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旅には出会いが付き物ようです(2)

ネグルカと旅を始めてはや一年。案外、2人で楽しく過ごしていた。

そしてまた今日も、いつものように魔物を狩っていた。


「ネグルカ、そっちの魔物頼むぞ。」


「分かったよ。」


オークの群れに囲まれた…いや、囲まれにいった僕達は、そう言って互いに違う方向へ踏み込むと、

ドカンッ とネグルカが火炎魔法を放った。僕も負けじとオークを処理していく。


「グォー!!」


「おっ、オークキングのお出ましか。ここは僕がっ!」


シュパッ、ゴトッ


オークキングの頭が地面に転がった。5年も剣を握れば、少しは体に慣れてくるもので、オークキングくらいならば一撃だ。

ふぅ、今日の仕事はこれでおしまいかな。


ドカンッ!


はぁ、またネグルカが暴れ始めた…

ここ1年一緒にいて分かった事がある。いや、会った時からわかっていたかもしれないが、

ネグルカの精神年齢子供すぎだろっ!

僕が毎回「魔物の素材は売れるから、無闇に傷つけるなよ。」と言っているのに、なんで毎回ドッカンドッカン吹っ飛ばすだよ!


「おい!ネグルカ!」


「んー?」


「んー?じゃない!今すぐ爆発を止めろ!素材が燃える。」


「あー、その事か。遊んでたのにつまらない奴だな。」


いつも事だが、どんどん頭に血が昇ってきて、顔が熱くなってきた。


「遊ぶな!それは換金するんだ!」


「はいはい。分かった分かった。そうカリカリするなって。」


「カリカリなんかしてない。それに、もう終わったなら、とっとと解体するぞ。日が暮れる。」


そう言って、作業に取り掛かろうとした時。


ドカンッ!!!


近くで爆発が起こった。僕は反射的にネグルカを睨んだ。


「いやいや、今のは俺じゃないから!」


「本当か?」


「本当だよ!」


絶対に怪しい。また何か悪戯しているに違いないと思ったが、万が一何かあってはいけないと思い、音がした方向に走り出した。


爆発が起こったであろう場所に着くと、そのには豪華な馬車と護衛と思われる騎士、そしてその周りを黒いローブを纏った人間が囲んで戦っていた。


「ほらな、俺じゃなかっただろ!」


自慢げに言うネグルカを横目に、僕は今来た道の方を向いた。


「えっ?まさかコルム助けないのかよ?」


そう言って驚いた表情のネグルカは僕の手首を掴んできた。

確かに、今まで魔物に襲われてた人を助けた事は何回もあったから、ネグルカは僕がこの場面で助けない事を疑問に思っても仕方ない。


「あぁ、助けない。」


「なんでだよ!このままじゃ、馬車に乗ってる女の子死ぬぞ!それでもお前いいのかよ。昔の友はこの時は助けるべきだって言ってた。それに、オークの解体なら後ででいいだろ。あんな奴ら、俺達ならすぐに片付くって!なっ、だから、助け…」


「うるさい!そんな事分かってる!」


「じゃあどうして!」


分かってる。ネグルカに言われなくても。

確かに、前世の僕だったら間違いなく助けに行っただろう。でも、今は前世じゃない。僕には対人戦で致命的な欠陥がある。


「僕には…魔力がないんだ。魔力がなきゃ対人戦で勝てるわけが無い。」


これは旅に出てから知ったのだが、通常冒険者などの戦闘業の人は魔力で身を覆って保護している。それ故に、魔力を通した剣でなければ傷さえ与えられない。


「そんな僕が行ったって、すぐにやられて死ぬだけだ!」


言葉にした途端、自分の無力さに虚しくなった。惨めな顔をネグルカに見られたくなくて、つい俯いてしまった。


「なんでだよ。別にお前1人で戦うってわけじゃ無いのに… そんなに嫌なら、俺1人でいく。お前は帰ってオーク捌いといて。」


そう言って馬車に向かって歩くネグルカの背中を僕は見ているしかなく、情けなかった。

そんな僕を置いて、あいつはどんどん敵を倒していった。たった一言、「僕も行く。」そう言えばよかったんだ。たった一言。それで僕は彼の隣に立ててた。

魔力も無ければ、根性すら無いのか僕は…


そんなことを思っているうちに、殆どの敵が倒されていた。

だが、倒れている中にまだ意識のある者がいた。しかも、その事にネグルカは気が付いていない。そして、ネグルカ目掛けて走り出した。


「うぉー!」


ザシュッ


近くにいた騎士の1人が気が付き、呆気なく倒してしまった。いつもなら僕がやってることなのに…役目を奪われた。そう直感的に感じた。彼は僕がいなくてもやっていける、そんな当たり前なことを再確認した。


「おい!コルム!帰んないならこっちに来い!」


ネグルカがこっちを向いてニカッと笑っていた。既に黒いローブの人達は全員倒したようだった。

あんなことを言っておいて、行ってもいいものだろうかと躊躇してしまった。しかし、さっき行かなくて後悔したことを思い出し、ネグルカの方に走り出した。


僕が着くと馬車の中から、長い深紅の髪に黄金の目を持った華奢な女の子が降りてきた。


「ありがとうございます。助かりまし…」


ふと後ろから人の気配がした。

シュンッ

気がついたら剣を振っていた。相手が魔力で覆われてたら返り討ちにあっていた。しかし、そんな事を考える前に本能的に剣を振っていた。

幸い、魔力に覆われてなかったようで、目の前で倒れた。すると、ネグルカは凄く嬉しそうな顔をして、僕の頭を撫でてきた。


「な!コルムも出来るじゃ無いか!」


「今のは…まぐれだ。それに手、やめろ。」


「でも出来ただろ。」


だからまぐれだって言ってるだろと反抗心はあったものの、そう言われるのがどこか嬉しく感じていた。


「えっと、よろしいでしょうか?途中で途切れてしまったので、改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました。後の処理は私達にお任せください。」


「分かりました。では、僕達はこの辺で失礼します。」


そう言って来た道を戻った。


「このお礼はいつか必ずお返しいたします!」


そう少女が言っているのが遠くて聞こえた。

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