壊れたおもちゃのように
自分にとって大切なものを乱暴に扱う人はいない。
買ったばかりの本に折り目をつけたい人も、
買ったばかりの服を汚したい人もいない。
逆に言えば、そうでないものは乱暴に扱ってしまえる。
つい本を開いたまま伏せてしまったり、
この服なら汚れてもいいやと着替えなかったり。
新品の本についた折り目や買ったばかりの服についた汚れは、
気になって気になって仕方ないくせに。
もっとも、気になって仕方ないのは最初のうちだけだ。
どんなものも使っているうちに劣化していくし、
そのうち折り目も汚れも気にならなくなってしまう。
病的なまでに気になっていた自分のことが馬鹿らしく、
理解不能に思えてくるぐらいに。
そのくせ同じようなことがあると激しく落胆し、
絶望的な気分になってしまうのだから救いようがない。
完璧なものが台無しになってしまったように感じられて、
すぐにまた新しいものに買い替えたくなってしまうのだ。
きっと、自分に対しても同じなんだろう。
ちょっとした傷が気になって、
自分にはもう価値がないように感じてしまう。
壊れてしまったおもちゃに腹をたてる子供のように、
こんなのもういらないと投げ捨ててしまいたくなる。
最初から完璧にはほど遠くて、小さな傷だけではなく大きな傷も、
修復不可能な亀裂もたくさん入っているのにね。