【第2話】神域の図書館
天界にある図書館の職員?になる事になった。
しかし、僕の身体は大丈夫なのであろうか?
元々病魔に蝕まれ続けていた身体である。まともに仕事ができるとは思えない。
「あの… オラシアさん、いや神様だからオラシア様の方がいいですかね?」
「そんなに固くならなくていいですよ。気軽にお姉ちゃんって呼んでくれてもいいですよ!」
「あっ、じゃあオラシアさんって呼びますね」
いくら美人さんでいい人とは言え、初対面の人にお姉ちゃん呼びは恥ずかし過ぎる。
普通に話しかけるのも緊張するのに勘弁して欲しい。
「むぅ、恥ずかしがらなくてもいいのに……
それはそうと、何か聞きたいことがあったのでは?」
「そうでした! 僕の身体なんですが、病気の影響で不自由なんだけど、仕事ってできるんですか?」
「その事に関してなのですが、天界では病気なんてほぼありませんよ? 不老不死という訳ではありませんが、向こうでは心の強さや想像力がそのまま身体に影響します。
なので、ナツメ君が病気になりたいと思わない限り、お仕事はできると思うので安心してください!」
その説明を聞いてひとつ試したい事ができた。
心の強さや想像力がそのまま身体に影響するのならば、チート無双みたいな事も出来るのではないか!?
気を溜める為に少し踏ん張ったポーズで構えて、史上最強の自分を想像してみる。
(うぉぉおおお!! 力が漲ってくるようだ!!)
「すごく言い難いのですが、どれだけ強い想像力でも、身体能力はさほどあがらないの……」
そんな事言われたら、僕は1人で漲ってたおかしな奴になってしまうではないか。
「オラシアさん……先に言って欲しかったです」
「ごめんなさいね? すっごく楽しそうな顔してたから止められなくて…」
そんな話をしていると、オラシアさんの後ろから何者かの手だけが虚空から現れ、そのままオラシアさんの後頭部を鷲掴みにした。
「え!? なんですか!? 痛い!痛い! 割れちゃいます! 頭が割れてしまいますぅ!!!」
急な出来事に半狂乱のオラシアさんを眺めていると、その手の持ち主が虚空からゆっくり歩きながら現れた。
長い灰色の髪、金色の瞳、深い紺色の服、何より目立つのは背中の後ろに付いている2対4枚の純白の翼だろう。
「こんな所でサボっていましたか、ナツメさんの迎えは私が担当すると事前に説明しましたよね? 頭に何も詰まってないんですか?」
「待って! メルちゃん待って! 誤解があるんです! 確かに説明はされたけど、仕事が嫌になってサボってたとかそういのじゃな痛い痛い痛い!!!」
メルちゃんと呼ばれたその女性は顔こそ無表情だが、容赦なく、仮にも女神様の頭を握り潰そうとしていた。
「ま、待ってください! こっちに来たばっかりの僕に色々と教えてくれたんです! どうか離してあげてくれませんか?」
オラシアさんがあまりに可哀想で見ていられなかったので、助け舟を出してみた。
案の定、オラシアさんはうるうるとした目で僕を見ている。
「分かりました。今回はナツメさんに免じて許しましょう。ですが、帰ったらしっかりと仕事を終わらせて貰いますからね?」
そう言って手を離し、僕の方に歩いてきた。
後頭部を鷲掴みしていた手から解放されたオラシアさんは涙目で頭をさすっている。
「あ、あの……あなたはいったい誰なのでしょうか?」
「初めまして。先程はお見苦しい駄女神をお見せしてしまいましたね。私の名はメイレールと申します。貴方を天界に連れていく役割を預かっていますので、よろしくお願い致します」
そう言って彼女は深々と頭をさげてくれた。
無表情で、声に抑揚がほとんど無くて、少し怖い印象だけど、少なくとも悪い人ではないらしい。
「では、天界に向かいますので、こちらを身に付けていただけますか?」
そう言われ、謎のリングを手渡された。
「えっと、これは何ですかね?」
「これは、言うなれば天使の輪みたいな物ですかね?
私たち天界の住人は全員これを身に付けています。これを身に付けていないと、天界に入るどころか、認識すら出来ません。」
「頭の上とかに浮かせるんじゃないんですね」
「そうですね、外交の時などはそうしたりしますが、浮かせ続けるのは魔力を消費し続けるので疲れるんですよ。
私の場合、普段は手首に付けてます」
天使の輪とは天界を認識する為のアイテムのようだ。
それはさておき、先程の会話で僕が気になったのは、魔力という言葉である。
「もしかして、魔法とかって使えたりするんですかね?」
「そうですね。使えない事はないですが、ナツメさんは恐らく使えないと思われます。
私たちは、空気中にある魔力をこの翼から体内に取り込み、魔法を行使するのですが、ナツメさんには翼がありませんので……」
ああ、なんか上げてから落とされてばっかだな。
いや勝手に上がってるのは自分だから何とも言えないのだが、少し寂しい気持ちにはなる。
魔法が使えなくてもこの先、素晴らしい冒険が待っている事に期待して、手首に渡されたリングを付けた。
すると、真っ白な空間だったはずの目の前に大きな門が現れる。
「えっ!? 今急に門みたいなのが出てきましたけど、ずっとそこにあったんですか!?」
「そうですよ。この門の先が天界です。私が出てきた時に、恐らく手しか見えてなかったですよね? それは体が門より天界側にあったからです。 なので、天使の輪を持っていないナツメさんには、私の姿が見えなかった、と言う訳です」
「それではナツメ君! 早速中に入って見ましょうか。
私含め天界の住人は貴方を歓迎します!」
そう言われて、オラシアさんに背中を押されながら門をくぐった。
門をくぐって1番最初に目に付いたものは、長い一本道だった。その道にそって店や家などの建物が並んでいる。
その道の1番奥には、他の建物とは比べ物にならない大きさの神殿のような建物がそびえ立っていた。
その建物に向かって飛んでいく天使や、出てくる天使もちらほら見える。
「あの1番奥にある建物は王城とか、神殿とかそういう類の建物ですか?」
「いえ、あちらがナツメさんがこれからお世話になる神域の図書館ですよ」
あの大きさで図書館!? 少なくとも東京ドーム以上の大きさはある、実物は見た事無いけど…
「あんな所で僕、働けるんですかね?」
「大丈夫ですよ、ナツメ君! みんないい人ですから。
今日だって、あなたの歓迎会をする予定なんですから!」
「オラシア様、何でそれを先に言ってしまうのですか…」
どうやら割と歓迎ムードらしい。
僕としてはとても嬉しい限りである。
3人でそんな話をしながら、少しずつ図書館への歩を進めていく。
40分近く歩いただろうか? 図書館の近くまで来たのだが、目の前にすると圧巻の一言だ。
表にある柱1本1本がジェネラル・シャーマン級に大きい、知らない人もいるかもしれないけど、これは世界で1番大きいとされる木である。自慢ではないが、これももちろん実物は見たことなどない。
「ここまでお疲れ様でしたナツメ君。
ここがこの都市の最重要機関、神域の図書館です!」
「ホントに凄いですね、まだここで働く実感が湧きませんよ……」
「では、中に入りましょうかナツメさん。
もう少し前にも何処ぞの女神が言っていましたが、皆が中で待っておりますので」
恐る恐る図書館の中に足を踏み入れる。
すると驚く事に、外から見た大きさと、中の広さが全く違うではないか。室内の方が圧倒的に広いのである。
それこそ、この都市が丸々1つ収まるのではないかと思うほど広い。
そして何より圧倒的な本の量である。どこを見回しても本棚がある。上を見上げると、本棚が宙に浮いている。
The ファンタジーな光景が目の前に広がっていた。
あまりの広大さに呆気に取られていると、何処からか走ってきた少女に袖口を掴まれて引っ張って行かれる。
「…………主役は…………こっち……」
恐らくは歓迎会の場所に案内してくれているのだろう。
メイド服を着たブロンズ髪の少女に連れられてしばらく走ると、応接室と書かれた部屋の前にたどり着いた。
「……………開けて…………いいよ……?」
そう言われて扉を開けると、部屋のあちこちからクラッカーの音が鳴り響き、拍手で出迎えられた。
すると、1人の男性が僕の方へ歩み寄って来た。
「初めまして、わたくしの名はリオテークと申します。
この神域の図書館にて館長を努めさせて頂いております」
図書館長が直々に挨拶をしてくれたので、僕も挨拶をしようとして図書館長の顔を見て驚いた。
(えっ!? じいちゃん!?!?)
目の前の人物は自分の祖父と瓜二つの男性であった。
読んでいただきありがとうございます。
処女作ながら皆様の感想やアドバイスを色々と頂けて、
嬉し涙ちょちょ切れ丸です!
これからも精進しますので応援よろしくお願いします!