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旅に出会いは付き物のようです。(1)

旅は至って順調だった。

知能の低い魔物は自分の身を魔力で覆って守るということを知らない。そのため、魔力がない人間でも剣で切る事ができるのだ。普通に剣が通用するのなら、サイズが大きかろうと、凶暴だろうと、僕には何も問題はなかった。

魔物の情報を集めて、魔物を狩り、素材を途中の街で売ってお金にする。そしてそのお金で旅の物を買い替える、そんな毎日だった。


旅を始めて半年ほど経ったある日、いつもと同じ様に情報を集めようと、バー付きのギルドハウスの前で聞き耳を立てていた。すると、とある話し声が耳に入った。


「どうやら、南の森から魔物がわんさか出てきてるらしいぜ。それも、狩りやすくて高値で売れるホーンマウスだとよ。」


これは行くしか無い。そこそこお金はあると言っても、稼げる機会を逃せるほど余裕があるわけでもない。

僕はすぐに街を出て南の森へ向かった。


僕は南の森に着き、あたりを見渡したが、そこにはホーンマウスどころか、他の魔物すらいなかった。やられた。また、まんまとガセネタに引っかかってしまった。そう思いつつ、ここまできたからには何か狩っていこうと僕は森の奥へと入って行った。

そこは昼なのにも関わらず、大きな木が茂り薄暗く、じめじめとしていた。南の森はどこの森よりも魔物の危険度が高く、気が抜けない。僕は常に気配に注意しながら進んだ。


「おい、人間。」


背後から声がした。剣を抜き、声のした方へ勢いよく振った。確かに、自分でもいい振りだと思えるような一撃だったはずだった。しかし、僕の剣は黒髪赤目の人の形をした化け物に摘まれて止まっていた。

 黒髪自体珍しいこの世界で、普通の人間が黒髪と赤目である事はほとんどない。何故なら、黒と赤で連想されるのはたった1つであり、世界で1番強いとされる種族のドラゴンだからだ。


「なんだ、その化け物を見るかの様な目は。お前たち人間の姿になっているはずだが、どうしてそこまで警戒する?」


僕が名一杯力を入れている剣を笑みを浮かべながら指で止めてる奴がそれを言うかと笑えてきた。だが、力を入れているせいか歪な笑顔になってしまった。


「それを貴方が言いますか?明らかに貴方は人間よりも強い。それこそ僕からしたら化け物です。」


「でも、笑っていると言う事は歓迎しているのだろう?」


「ははっ、どうしてそんな解釈になったのか、僕には想像がつきませんねっ!」


そう言って僕は後ろへと跳び、剣を構え直した。



「まぁまぁ、俺は別にお前をどうこうしたいってわけじゃ無いし。話くらい聞いてくれたっていいだろ。」


正直、今すぐ村に帰りたいくらいだが、このまま逃げても直ぐに殺される事は目に見えていた。


「話って?」

 

「人間を探してるんだ。ずっと昔に別れてから会ってないが大切な人なんだ。」


別に、人探しをするのはいいのだが、この化け物からの頼まれごとと言うのがなんとなく怖かった。


「で、その人を僕に探せって言うのか?」


「いや、そういうわけじゃ無い。ただ、しばらく人間とあっていなかったから、人間の街のことが分かんない。だから、教えてもらおうと思っただけだ。」


「そうか、じゃあここを真っ直ぐに北に進めば街がある。そこに衛兵が居るから、仮証明書を作って貰えば街に入れる。」


相手に敵対する意思がないことを確認して、剣を鞘に収め、魔物を探すために森の奥へと進んだ。すると、


「おい!その、、一緒にはきてはくれないのか?」


「は?」


あまりの事に驚きすぎて、間抜けた顔になってしまった。


「えっと、僕に着いてきてほしいと?」


「…そうだ。」


そういうと、化け物は顔を背けてしまった。その横顔はどこか恥ずかしがっている様にも見えた。そして、僕は思ったことを口に出してしまった。


「もしかして、寂しいんですか?」


「そう言うわけではない。さっき言った人間の知り合いは、俺に着いてきてくれていたんだ。だから、つい…」


そう言いながらどんどん顔が赤くなっていって、図星だった事がわかった。そうと分かるとなんだか可愛く見えてきた。


「ふふふっ」


「なんだ?何故笑う。」


「貴方が、なんていうか、面白い生き物だなって思って。」


怒るかもしれないとも思ったが、全然そんな事はなく、むしろ真剣な表情になった。


「ネグルカだ。」


「え?」


「だから、俺の名前は面白い奴じゃなくて、ネグルカだ。あいつにつけてもらった名前だ。」


いや、急に名前言われても、分からないから!と言いたかったが、流石に初対面で言えるはずもなく飲み込んで、相手に合わせた。


「あぁ、僕はルットラス=コルムです。」


「よし。コルムだな。これで俺たちは友達というやつだな。」


「え?…もしかして、それも貴方が言ってた人が教えたんですか?」


「そうだ。よく分かったな!じゃあ、友達になった事だし街へ行こう!」


そう言ってネグルカは街の方へ歩き出した。最初とは全く違う雰囲気に戸惑いを隠せなかったが、結局、僕も一緒に行く事にした。


そうして、なんだかんだ言いつつも寂しかった僕は、ネグルカと一緒に旅をする事にした。


まさか2人旅になると思ってなかったが、これはこれで楽しい旅になりそうだなと、そんな期待を持ってまた一歩冒険の足を踏み出した。

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