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埋められない溝
どんな人とでも、埋められない溝はある。
どれだけ一緒にいても、どれだけ距離が近くても。
すべてを理解できるわけじゃないし、理解してもらえるわけでもない。
好きな食べ物、趣味、休日の過ごし方、些細なことでさえも。
たとえ血のつながった家族であっても、理解しあうことは難しい。
親と子では立場が違うし、兄と妹でも立場は違う。
それぞれ見えているものが異なっているし、
他人の目にどう映るかも異なっている。
理解することができたなら、溝は埋められるのだろうか。
残念なことに、理解できるからこその苦しみも存在する。
溝を埋めるのに必要なものが理解できても、
それを持っているとはかぎらない。
実をともなわない言葉だけでは、どうしようもないこともある。
そこに真実があったとしても、
きっと上辺だけの言葉にしか感じられないだろう。
埋められない溝の向こうを眺めながら、今日もまた自分を傷つける。
そうすることでしか、生きていることを許せない。