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窓際の夢  作者: 桜瀬悠生
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矛盾

 昔、言葉がでなくなってしまったことがある


 スーパーでのバイト中、お客さんにクレームを言われたのが原因だった。


 普段は大丈夫でも、レジに立つと言葉がでなくなってしまう。


 必要最低限の言葉だけを、なんとか喉の奥からしぼりだしていた。


 全神経を集中して、全身の力を使って、蚊の鳴くような声を。


 仕事の日は、二時間寝ては起きてをくりかえすようになったこともある。


 でも、コンビニでバイトするようになってからは接客が得意になった。


 いわゆるクレーマーの人にも、きちんと対応できるようになった。


 仲のいい常連さんもできて、なかには好意を寄せてくれた人もいた。


 だけど、自分が客側になるとダメだった。


 何かを聞くのも緊張してしまうし、


 ひとりでお店に入るのも得意じゃない。


 他人が怖くて、


 どんな人も自分とは違う世界に住んでいるように感じられた。


 でも、他の人からは話しやすいと言われたり、


 嬉しい言葉を言われたりもした。


 おもしろくて優しいし、彼女できないなんてことないよ。


 もしかしたら、


 それが本当の僕なんだと信じればよかったのかもしれない。


 臆病で緊張しやすく、


 他人が怖くて仕方がない自分から脱却できるはずだと。


 でも、僕が怖いのは他人だけではなかった。

 

 自分には心がないのではないか、


 他人の気持ちがわからないのではないか。


 それが真実なら、僕の中に矛盾はない。


 僕の親しみやすさも優しさも、きっと偽りなのだろう。

 

 少なくとも、僕の中にある盾は矛によって貫かれている。


 自分を罰するように、何度も何度も。

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