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20話

 私たちは倉持と別れた。時刻は昼ちょっと前。高羽市の人通りが喫茶店入店時よりも多くなっていた。


「さて、あなたにも頑張って貰わないとね」


 私は羽賀に言った。倉持と話している時、彼女はダンマリだった。まあそれは良い。彼女には調べて貰わないとならないことがある。


「任せて下さい! その為に私は来たのですから!」


 楽しそうに羽賀は言った。彼女には龍の呪いが何なのか、究明してもらわなければならない。


「じゃあさっそく、黒鱗村に行きますか」


 私たちは車に乗った。そして黒鱗村へ向かった。途中で高羽市内にある公園を通り過ぎた。その時に私たちは、公園内にある奇妙な物体を目撃した。


「なんでしょう、あれは」

「さあ。モニュメント、かしら? にしても、不釣り合いだったわね」


 公園の景観をぶち壊すような物体であった。


 村へは約10分程度で着いた。喫茶店等の店が建ち並んでいた高羽市の街並みから一変。数十年前にタイムスリップでもしたかの様な農村が広がる。


「この辺りで良いでしょう」


 羽賀が言ったので、私は停車した。田んぼ道の途中である。


「聞いた話によると、黒鱗村では特別な物を口に含む習慣は無いようですね。となると原因は限られます。日頃から吸っている空気。この村で採れた米や野菜。水。いずれかが汚染されているのだと思います」

「村人特有の体質という可能性はないの?」

「ないでしょう。だって久遠さんの旦那さんも呪いに掛かってしまったじゃないですか」

「ああ、そうか」

「という訳で……おーい、すいませーんっ! 田んぼの土くださーいっ!」

「あ、ちょっと!」


 羽賀は車から降りた。そして田んぼで作業しているおじさんに声を掛けた。私が慌てて制止するが、羽賀はさっさとおじさんの元へ行ってしまった。


 本当、コミュ力が高いというか、人目を気にしないというか。


「あ、時間掛かると思うので、久遠さんは先に用事を済まして良いですよ」


 と羽賀が振り返って言った。彼女の言う通り、今日はまだやるべきことがある。羽賀の調査に私は手伝えないし、ここは彼女の言葉に甘えることにしよう。


 私は羽賀を置いて、別の所に車を走らせた。数分後、大きな古い和風の屋敷が現れた。


 その屋敷は、広い敷地が塀で囲まれている。門の表札には、崎守と記されている。私は呼び鈴を押した。


「どちら様ですか」


 女性の声が響く。私のことを説明すると、やがて玄関は開かれた。


「どうぞ、こちらへ」


 そう言って現れたのは、30代後半と思しき女性だった。高そうな着物を着ている。簪で髪を止めており、しっかりと化粧が施されている。高貴な人という印象だ。


 家の中に入る。靴を脱いで廊下を進む。やがて和室の一室に着いた。綺麗に手入れが施された襖を開けた。そこには女子高生と思しき女性と、その父と思しき男性。そして、一段と老いた老婆が座っていた。恐らく、崎守一家の面々だろう。


「さあ、どうぞ」


 私を案内した女性がそう言って、彼らの向かいに誘導した。そして自分は、その崎守一家の面々が座っている方へ着いた。


「初めまして久遠様。私は崎守 紀子(のりこ)。そこの崎守 現道(げんどう)の妻で御座います。そこにいるのが娘の奈緒。そしてこちらが黒鱗村の村長、芙蓉(ふよう)


 どうも、と私は軽く会釈をした。


「さっそく本題に入らせて下さい。私は記者であり警察ではありません。なので警察に話せないことでも、私には真実を教えて頂きたい」

「ともかく。お主が知りたいのは息子の安否じゃろうが」


 私の言葉を遮るように、芙蓉が言った。曰く付きの村の長だけあって、貫禄がある。


「お主の息子に関しては、わしらは関与しておらん」


 私は芙蓉のその言葉に、目を見開いた。


「息子は生きている、ということですか」

「それは分からん。関与しておらぬのじゃから」


 それでも、だ。それが本当なら、少なくとも落とし前の被害に遭った訳ではない。息子が生きている可能性が格段に上がった。

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