表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

14話

 翌日。今日は龍の舞を行う日だ。


 俺はその儀式を見るために、友人を何人か呼んでいた。


 俺は鳥居の前で友人達を待っている。周囲を見渡すと、提灯があちこちからぶら下がっており、屋台が立ち並んでいる。


 夏に行われる龍の舞は ”夏の儀” と呼ばれている。年に4回ある内の中でも、特別な儀式だ。夏頃に行われるということもあって、夏祭りも兼ねた盛大な催しとなっている。


「久遠君、お待たせーっ!」


 遠くから俺を呼ぶ声がして、振り向いた。振り向いた先には、浴衣姿の女子が二人、こちらに歩み寄っていた。崎守と志田だ。


「二人とも、着物が凄い似合うな」


 俺はそう言って二人を見た。崎守は青い着物を、志田は黄色い着物を着ている。着物を着ているだけなのに、何だか別人の様だ。特に志田は普段のギャルっぽい雰囲気とかけ離れていて、大和撫子といった感じである。


「ふふ。ありがとうございますっ!」


 嬉しそうに崎守は言った。


「じゃあ、早速行こっか。もうすぐ龍の舞の時間だしね」


 志田がそう言うので、俺たちは鳥居をくぐって拝殿へ向かう。道中には屋台が沢山陳列している。田舎だというのに、人も多い。


「それでも、去年よりは全然少ないよね」

「前回に事件があったので、皆怖がっているんですよ」


 と二人は言った。


 やがて儀式の舞台付近まで来た。黒鱗神社の大きな拝殿。その付近にある木造の大きな舞台。そこには既に三味線を構えた演者と、桶同太鼓(おけどうだいこ)を構えた演者が所定の位置にて座って構えていた。


 そしてその演者二名は、龍の仮面を付けている。


――ベン、ベン。

――ポン、ポン。


 三味線と太古が鳴り響いた。ざわついていた観客は途端に静かになった。


 しめやかなる三味線と太鼓のBGMに合わせて、4人が舞台袖から登場した。倉持の言う、ゲストというやつだろう。


「あの4人は、言い伝えで言うところの ”生け贄” なんですよ」


 崎守が解説した。


「生け贄……。龍が村に要求した、対価というやつか」

「はい。そうです。なんだ、知っていたんですね」


 ジロリと、崎守はこちらを見つめた。


「どうして、知っているんですか?」


 その物言いは、まるで俺が知ってはいけないとでも言いたげであった。


「ちらっと聞いたんだよ」

「へえ。今時、言い伝えを話のネタに使う人達が、いるんですねえ?」

「そうだな。龍の舞が近い日だったからじゃないか?」


 すると崎守は沈黙した。


「なるほど、そうなのかも知れませんね」


 やがて、ニッコリと微笑んでそう言ったのだった。


 崎守とそんなやり取りをしている間に、生け贄役は舞台手前の位置に着いた。すると、BGMがピタリと止んだ。


 舞台周辺が深閑とする。不思議な緊張感に包まれる。


――ベン、ベン。

――ポン、ポン。


 再度、三味線と太鼓が鳴り響く。そして舞台袖から、さらに演者が現れた。


――ドクンッ。


 その姿を見た途端、心臓が強く脈打ったのを実感した。


 舞台袖から現れた演者は、白と紅の巫女装束を着ている。黒髪は長く、胸元が膨らんでいるから、恐らく女性だ。両手には、二刀の短刀を持ち、そしてやはり龍の仮面を付けている。


 間違いない。


 ビデオカメラに映っていた、林の首をはねた格好そのものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ