【第81話】元気を取り戻す
聖天騎士側に裏切り者がいるかもしれないという情報に、誰もが耳を疑った。
そこで、騎士隊長のモネさんが質問する。
「レヴィア騎士候補生。その情報に信憑性は?」
「えっと、半々……と言った所です。
アタクシと図書館側のナツメさんや、ルーナさんが決闘をした事は周知の事実だと思います。
その結果も知っての通りです。
しかし、謹慎期間を終えてもロイドは姿を見せず、行方も知れていないと聞いています」
「情報感謝する。
会議が終わり次第、こちらでも調べてみよう」
ロイドか……そう言えばいたなぁ、そんなの。
思い出したくもない奴を思い出しちゃった。
あの決闘の後に謹慎の上、Bクラスへ降格になっちゃったんだよね。
まさかそんな事になっていたとは……
この件に関わってないと良いんだけど。
「それでは次に『神殺しの大戦』の対策についてです。
このラグナロクですが、図書館側はディクティオが単騎で攻めて来る可能性は極めて低いと考えます」
「仲間がいるという事でしょうか?」
「はい。それも、最悪の場合は異形の軍勢が来ると予想されます。
現にここ最近では、異形化しようのない物語での異形化や、異形の強化は確認されています。
下の世界にいる異形を掻き集められると厄介です」
「あの、質問いいですか?」
「どうぞ、ルーナさん」
「下の世界、と言うのは……」
語呂からすると僕が元いた世界だろうけど、何か引っ掛かるのかな?
「あぁ、そうでしたね。
下の世界について知るのは、正式に騎士になってからですからね。
簡単に説明しておくと、ナツメ君が元いた世界だね。
禁書庫から逃げ出したけど、危険性が無いと判断された異形は監視付きで放置する事があるんだ。
代表的なのは黒妖犬や、土地神として祀られてるような人ならざる者がそれだね」
へぇ、それは僕も初めて知ったな。
もしかすると、昔からある妖怪とか未確認生物の正体は、高確率で異形かもしれないのか……
「ねぇ、ナツメ君。後で下の世界の話、聞かせてね?」
「別に構わないけど、語れる程の思い出ないよ?」
いやあるにはあるけど、家族間の些細な物だ。
強烈なインパクトの人もいるから、話題には困らないけど。
ルーナが納得した所で、会議がまた進む。
「そんな訳で、神域には軍勢が来る事が予想されます。
来たりし時に備え、騎士隊では対軍勢の訓練及び、大量の武器の補給をしてもらいたい。
我々は住民の図書館への避難訓練と、避難場所の確保を優先させます。
その他に意見はありますでしょうか?」
「武器の確保に関してですが、下の世界からも拝借してよろしいのでしょうか?」
「出来る限り控えたいですが、そうも言ってられません。
今回ばかりはかなりの量をいただきましょう。
現地の方との交渉は、必要であれば僕も同行しますので、声を掛けてください」
「分かりました」
それからも質疑応答がしばらく続く。
正直、専門的過ぎて少し難しい話になってきた。
先輩とセルビアは、後ろの方で肩を寄せ合って寝ている。
会議はかれこれ昼前まで続き、ようやく終わりを迎えた。
会議室にいた人達がまばらに帰り始める中、僕はオラシアさんに呼び止められる。
「ナツメ君、ちょっといいかしら?
午後からなんだけど、今日は半休にしてクーちゃんやセルビアちゃんを遊びに連れて行ってあげて欲しいの。
平気そうな顔はしてるけど、心のケアはちゃんしてあげたくて……」
「分かりました。
午後からは僕やルーナ含めた4人で遊んで来ます」
「ありがとう。ごめんね、何も出来なくて……」
そう言ったオラシアさんの顔は、珍しく少し暗い。
そんなの気にしていないし、何もしてない訳じゃないのは誰もが知っている。
出来ないのは仕方ないんだから。
「どうか、思い詰めないでくださいね?
じゃあ、4人で楽しんで来ますす。
帰る頃にはみんな元気にさせて見せますから!」
そんな訳で計6人で来ました、あのお店!
今回は僕達の他に、レヴィアさんにモネさんまで誘ったらノリノリで来てくれた。
「いやぁ、ありがとうねナツメ君!
このお店なら喜んでご相伴に与っちゃうよ!
ねぇ、レヴィアちゃん?」
「え!? ははは、はひ!!」
レヴィアさん、緊張してるなぁ……
モネさん、こんなでも騎士団長だししょうがないか。
店のドアを開けると、カランカランと子気味のいい音で迎えられる。
「おや? いつぞやの嬢ちゃん達にモネちゃんまでいるじゃねぇか!」
「あっ、大将久しぶり! いつものやつ2皿ね!
みんなも大っきいやつでいいよね?」
「はい。ありがとうございます」
店に入って即注文したぞ……しかも2皿!
恐らく、1つは全部食べる気だ。
どっちみち注文するつもりだったし良いか。
「先輩、ただ普通に食べても面白くないですよね?」
「……?」
「どっちがいっぱい食べられたか、勝負をしましょう!
先輩が負けたら……先輩からクーちゃんへ呼び方を格下げします!」
「……っ!? ……む……それは…聞き捨てならぬ……
……本気を見せる時が……来た。
クークラが勝ったら……後輩が…なんでも言う事……1つ聞く」
「良いでしょう……負けませんよ?」
「……望むところ」
先輩も乗り気になってくれたみたいだ。
セルビアは今回はルーナに見ていてもらおう。
負けられない戦いが始まる!!
今回も見事に完食。
ルーナ、レヴィアさん、モネさんの3人は早速味の感想に華を咲かせる中、僕と先輩は──。
「……うっぷ……後輩……」
「うっ、僕の勝ちですかね? うぅっ……」
「……セルビア……どっちが……勝ち?」
「えぇ!? う〜ん、えっと……
く、クークラお姉ちゃん……かな? なんて……」
負けた!?!?
いや、正直同じくらいだったとは思うけど、負けかぁ……
でも、本来の目的は達成出来たっぽいかな。
「……ふふ……後輩…言う事……なんでも聞く……うっ…」
「そうですね。約束は守りますよ、先輩」
「……ん……ふふふ……」
うん。いつもの可憐な先輩に戻ったかな。
先輩に俯いた表情は似合わない。
これからは僕がリオ爺の代わりに、先輩の笑顔を守らないといけないな。
その後、モネさんは先に帰ってしまったが、レヴィアさん含む5人でクタクタになるまであちこち遊びに回った。
図書館に帰る頃には、すっかり暗くなっていた。
とても、楽しい1日だったな。
読んでいただきありがとうございます!
感想や評価、いいね等をいつもありがとうございます!
皆様の応援のおかげで、モチベーションが高いです!
引き続き『ライフ イン ライブラリ』をよろしくお願いします。
次回をお楽しみに!!




