【第18話】壊滅的
自分が人ではないと知った時、驚きはあまりなかった。
そもそもよく考えると、神界に来てから6年以上経ってるのに、僕の見た目が変わってない。
「半神類、ですか……」
「大層な名前ですが、普通の人とほとんど変わりません。
神界に入る時に、心の強さや想像力がそのまま身体に影響を及ぼすと教えられませんでしたか?」
あぁ、ここに来た時のアレを思い出すな。
オラシアさんの前で1人で漲っていた、あの黒歴史を……
思い出したら、ジワジワと恥ずかしさが込み上げてきた。
「その様子を見ると、過去に何かあった様子ですね……
深くは聞きません、何となく想像できますので」
悶えている僕を横目にリオ爺は話を続ける。
「話を戻しましょう。
わたくし達半神類は、心の強さや若さにより外見が変わってきます。
この見た目で分かる通り、わたくしの心はそれなりに老いています。
そして、心の老いは若返る事がありません。
病気にこそならないですが、どう頑張っても老いを引き延ばす事は出来ても、止める事が出来ないのです」
そういえばオラシアさんも、不老不死という訳では無いって言ってたような気がする。
身体が老いるなら、若い身体の方が動きやすいよな。
「今のわたくしは全盛期の頃と比べると非常にか弱い……
ナツメ君達には早い所、異形を鎮める手伝いをして欲しいのですよ」
あのサイズの大兎を拳で殴るだけで吹っ飛ばす輩を一般的に『か弱い』とは言わない。
そんなか弱さがあってなるものか。
「あ、あの! お話の途中にすみません……
その、わたしはどうしていたらいいですか?」
さっきまで僕達の会話を静かに聞いていたルーナが割り込む。
「申し訳ありません。放ったらかしてしまいましたね。
ルーナさんにはまず、貴女に合う武器を選んでもらいます」
「この荷物の山の中から、って事ですよね?」
「はい。お好きな物を手に取ってください。
わたくしは恐らく、ナツメ君に付きっきりになってしまいますので、分からない事があれば遠慮なく聞いてください」
リオ爺はルーナに指示を終えると僕の方に向き直り、以前見た筆を取り出した。、
「では、ナツメ君にはこれの使い方をお教えしましょう。
先日お渡しした羽根ペンは持って来ていますかな?」
うわぁ、部屋の机の上に置いてある……
「部屋にあるので、今からでもいいなら取りに行きます」
「では、そうしてもらいましょう。
わたくしはルーナさんの武器選びを手伝いますので」
僕は合言葉を唱え物語から出ると、駆け足で自室に羽根ペンを取りに戻った。
なるべく急いだけど、数十分近くかかってしまった。
中では何年の時が経っているのやら……
『悪しき者に正義の鉄槌を、助けの声に愛の手を』
合言葉を唱え本の中に入ると、何故かルーナとリオ爺が戦闘の真っ只中だった。
「遅くなりました! 今戻って来ました!」
僕が叫ぶとようやく2人も気付いたようで、戦闘を中断してこちらに走ってくる。
ルーナは僕のそばまで来ると、満面の笑みで話しかけてくる。
「久しぶりだね、ナツメ君。
ナツメ君がいない間に、わたしの武器決めたんだよ!」
そう、さっきから気にはなっていたんだ。
両手で誇らし気に抱えているその武器を。
ルーナが持っているのは、彼女の身長を優に超える巨大な戦鎚だ。
「す、凄いね……重くないの?」
「最初は重かったんだけど、使う度に馴染むっていうか、扱いやすいんだよ『ミョルニルちゃん』は!」
相当愛着湧いてるじゃないか。
しかも、ミョルニルちゃんって……北欧神話の武器にちゃん付けなんだ。
軍神トールも苦笑いしてるよ……
「ちなみに、僕がいない間に何日くらい経ったか分かる?」
「うーん、たぶん1年経ってないくらいかな?」
約1年か、結構経ってるな。
僕もルーナに早く追いつかなくちゃ!
「それではルーナさん、わたくしはナツメ君を鍛えるので、しばらくは自主訓練を続けてください」
「分かりました!」
笑顔で返事をすると、遠くに走って行ってしまった。
「それではナツメ君、持ってきたペンを出してください」
僕はポケットに入れてきた羽根ペンを取り出す。
「目先の目標ですが、兎を屠った時にお見せしたような剣をナツメ君にも書いてもらいます」
「あの剣ですか……その前に聞きたいんですけど、何でリオ爺は羽根ペンじゃなくて筆なんですか?」
「条件さえ満たせば、君の羽根ペンもあるべき姿になりますとも。筆になるとは限りませんがね」
進化か何かするのか? そう思うと楽しみだ!
僕はリオ爺に教わりながら、羽根ペンをインクに付けて空中に剣を書いてみる。
空中に書く感覚は何とも言えないけど、とても楽しい事は確かだ。
「これは……!」
僕の力作だ、手応えもある。
リオ爺はとても驚いた顔をしている。
そして、続いた言葉が───
「控えめに言って、壊滅的ですね……」
酷評を受けた僕は戦闘力を上げる前に、まずは画力を磨く事になった……
読んでいただきありがとうございます!
「面白い!」 「続けが読みたい!」と思ってくれた方は、広告の下の評価☆☆☆☆☆を付けてください!
ブックマーク、感想なども泣いて喜びます(´;ω;`)
次回からナツメ君は神絵師を目指す!?
お楽しみに!




