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11話

 俺と隼人はベンチに腰掛けて、録画された映像を見ていた。映像は早送りされて、大雑把に確認している。


「林が言っていた表現って、こんな感じだよな」

「そうそう。ビデオカメラで再現しても、それっぽい感じになって良いね」


 公園で楽しむ大人子供や、雲の流れ、太陽の動きが急速に動いていく。やがて夕方だった映像は夜になった。公園内は途端に人がいなくなる。


「あれ、ちょっと倍速止めて」


 俺が言うと、隼人は指示通りに映像を通常再生にした。


「何だか、変だね」


 隼人も異変に気がついた様だ。真夜中の公園には、二人の人物が映ったり映らなかったりしている。どうやら一方を追いかけ回しており、カメラの画角から頻繁に外れているようだ。


 しかしやがて、カメラの画角中央に、その二人が収まった。そして二人の様子が明らかになった。


「何、これ……」


 隼人は呟いた。


 カメラに映っている二人の内一人が、かなり奇妙な格好をしている。巫女装束に、恐らくは仮面を付けている。そして両手には、短刀と思しき物が握られている。


 もう一人は、その仮面を付けた人物に恐れているのか、尻餅を付いて後ずさりしていた。


「や、やばいよこれ……」


 隼人の言う通り、あまりに不気味な映像だ。呪いのビデオのような不気味さがある。


 映像では、仮面を付けた人物と、尻餅をついた人物の距離がかなり近い状態になっていた。追い込まれたその人物は、もはや後ずさりをすることもなく、わなわなと震えながら刃物を持った人物を見上げている。


「龍の仮面だ……」


 隼人が呟いた瞬間。仮面を付けた人物が両手を振り上げた。


――ザシュッ!


 そして尻餅をついた人物の首をはねた。


 すると首は胴体を離れて吹き飛ぶ。首は真っ直ぐにカメラの方へ飛んでいき……。


――バンッ!


 衝撃音が鳴り、映像一杯にその顔が映し出された。


「うわぁあああああああ!」


 隼人は恐怖のあまり絶叫した。恐怖で歪んだその顔は血でめちゃくちゃに塗りたくられている。白目を向いて、叫んでいるかの様に口をあんぐりと開いている。


 そんな死相の肌には、ニキビが多く見受けられた。


「林……」


 そいつは紛れもなく、龍隠しに遭ったはずの林辰巳であった。


 ビデオカメラに映っている事実は、あまりにも衝撃的であった。ビデオカメラが街灯から落ちていたのは、吹き飛んだ首と衝突したのが原因だろう。


 俺は公園内を見渡す。


 首をはねたのだから、大量の血が流れたはずだ。でも現場にはその痕跡がない。恐らくあの仮面を付けた人物か、その関係者が後始末をしたのだ。警察が見付けられないのも当然である。


 カメラが残っていたのは、首にぶつかってすぐに落ちたから。しかも落ちた場所が探しにくい場所であったから、後始末の際に見逃してしまったのだろう。


「行方不明になっていた者達は、実は殺されていた。じゃあ、相楽も……」


 友人が生きている可能性が格段に下がって、俺はショックを隠せない。


「落とし前だ……」


 わなわなと震えて縮こまっている隼人が呟いた。


 落とし前……? そういえば、あの仮面を龍の仮面だと言っていたな。


「おい隼人。どういうことだ」


 俺は隼人の肩を揺さぶって詰問した。しかし彼は落とし前だ、落とし前だと呟くだけでろくな返答がない。


「くそっ。ちょっと来い!」


 俺は隼人を引っ張って、付近にある電話ボックスに入った。そして、前もって教えられていた電話番号で、倉持を呼び出した。


「あ、倉持さん。行方不明になった林の重大な手がかりを見付けました。すぐに公園に来て欲しいんですけど!」

『わかりました。すぐに向かいます!』


 その後、倉持は車に乗ってやってきた。俺と隼人はその車に乗って、公園を離れた。

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