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【第3話】歓迎会




 目の前の人物の顔を見て、僕は言葉が出なかった。

 着ている服とか雰囲気は違うものの、見た目はほとんどじいちゃんなのだ。

 


「いかがなさいましたかな? そんな不思議なものを見るような顔をして」


「えっ、あの…ごめんなさい。僕のよく知る人にとても似ていたもので、驚いていました」


「そうですか。それは驚かせてしまいましたな。

 その顔を見る限り、相当似ていたのでしょう」



 全く別の人だと理解はしている。しかし、頭の中でどうしても、じいちゃんと重なってしまうのだ。

 服は燕尾服だし、髪型も長めの髪を後ろで束ねているし、何より言葉遣いがとても丁寧だ。

 じいちゃんではない、でも顔や身長、笑った時の目のシワなんかが、記憶の中のその人と完全に一致するのだ。



「はい……瓜二つでした。でも、もう大丈夫です。

 これからよろしくお願いします、図書館長さん!」


「こちらこそ、これからよろしくお願い致します。

 それと皆からは、リオ爺と呼ばれていますので、そう呼んで頂いても構いません」


「分かりました、リオ爺さん!」



 図書館長改めリオ爺は僕に名前を呼ばれると、満足そうに頷いていた。

 リオ爺への挨拶が終わると、次は僕を案内してくれた女の子が話しかけてきた。



「…クークラは……クークラ……よろしく……キュピーン」



 深い緑を基調としたフリフリのメイド服に、頭の後ろに白いリボンを付けた、ブロンズ髪の少女。

 無表情ではあるが、決めポーズはばっちりと決めている。



「よろしくお願いします、クークラさん。

 決めポーズ、とても可愛いと思います!」


「……ん……新人……見込みある……! 特別に……クーちゃんって呼ぶ事を……許す」



 そう言って彼女はぐっ、とサムズアップする。

 クーちゃんさんだと少し違和感があるしここは、



「これからよろしくお願いしますね、クーちゃん先輩」


「……ッ……先輩……! いい響き……」



 良かった、クーちゃん先輩は先輩呼びを大層気に入ってくれたようだ。

 目をキラキラと輝かせた後、軽い足取りで食事を取りに行ってしまった。



「坊や、随分とクーちゃんに気に入られたみたいね?

 あの子、人見知りする方だから、あんなに喋るのはレアなのよ?」


「そうなんですか? でも、嫌われてるようじゃ無くて良かったです、えっと……」


「そうね。 ああ、アタシはアベリア。

 お姉さん、って呼んでちょうだい?」



 そう言っているが、見た目は6割型男性である。

 女性用の礼服のような黒いドレスに、紫色のショートボブ、そして何だその逞しい腕は……



「えっと……アベリアさんって呼ばせて貰いますね。

 お姉さん呼びすると、拗ねちゃう可能性がある女神様がいるので」


「あら残念。でも、優しいのね。そういう所も好きよ?

 これから末永く、よろしくね?」



 バチン!と音が聞こえそうなウインクをされ、背中の辺りがゾクッとした。

 今気付いたのだが、広大な図書館の面積に対して、従業員が少な過ぎないだろうか?

 まだ挨拶をしてない人を含めても少なすぎる。

 これから自分がどんな仕事をするかまだ分からないが、少なくとも激務になりそうな事は確かだ。

 そう思い、小さくため息を吐くと、



「心配事かい? その顔を見る限り、この人数に驚いているんでしょう?」



 声をかけてきたのは、先程まで空いた料理の皿を下げたり、クラッカーの紙切れを回収していたりと右往左往していた人である。

 短い黒髪に、ヨレヨレの燕尾服、目の下の濃すぎる隈。

 なんと言うか、苦労人を絵に書いたような人である。



「はい、あまりにも少な過ぎる気がしまして……」


「その辺はね、まぁ何とかなるよ。というか、なるようにしかならないから大丈夫だよ、ハハハ、はぁ…」



 と虚ろな目で憂鬱そうに答えてくれる。

 なんだろう、この人には優しく接してあげないといけない気がする。

 


「早く仕事を覚えて、少しでも手伝えるように頑張ります!」


「ああ、ありがとう。それと、僕の名前はアルバ。

 副館長をしていて、ここの仕事の約5割を担っています。

 楽をさせてくれることを願っているね」


「5割!? 1人でそんなに仕事しているんですか!?」


「慣れだよ、慣れ……」



 それだけ言って、アルバさんは僕の肩にポンっと手を置いて、そのまま歩いていった。

 あと挨拶ができてない人は2人。今までは向こうから声をかけられていたが、残りの2人はこっちから声をかけよう。

 とりあえず目に付いたのは、お皿に山盛りの料理を乗せて、幸せそうに頬を膨らませている女性だ。



「あの、初めまして! 明日からここで働く事になったナツメです! 何卒よろしくお願いします!」


「…っ! ング〜むぐぐングムム! んぐ、むぐッ!?!?」



 話しかけると、焦った様に食べ物を飲み込もうとした。 

 その結果、喉に食べ物を詰まらせかけていたので、背中を叩いて落ち着かせる。



「はぁ、助かった。ありがとう、ナツメ君……だったよね?」



 そう言って、料理をテーブルに置き、姿勢を正した。

 動きやすそうな軽鎧、鶯色のポニーテール、天使の翼。

 同じ天使なのだろうが、メイレールさんとは違い、この人の翼は腰の辺りから生えている。



「アタシは聖天騎士隊所属、騎士隊長のモネだ。

 職員ではないけど、図書館ではうちの隊員がよく世話になっているから招かれてる。これからよろしくな!

 機会があれば、是非とも見学に来てよ!」


「はい!是非とも行ってみたいです」


「おっ、いいね! 男の子は武器とか好きでしょ?

 自慢の武器庫とか案内するよ!」



 それは嬉しい! 本物の武器とか少し異世界感ある!

 これは見に行かないという選択肢は無い!



「是非ともお願いします!」


「君が来るのを心待ちにしておくよ。

 あっ!アルバ! その辺りの肉はアタシのだから残しておいて!!」



 まだ食べるのか、あの細身の何処にあの容量の食べ物が入っているのだろう?

 モネさんを見ていたら、お腹が減って来た。

 挨拶に夢中になっていて、まだ料理を食べていない。

 近くにあるお皿を手に取り、目に付くご馳走を盛り付けていく。



(は!? 美味っ!! ってか、これ何の肉!?)



 今まで食べた事の無い料理に、テンションは一気にマックスボルテージである。

なんせ、今まで病院食くらいしか食べた事がないのだ。

 たまに、じいちゃんが持ってきた缶詰をこっそり2人で食べたりしたけど、基本的には少し薄味の病院食なのだ。



(今食べているのが一般的にローストビーフと呼ばれてるやつでは!? 生きてて良かった〜、1回死んでるけど)



「ウチの料理はお口に合いましたかな?」


「はい! めちゃくちゃ美味しいです!」



 話しかけてきたのは白髪の天使のお兄さんだった。

 服装はなんて言うか、古代ローマとかのそれっぽい。

 そういえば、まだ1人挨拶していなかった。



「それは良かった! 今日並んでいるお料理は、私の選りすぐりの料理人に作って頂きましたので、存分に舌鼓を打ってください」


「もちろん、そうします! とても美味しいと伝えておいてください」


「ハハッ! 皆喜びますよ。必ず伝えておきます。

 一応、自己紹介をさせていただきますね。

 私はマルタと申します。この天界の商業ギルドのギルド長を勤めております。

 天界にある飲食店や売店は全て私の管轄ですので、何か必要なものがあればいつでも頼ってください」



 と言いながら丁寧に名刺を渡してきたので受け取る。

 サラッと言っていたけど、天界のお店が全て管轄って凄いな。



「まだ来たばかりなので、色々と頼らせてもらいます。

 これからよろしくお願いします!」


「ええ、こちらこそよろしくお願いします。

 いつでもギルドで待っておます」



 これでここにいる全員に挨拶が終わったので、ゆっくりとご馳走を堪能することができる。

 個性が尖った人達だけど、みんなとてもいい人達だ。

 明日から何をするのかは分からないけど、今日は歓迎会を全力で楽しもうと思う。






 その後、歓迎会はお酒を飲みすぎてベロベロになったアルバさんが倒れた所でお開きとなった。

 今日は皆で応接室で寝るようだ。

 明日からはいよいよ仕事が始まる。



(明日からは頑張らなきゃいけないな)



 期待と不安で胸を膨らませながら、眠りについた。



お楽しみ頂けたでしょうか!


今回で登場人物が増えたので、次回はストーリーとは関係ないですが、人物紹介をしていきたいと思います。


みんなお気に入りのキャラなので、皆さんにも好きになって欲しいです!


最後によろしければ、感想やブックマーク、誤字報告などありましたら、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] クークラの登場です。この物語、印象としてとても可愛らしいお話だと感じていますが、その象徴たるキャラクターはクークラだと思っています。言葉少なめですが、その行動が示すものがいちいち可愛らしい…
[良い点] クークラ可愛い! こういう無表情で感情の起伏なさそうに見えて、実はそうじゃないキャラ好きなんですよね~
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