【第34話】商業ギルド
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決闘が終わった翌日の昼よりの朝、僕の心地よい微睡みは唐突に打ち砕かれた。
「ナツメ君!! 起きてるんでしょ!?
聞いてよ! わたしの2つ名が『雷』じゃなくて『怒槌』ってホントなの!? ねぇえ!」
「……ルーナ……後輩の首…もげちゃう」
聞き慣れた声の主が僕の肩を激しく前後に揺する。
止めが入らなかったら、危うく脳しんとうを起こしていたかもしれない……
寝ぼけた僕の前にいたのは、空色のワンピースを着たルーナと、いつもの深緑の長袖メイド服の小さな先輩クーちゃんだった。
詳しくは分からないが、どうやらルーナは自分の2つ名の由来を知ってしまったようである。
いつか発覚するとは思っていたが、まさか翌日とは……
「痛たたた……
ずっと隠しておくつもりも無かったけど、一応その事を知った経緯を聞いてもいい?」
「ナツメ君が寝てる間にね、商業ギルド運送部のカティさんって覚えてる?。
その人に私達が使ってた武器を返還するのを手伝っていたんだけどその時に…ね」
カティさん……あぁ、あの桃色ショートヘアの異様に元気な人か。
カティさんが悪いと言う訳では決して無いけど、お喋りそうだったもんな……
「で、どうなのナツメ君!
わたしの2つ名は『怒槌』なの?」
「う、うん……
言い出したのは観客の人達なんだけど、それが人から人へと拡散していって、今に至るんだよ……」
「そ、そんな……
せっかく雷に纏わる2つ名を貰えたと思ったのに。
こんなのって無いよぉ……」
ルーナはベッドに顔を埋め、ポカポカと僕を叩く。
なんか、罪悪感あるな……
なんか話を逸らして機嫌を取るしかないか。
「2つ名に雷があると何かがいいの?」
「えっと、なんて言えばいいのかな……
聖天騎士にとってね、『光』と『雷』って言うのは特別な物なの。
『光』は速さを、『雷』は強さをそれぞれ象徴する感じで、もちろん過去にはどちらでも無い、例えば『聖拳』って2つ名を持ってる人もいたし……
まぁとにかく! 雷と光はすごいの!」
なんか雑にまとめたな……
でも実際、決闘でのルーナの力も加味された上で、ダブルミーニングの『怒槌』なんだと思う。
まぁ、気休めにはならないと思うけど……
この調子でもっと話を逸らしていこう。
「あっ、そうだ。
さっきまで武器を返す手伝いしてたんだよね?
ミョルニルちゃんはどうしたの?」
なんてことは無い質問だったはずなのだが──。
「……返した。
うぅっ。わたしのミョルニルちゃん……
涙の別れを……告げてきたよ」
これは地雷を踏んじゃったかな……
ルーナの瞳がうるうると滲む。
変な言い方だが、束の間の長年の相棒だったんだ。
「こんな事言うのもなんだけどさ……
今から新しい武器、見に行ってみない?」
「新しい武器……?」
「せっかくバッジを貰ったんだから、贅沢はしないにしても、新しい武器を買うくらいは大丈夫だよ!
マルタさんの所にも顔を出したいし、今から一緒に行かない?」
「行く!!」
「……クークラも…行く」
こうして僕とルーナ、何故か先輩も商業ギルドに向かう事になった。
図書館から徒歩で数十分、1番栄える大通りにある商業ギルドに着いた。
簡素な造りだが、3階建ての立派な建物だ。
中に入ると、受付の人が座るいくつかの窓口が出迎えてくれる。
病院の待合室みたいで少し苦手だ……
そんな事を思いながらも取り敢えず、受付のお姉さんに話しかける。
「あの、すみません……」
「はい!
あ、ナツメ様とルーナ様、それとクークラ嬢ですね。
少々お待ちください、ギルド長に連絡入れてみます」
「え? あ、はい……」
様付けにむず痒さを感じながらしばらくすると、受付のお姉さんが戻って来る。
「ギルド長は現在、図書館から返納された物品の整理をしていまして、差し支えが無ければ来て欲しいそうです。
お手数お掛けしますが、こちらまで足を運んであげてください」
「わ、分かりました。ありがとうございます」
お姉さんの綺麗なお辞儀に見送られながら、僕達はギルドを後にした。
教えて貰った場所は大通りから少し外れた、少し人通りの少ない場所にある倉庫だった。
少しだけ開いた倉庫の扉から恐る恐る中に入る。
すると──。
「あ〜っ! ナツメ君じゃないっスか!
お久しぶりッス!」
中で作業をしていたカティさんが僕に気付くと、両手を振って迎えてくれる。
嬉しいのだが……
ゴトンッ!!!
「グぇっ!?」
悲痛な叫び声が上がる。
カティさんが手を離した事で、金属製の大きな箱の蓋が作業をしていた誰かの首にギロチンしたのだ。
「あちゃ〜、ギルマス申し訳ないっスね……
あははは……」
「カティ、君という奴は……
首が取れるかと思ったよ、まったく……
おや、これはナツメさん、お久しぶりですマルタです!
嬉しいですね、本日はどう言ったご要件で?」
「はい、僕の歓迎会以来ですね!
それと今日はですね、相方の武器を探したくて……
今朝返還したので、新しいのを探しに来たんですよ。
それと、首は平気ですか?」
「ご心配ありがとうございます。私は大丈夫ですよ。
それよりカティ、君説明していないのかい?
使う武器が決まれば、品質の良い物を渡すって契約だったでしょうが……」
そんな契約だったのか。
カティさん、冷や汗を流しながら「おかしいッスね」とか言ってるし……
マルタさんは額を抑え、軽いため息を吐いた後、ルーナの方に向き直る。
「貴女がルーナさんですね。
先日の決闘はお見事な勝利でした。
そして戦い方を見るに、貴女の得物は大型の戦鎚ですね」
「は、はい!」
「では、確か…こっちの方に……
あった! こちらなどいかがでしょう?」
倉庫の少し奥の方から、それはそれは見事な戦鎚を持って来る。
以前のものと比べて、幾らか装飾のような彫りもあり、白銀の輝きもとても綺麗だ。
ルーナは……言うまでもない。
こんなに爛々と瞳を輝かせているのだ、かなり気に入ったのだろう。
受け取った戦鎚を数回、軽く振るう。
「あ、ありがとうございます!
これ、凄いかっこいいです!」
「それは良かったです。
それにしても、片手で振り回せるんですね……」
あ、平然と持ってきたから大丈夫なんだと思っていたけど、全然大丈夫じゃなかった……
今も腰を叩いり腕を揉みほぐしている。
「その武器がこれからの戦いで活躍するのですね……
いやぁ、感慨深いです!
そういえば、リオテークさんから聞いたのですが、明日から初めてのお仕事らしいですね。
確か……『シンデレラ』の異形討伐って話です」
「えっ、そうなんですか?
初耳です……」
「あの方は重要な事を伏せたり、後出しする悪癖みたいなのがありますからね……
ここから応援していますよ」
「ありがとうございます。
ルーナと一緒なら何とかなるんで!」
その後は軽い雑談をして解散になった。
話の最中、先輩はずっと寝てたな。
十中八九サボりに来ただけだ。
それにしても──。
「『シンデレラ』か……」
一抹の不安を胸に、3人で帰路に着いた。
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