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周りは皆が敵なのだ

願いは叶う。僕は初めて神様を信じた。


毎日の生活自体が、僕にとっては苦行以外の何ものでもなかった。

僕は、普通に生活して、普通に高校に通っていた、まさにどこにでもいるような学生だった。

少し人より運動が苦手で、勉強も特に輝く部分も無い、少し残念な人。こんなの、罪でも何でもない。

それでも世界は、僕に罰を与えてきた。

学校がそもそも僕には向いていなかったのだ。

地元でも有名な進学校である高校に入学した僕は、当然のように学校の授業に追い付けずに遅れていき、今では常に最下位の点数を取る生徒として学年でも名が知られることになってしまった。

勉強が全てではないことは分かっている。他にも大切なことは沢山ある。でも、この環境は違うのだ。

点数こそがヒエラルキーといわんばかりの環境が、その学校には蔓延していたのだ。だからこそ進学校としての名声を保てるのだろう。

最初は罵られた。馬鹿がうつるという理由で、次第に距離を置かれるようになった。


そして、誰も僕を認知することが無くなった。


無視は意識的にするものだ。でも、僕が受けてきた仕打ちは、もはや無意識化で行われていた。

誰にも迫害されず、干渉されず、肯定されない。

そんな生活が苦痛で仕方なかった。毎朝起きる度に、涙が零れてきた。


でも、引きこもることも出来ない。

それは、僕の地獄が学校以外にも存在したからだ。

それが、我が家である。


父は医者で、母は教職員。誰が見ても理想的な家庭。そこにケチをつけられる人はいなかった。

しかし、外側が美しいからと言って、その中も美しいとは限らない。少なくとも、僕は自分の家庭ほど汚くて醜い家庭は無いと思っていた。


父も母も、自分の職業に誇りはあれど、理想が無かった。

2人とも似た者同士なのだ。『その仕事をしていれば体裁が良いから』という理由で今の仕事をしている。

そして、その体裁の良さを僕にも向けてきた。

僕はあまり勉強も出来なかったが、それが両親が気に食わなかったようだ。


周りから羨ましがられる息子にするために、目も当てられない醜いことを何度も何度も繰り返した。

テストで一位を取れなかった日は、晩御飯も無かった。ぐしゃぐしゃに丸められたテスト用紙を顔に投げつけられた回数はもう数えていない。

勉強の時間を毎日深夜まで設け、ずっと耳元で罵倒と怒号を浴びせられた。自分が叫び疲れると、僕が問題を間違える度に無言で殴られた。


そんなこともあり、この進学校に入学は出来たのだ。受験は合格か不合格のみ。順位は出ない。もし順位も出されたら、入学式までどんな生活を送らされていたか分からない。何をするか、本当に分からない。


そして最近はもう勉強についていけない僕を穢れのように扱い、避ける。実家にいるのに、1人暮らしより寂しかった。


もう、うんざりだったのだ。

もう、こんな世界にいたくなかったんだ。


「こんなことなら、本当に独りになりたい」


誰もいない世界に行きたい。誰もいなければ、絶望もしないし期待もしない。

僕は何も望まないんだ。

何もいらない。


「明日が怖いよ……」


いつものように、1人で呟いて眠った。僕が話すのは、夜のこの一言だけだ。


他に話したのは、最後はいつだったけ。

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