表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/20

僕は神に愛されなかったようです。

家に帰った僕に話しかける人は誰も居なかった。まぁ、元からそうだったのだが。

唯一の味方だった母様も、どうやら僕を哀れに思ってか、腫れ物に触れる様な対応になってしまった。


「コルム、どうしたんだよ。なんか元気が無いぞ。」


ネグルカはいつもそうだ。誰がどんな気持ちだろうと気にもせず、無責任にズカズカと人の心に立ち入って来る。自分でも感情的になっている事は分かってる。でも、この感情を止める術を僕は持っていなんだ…


「お前に言って何になる。」

「なんか俺が手伝えることあるかもしれないだろ。」

「そんな物ないよ!ネグルカみたいに魔法が使えて、戦闘だって負けなしの奴に、手伝われることなんてない!」


僕は衝動的に部屋から飛び出した。

後ろからネグルカが追いかけて来る事は無かった。


夕方の庭で1人、花壇を見つめながら冷静になって考えると、本当に酷い事をしてしまったと思う。


「僕はなんて事を言ってしまったんだ。」


落ち込んでももう遅い。言った言葉は戻っては来ないし、時間も巻き戻せない。

あと僕に残されているのは、謝る事、それだけだった。


心が落ち着いてきて、部屋に帰ろうとした時。

ガサッ

目の前の草の間からネグルカが現れた。


「ネグルカ、なんでここに?いや、それよりも、ごめん。さっきは酷いこと言った。ネグルカは俺のことを考えて言ってくれたのに、僕は…何も考えず、感情的になってしまった。本当にごめん。」

「あぁ、その事なら気にするな。俺もお前の気持ち、分かってやれなくてごめんな。」

「許してくれるのか?」

「当たり前だろ。友達だからな。」


友達なら、なんでもありなのかよ。と思ったが、今は流石に言えなかった。


「あ、そう言えばだな、コルムは俺が負けたことないって思ってる様だがな、俺も負けたことあるぞ。」

「え?!そうなの?」

「あぁ、昔の友達にな。」

「そんなに強かったのか。いつかその友達に会ってみたいな。」

「いつか、きっと会える。俺はそんな気がしてるよ。」



その夜、僕とネグルカは今後について話し合った。そして、また旅をすることにした。

今回は学院の入学試験がある12歳までだ。そして今回の旅では、もれなく勉強もついてくる。

幸い、ネグルカは学問についての知識は豊富だそうで、夜に教えてもらう事にした。


善は急げだ。前回と同じ様に母様と父様のところに行き、説明をして同意を得た。

出発はもちろん明日の朝だ。違うのは、出発するときに隣にもう1人いる事だけ。

だが、たったそれだけの違いでも、僕の旅が楽しいものに変わった気がした。


翌朝になり、僕はすぐにネグルカと共に家を出た。

実家には2日しかいなかったが、2日でも居たくないと思わせてくれるほどの対応だった。



まずは近くの森で魔物を狩る事にした。

そして森に入ってすぐ、ビッグボアを見つけた。


「とりあえず、僕1人で戦ってみるから手は出さないでくれ。」

「了解。」


そうネグルカが返事をすると同時に、ビッグボアがこちらへと走ってきた。

僕は剣を構え、ビッグボアが間合いに入ってきた瞬間を狙って剣を振った。

あれ、切った感触がない。おかしい!

そう思った次の瞬間


ドンッ


気が付いたら僕は後ろの木に吹き飛ばされていた。

だが、一度吹き飛ばされてめげる様な僕ではもうない。僕はもう一度剣を構えた。今度は間合いにはいられたあと、一振り目を首へ、そして二振り目を足へと入れた。だが、またもや感触がなく、吹き飛ばされた。


どのくらい繰り返しただろうか。

少なくとも20回は色々と試した。しかしどれもうまくいかなかった。すると見かねたネグルカが、ボンッと爆発させ、一撃で倒してしまった。


「ネグルカ!手を出すなって言っただろ。」

「本当はお前だって分かってんだろ、攻撃が通じてない事に。」

「そんなのまだ、やってみなきゃ分からな…」

「見える事。すなわちある事。この意味わかるか?」

「それは、僕のスキルの紙に書いてあったやつだよな?」

「そうだ。で、その意味は?」

「…そんなの分かるわけないじゃないか。」

「そこだな。問題は。」


意味がわからなかった。僕の剣と何が関係あるって言うんだ。そう言いたかったが、ぐっと堪えた。


「僕にも分かる様に教えてくれ。」

「物は一体あるから見えるのか。それとも、見えるからあるのか。そんな話聞いた事ないか?」

「ない。」

「あ、即答ですか。じゃあ、初めから説明するな。ある物体があったとするだろう、そして、そこの前にお前がいる。でも、みんなそれを見る事は出来ない。じゃあ、その物体は本当に存在するのだろうか。ま、簡単に言うとこんな感じだ。」

「それで、それと僕のスキルの関係は?」

「そりゃもちろん、コルムは半径2メートル以内の敵意・殺意を持った者が見えないんだろ。つまり、コルムからしたら敵意を持った者が半径2メートル以内にいても存在していないのと同じなんだ。だから、コルムにはあのボアが切れなかったってわけだ。」

「そんなの嘘だ。僕にはただでさえ魔力が無いのに、半径2メートル以内の敵には手出しできないっていうのか!!

そんなの…あんまりだ。」


もう僕は、これ以上何かを口に出す事は出来なかった。もし何かを言ったのなら、あまりにも自分が惨めに思えてきてしまうから。


ことごとく僕は神に愛されなかったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ