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【第95話】神殺しの大戦⑨




 拮抗する紅蓮と暗黒。

 ユラユラと揺らめき、ありとあらゆる物を蝕み燃やす炎は、ディクティオの技『大紅蓮』。

 その炎をじわじわと取り込む半球状の黒い空間は、僕の技『黒色無双』。

 これは今の僕が出せる最高峰の技だ。

 一滴のインクを空間へ攪拌させる技の極地。

 光すら通さず、そして何よりこの空間内のほとんどは、僕の意思で自由に動かせる。

 よって──。



「僕の炎を取り込む……いや、上書きしてるのか」


「そうだよ。黒はどの色よりも強いから」


「正直驚いたよ……僕の炎が押し負けるとはね」


「そんなに喋ってていいの? 位置が丸わかりだよ!」


「っ!! これは驚いた……

 この分野では君に軍配が上がるのか……」



 空間の一部をを硬化させ、ディクティオを拘束した。

 声の反応から、しっかり拘束が出来たと察せる。

 ルーナと何度も何十年も練習したんだ。

 簡単に突破されたら困る。

 ただ、僕も見えなくなるのと、空間の維持に精神が擦り切れそうになるのが玉に瑕だ……


 拘束はできている、後は思いっきり──。



「グゥォアアア!! カハッ!」


「潰れろォォオオ!!!」

 


 拘束している箇所の暗闇に、全力で圧を掛ける。

 時折骨が軋み、砕け、肉が潰れるような音が聞こえるが、絶命させるまでには至らない。

 このまま、ここでやり切るんだ……!!



「行っけぇぇぇえええ!!!!」


 ──バシャン……


「…………は?」



 突如として僕の黒色無双が崩れ去った。

 いやいやいや、何が起こってる?

 集中力が切れた訳じゃない。だとすれば、外部的要因。

 いやそれよりも、ディクティオはどうなった!?

 まだ光に慣れていない目を細めて奴を探す。



「…………本当に冗談であって欲しいな……!」



 全力で潰したはずだ。それなのに──。

 満身創痍ながらも、自らの足で立っているディクティオの姿がそこにあった。



「ハァ、ハァ……ゴフッ。

 とんでもない技術に威力だな、かなり効いたよ……

 流石に僕も貧血状態だ」


「まさか、自分の血を直で混ぜたのか!?」


「そうだよ、それも有りっ丈ね。

 黒だって一定量の赤を混ぜれば、赤みが増すだろ?

 僕と君の力が対等になるまで、僕の血を流し込み続けたんだ。ゴホッゴホッ……!」



 咳き込む度に口からおびただしい量の血が出てくる。

 一応、内蔵はちゃんと潰れているのか。


 ここからの展開を考えていると、奴が描いた『大黒縄』と戦っていたメイレールさんが帰って来た。

 所々負傷はしているが、何とも無さそうだ。

 それにしても、なんて良いタイミング!



「すみませんナツメさん、遅くなりました。

 して、首尾は……っ!」


「見ての通りです! 行けますか?」


「上出来です。私も少々、遅れを取り戻して来ます!」



 メイレールさんは今までに見たことも無い獰猛な笑みを浮かべると、瞬く間にディクティオとの距離を詰めた。

 黒い雷を纏った拳を、満身創痍のディクティオに容赦加減無く叩き込む。



「ようやくこの手で貴様を殴れる時が来ました!

 貴様だけは、断じて許さない! 断じて!!

 絶対に許す訳には行かない!!」


「ゴブっ……ゴハッ!

 グゥっ! ガァァァアアア!!!」



 メイレールさん怒涛の連撃。

 流石のディクティオも、為す術なく猛攻を受ける。

 数分に渡る戦闘。いや、もはや蹂躙と言っていい。

 奴がほぼほぼ肉塊の様な状態になった頃、メイレールさんの気も、ようやく少し落ち着いた。



「ハァ、ハァ……ふぅ。

 お見苦しい所を見られてしまいましたね?」


「いえ、気持ちは僕も分かるので」



 ディクティオは原型を留めていない。

 流石に生きてはいないだろう。

 これでラグナロクを阻止できたのか?

 それにしては、やけに呆気ない気もする。

 ……本当に終わったのか?



「メイレールさん、僕やリオ爺みたいな半神類(デミゴッド)は長寿ですけど、死にますよね?」


「はい、一応その認識で合っています。

 実質的な不老ではありますが、死にはします。

 神でもない限り、不死は有り得ません。

 何か引っ掛かる所が?」


「いえ、念には念をと……」



 確認をする為、奴の肉塊に近付こうとした時だった。

 その肉塊が燃え始めたのだ。

 比喩や表現ではなく、文字通りに燃えている。



「な、何が……!?」


「ナツメさん、離れて!」



 燃え盛っていた炎が収まり、残った灰の中から一糸纏わぬディクティオが現れた。

 それも、体中の何処にも傷が無い状態で……



「ナツメさん……」


「分かってます。最悪の状況ですね……」



 ディクティオはそこら中に散らばっているインクをガラスペンに集め、衣服を描いて身に付けた。



「やぁ、2人ともお待たせしたね。

 驚いているね? サプライズは成功と言った所かな」


「殺りきれてなかったのか……」


「いいや、間違い無く僕は1度死んでいるとも。

 ただ、()は滅びないらしいんだよ」


「神はって……お前は半神類じゃないのか?」


()はね?

 いや、だからこそ神に成り得たのかもしれない」



 成り得たって……じゃあ僕達は今、何と戦ってるんだ?

 9柱目の神が誕生したとでも?

 神だとしても、いったい何の神なんだよ……



「折角だ、改めて自己紹介と、答え合わせをしようか。

 僕の名はディクティオ!

 高野棗なつめの父にして、復讐者。

 白き牢獄の書の()()()だ!


 さぁ皆々様、第2回戦と洒落こもうか!!」




読んでいただき、ありがとうございます!


お時間があれば、いいねやブックマーク、広告下の評価☆☆☆☆☆を押して行って貰えると嬉しいです。


次回は場面が変わり、聖天騎士達の戦い……?

乞うご期待なのです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 拘束している箇所の暗闇に、全力で圧をか掛ける。 全力で圧を"か"掛ける かをトル [一言] ニュアンスが違って来るので、言葉って難しいなと思います。
[良い点] これは最高の展開!! ヤバすぎるけどやっぱりこうじゃなきゃ! どうする新図書館長!?
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