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悲しい理解
突然、理不尽に怒りだして癇癪を爆発させる。
話を聞こうともせずに、延々と説教をしてくる。
同じことを自分がしたときは、言い訳ばかりして認めない。
家族を置いて、ひとりで先に進んでいったり、勝手な行動をする。
大嫌いだった父親の行動の理由が、いまとなっては理解できる。
大人になったからといって、
誰もが自分の未熟さに対処できるわけじゃない。
誰もが心の中に抱えているものがあって、苦しみながら生きている。
本人にも、どうしようもできないことだってある。
そもそも僕と比べたら、父親は遥かに立派な人間だった。
僕は、怒ったところが想像できないとよく言われる。
優しいだけではダメだとか、友達みたいに仲良くする必要はないとか。
実際、それは間違っていないのだろう。
教師をしていた父親には、生徒からの年賀状が毎年届いていた。
僕には、誰からも届かない。
人間としての価値がないのは、いったいどちらなのだろう。
とても小さく見えた父親の背中。
僕には、その背中すらもない。