僕は「僕」
小さいころ、自分のことを僕と呼んでいた。
それが俺に変わったのは、小学校高学年のときだったと思う。
自分のことを僕と呼ぶのが恥ずかしくなり、
ちょっと背伸びした気持ちで俺と呼ぶようになった。
それからはずっと俺を使っていたけれど、
いつからか女友達の前やネットでは僕を使うようになった。
当時の僕は父親を憎んでいて、同性なのに男が怖くて苦手で、
女性と話すほうが格段に楽だった。
男性と一緒にいるときよりも自然体でいられたし、
こんな僕のことを女性のほうが理解してくれた。
少しだけ複雑ではあったけど、
男性と話すのが苦手だけど僕は話しやすいとか、
文章だけだと女性みたいと言われたりもした。
やがて、男っぽい一人称を使っていることに違和感を覚えるようになり、
自分にふさわしいと思えるものを使うことにした。
それはいまでも変わってないと言いたいけれど、
いまではネットでもリアルでも自分のことを僕とは呼んでいない。
こうやって文章を書いているときだけ、
僕は「僕」として存在することができている。
時々、どちらの自分が本当なのだろうかと思うこともある。
こんな僕なんか捨て去って、
俺として生きたほうが楽なんじゃないかとも。
でも、どちらが自分らしいのか、どちらを大切にしたいのか。
その答えは決まっている。