを殺してばかりだったからなのだろう。
もう少しだけ、僕に勇気と自信があったなら。
見放されることなく、つなぎとめることができていたのかな。