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不変の事実
この瞬間、僕のタイピングによって言葉が生まれている。
そこには僕の意思が存在しているし、
指先の動きやタイピング音も存在している。
周囲には見慣れた物たちが置かれているし、
肌を通じて室温を感じることだってできる。
この文章を読んでいるあなたにとっても、それは同じだろう。
そこには意思が存在しているはずだし、
見慣れた物たちや室温だって同様に存在しているはずだ。
あなたが一年後の誰かでも、十年後の誰かでも、
百年後の誰かでも同じことだろう。
もちろん、百年後には間違いなく僕は生きていない。
十年後だってわからないし、一年後だってわからない。
でも、この瞬間の僕は生きているし、この瞬間のあなたも生きている。
時間と空間を超越して、生と死でも死と生でもなく、
生と生がつながっている。
他の文章も同じで、どの言葉も生きている僕が書いたものだ。
そして、誰かに文章が読まれているとき、その誰かも生きている。
そこに死者は存在しておらず、生きている人間だけが存在している。
この瞬間から、どれだけ時が経ったとしても。