始まり
みなさま初めまして、わたくしクロコと申します。
しばしの間、よろしくお願いいたします。
これはある伯爵家のはなし。
主人の名はジョス・ウォーレン。
立派なヒゲを蓄えた紳士然とした、高貴な人。実際、伯爵の爵位をもつ方です。
似たような家柄から妻を娶り、結婚。
その四年後、子息となるライナス様が誕生。
当然のように彼も、同じような家柄の令嬢を婚約者にして両親のように仲睦まじく暮らすと思いきや――。
落ち着きのある両親と違いやんちゃでガサツなライナス様と、じゃじゃ馬娘と呼ばれる伯爵家のお嬢様。
まるで、S極とN極をくっつけた磁石かのごとく反発しあう婚約者同士となりました。
ええ、本人の口から聞かずとも婚約をなかったことにした方がいいのでは?なんて声があるほどには周囲から上がるほどの仲の悪さでございます。
ですが、周囲を他所にその中心にいる両家の両親たちは問題なしと見ているようで破棄も解消も予定はないようです。
問題がないのではく、諦めや貰い手がいないのではと考えてるだけなのかもしれませんが――。
世間では貴族界の異端児、問題児と本人に聞こえぬよう呼ばれております。
彼らの場合、褒め言葉だと受け取る気もいたしますが、それはそれでどちらにとってもありがたいことでありますね。
さて、これからはなしますは、そんな2人の結婚までの物語でございます。
それでは、ごゆるりとお楽しみください。
次回更新は12日0時でございます。