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【第94話】神殺しの大戦⑧




「お前が……僕の父親?」



 にわかにも信じ難い事を突き付けられて、思考がまったく追い付かない。

 確かに、僕は父親の顔を知らない。

 そう言えば母さんが、事故で亡くなったと涙ながらに教えてくれた事があったな。

 いや、そもそもリオ爺がじいちゃんだとして……

 いやいやダメだ、全然整理が出来ない。



「なかなかどうして、混乱してるね?」


「そんな……そんなはずが無い……」


「誠に残念ながら、真実なんだ」



 奴は心底楽しそうに笑って見せる。

 心を惑わされてはいけない……

 今は目の前の敵に集中しなきゃ。



「お前を倒せば全部解決だ……」


「ハハッ、考える事を放棄したか。

 だが、君には知っておいて貰おう、僕の過去を」


「…………」



 僕の無言を肯定と受け取ったのか、勝手にそのまま話を始めた。

 ディクティオは僕が描いた帯で締め付けられている状態だけど、恐らくいつでも抜け出せるから、こんなに余裕なんだろう。


 不本意ではあるが、ディクティオの過去を聞いてみるとしよう。

 それでもリオ爺を亡き者にしたコイツを、許す訳にはいかないけど。



「どこから話そうか……そうだな、手始めに僕が産まれた所からかな?

 こんな僕でも、生まれは極めて普通のものでね──」



 ◇◇◇◇◇◇◇



 悪逆非道な人物なれど、両親からは望まれてこの世に生を受けた。その名を高野(めぐる)

 父は実業家にして冒険家の高野(いさむ)、体の弱かった母は出産の負荷に耐えられずに亡くなった。

 父から母の名前は聞かされてない故、知る由も無かった。


 父である勇はまだ幼い巡を家政婦に預け、世界中を飛び回った。

 幸いな事にお金だけは豊富にあった為、衣食住に困る事は無かった。

 しかし、巡は愛という物をほとんど知ることも無く、物心が付いてしまう。


 学校や地域での行事、巡はいつも独りだった。

 この頃から、父に違和感を持つようになる。


「何故自分は父が居るのに独りなのだろうか?」

「自分は必要の無い存在なのではないか?」

「必要無いなら、何故産んだのか?」


 数々の疑問が生じていた。

 そんな疑問はやがて不満になり、小さな不満が積もりに積もって、いつしか怨恨にまで至ってしまう。

 特別何かをされた訳では無い。

 何かをしなさ過ぎた結果、辿り着いた答え。


「人生の全てを父への復讐に使おう」


 こうして、父への復讐だけが巡の生きる意味になってしまった。

 父を苦しめるには何が最善か?

 日を追う毎に、その思考は歪んでいく。

 死んだ所で、自分に興味が無いなら意味は無い。

 父を直接狙おうにも、滅多に顔も合わさない。

 ならば──。


(あいつ)の大切な物を悉く壊してやろう」


 自分が大切で無いならば、他に大切な物を作れば良いのではないか。

 巡は手段など選ばなかった。

 父への復讐の為だけに奔走した。

 そして時は流れ、巡が大人になった頃……

 彼は最高の復讐を思い付く。


 自分の配偶者やその子共を絶望させる事で、間接的に父を追い込もうと。


 思い付いてからの行動は早かった。

 巡は難なく平凡な家庭(捨て駒)を築き上げ、復讐に向けての準備が着々と整えられた。

 誰が見ても幸せな家庭を装い、欺き、演じ続けた。


 全てが順風満帆な時に、巡は自らの命を絶った。

 家族に絶望を与える為に。

 思い描く最高の復讐を完成させる為だけに。


 死んで完遂すると思っていた。

 その後では地獄でも何でも受け入れる、そんな覚悟だったのに……

 目覚めた自分は赤ん坊になった上、自分を抱いていたのは記憶を失った復讐対象(父親)だった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「まぁ、こんなもんだよ。

 くだらないよね? 僕だってそう思う。

 だけど、これが僕の全てなんだよ」


「そんな事の為に、自分の命を……?」



 身勝手だ……でも、でも何だろう?

 勿論あいつを今でも許せないのは変わらない。

 でも、奴の話は僕の知ってるじいちゃんとは違う。

 奴が今まで見て来た物と、僕の見て来た物とであまりにも違い過ぎる。



「ディクティオって名前は何処で?」


「言っただろう?

 赤ん坊になってたって。

 その時に名付けられたんだよ。

 ラテン語で"Benedictio(ベネディクティオ)"。

 皮肉にも『祝福』を意味する言葉からね」



 頭の中で情報をまとめている間に、ディクティオは何食わぬ様子で拘束された鎧から出てきた。

 それも戦いの最中にも関わらず、ゆったりとストレッチをしながら。


 僕の中で軽く整理がついた。

 深くは考えず、そういう物だと思う事にする。

 自分の感情は今はいい。

 あいつが父親で、リオ爺はじいちゃんかもしれない。

 何よりアイツは敵である。



「ま、何はともあれ……だ。

 父は殺したから、最後に父にまつわる物を全て壊せば僕の復讐は今度こそ完成するんだ。

 邪魔をしないでもらえれば助かるんだが……」


「しない訳がないだろう?」


「そうなるよね。

 長話はおしまいだ。

 ここからは、僕も全力で遊んであげるさ」



 そう言うと、手に持ったガラスペンを自らの手の平に勢い良く突き立てた。

 血をインクとして使うのか!?

 切り札には、僕も切り札で返そうじゃないか。



「全てを呑み込め『大紅蓮』!」


「ここからは僕の時間だ『黒色無双』!」



 赤く暗い炎は猛々しく揺らめき立ち、一滴の黒い雫は辺り一面に光すら通さぬ暗黒の帳を下ろした。




【作者からのお願いです!】


お時間があれば、評価を……ブックマークを……:( ;´꒳`;):

この作品を完結までにランキングに載せてあげたいです!

どうか、どうかよろしくお願いします!


次回、戦況がどう動くのか……!

乞うご期待なのです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんともいえない因果が…。それにしても彼、充分すぎるほどこじらせてますねぇ。しかし「はい、そうですか」と納得するわけにもいかない。こういう場面は最後のエネルギー源にもってこいです!
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