【第15話】勧誘
聖天騎士隊の養成学校で僕の数少ない友達であるルーナと再会した。
「ルーナって聖天騎士の学校にいたんだね、驚いたよ」
「驚いたのはわたしだよ! 何でここにいるの? 見学?」
「今日は色んな教室を見て回って、僕のパートナーを探してるんだよね」
「パートナーって、クーちゃんじゃないの?」
ルーナは首を傾げている。
普段から先輩後輩の仲だからパートナーだと勘違いされるのも仕方ないか。
「確かに先輩とは数年間一緒に仕事をしてたけど、僕の本来の仕事はまた別なんだ」
「ちょ、ちょっと待って。
まさかとは思うんだけどさ、ナツメ君って図書館長の見習いの人とかだったり……する?」
「うん。その通りだけど、どうしたの?」
ルーナは何故かアワアワと焦っているような様子だ。
「ええっと……そ、その、今までの御無礼、ま、誠に申し訳ないと思いあそばしませ!?」
なんだその初めて聞く言葉は……
「急に畏まられても困るな……
今まで通りにしてよ。ね?」
「分かったよ。はぁ……近い内に図書館長の見習いの人が来るとは聞いていたけど、まさかナツメ君だったとは……」
良かった、普通に話してくれるみたいだ。
僕は落ち着いたルーナに何故そんなに畏まったりしたのか聞いてみた。
「図書館の人達って私達から見ると天上の人達なの。
特に私達Dクラスの人は関わる事すら、本来ままならないし、緊張しちゃうんだよ。
クーちゃんはすごく積極的に関わってくれるけどね」
「……ん……ルーナは…やな感じ……しない」
Dクラスはもしかすると、他のクラスから下に見られたりしているのかな……
もしそうだったら、僕の友達がそういう風に見られているのはとても嫌だ。
ルーナが先輩の頭を撫でて微笑んでいる。
先輩も満更でもない顔で撫でられるがままだ。
こんな光景をずっと見ていたい。
「──よし、決めた!」
「……? 何を?」
「ルーナ、僕達と一緒に図書館に来てよ!」
ルーナを勧誘すると、教室がドッと歓声が上がった。
「マジかよ! Dクラス初の快挙じゃないか!?」
「ルーナちゃん凄い! おめでとう!!」
「これでAクラスの頭でっかち共をギャフンと言わせてやれるぜ!」
と、各々が騒ぎ出し、もう完全にお祭りムードだ。
ここにいる人達からしたら、相当なビッグイベントなのだろう。
「一応、ルーナの返事を聞かせて欲しいんだけど……」
「行く! 行きたいに決まってる!」
良かった、快く来てくれそうだ……
断られてたらかなり気まずかったからな。
「そういう訳でモネさん、ルーナを僕のパートナーとして連れて行ってもいいですか?」
「もちろんいいよ! でもホントに良かったの?
この教室は非戦闘員も多いよ?」
「ありがとうございます! あと、最初の教室でも言った通り、実力だけで決めるつもりは無いんですよ。
ルーナとなら一緒にお互いを高め合えると思えるんです」
僕の意見を聞いたモネさんは腕を組んで、満足そうにうんうんと頷いている。
「確かにそういうのは大事だね!
どれだけ強くても相性が悪いと最悪だからね!」
うん、実際その通りだと思うし、Aクラスの時に出会った2人はどうしても相容れない気がする。
ルーナはクラスの友達に激励の言葉を貰いながら、軽い別れの挨拶をして回っていた。
「ルーナ、もう大丈夫そう?」
「うん、ありがとう。それじゃ早速、図書館に行こ!
不肖ルーナ、頑張ります!」
こうして僕達は3人で図書館に戻る事になった。
モネさんは細かい手続きや書類作成等を片付けると言って、出口までの見送りになった。
見送ってくれる手前まで、Aクラスの生徒への対応を考えねばならないと頭を抱えていた。
〜〜〜 一方その頃図書館にて 〜〜〜
ナツメ達が聖天騎士養成学校を巡っている頃、図書館ではリオテークとアルバによる静寂な鬼ごっこが終わりを迎えようとしていた。
「ふぅ、ようやく捕まえました……
そうあからさまに避けられると傷付きますね」
「そりゃ避けますよ。貴方が僕を探してる時って大抵仕事を押し付けられるか、碌でもない事に巻き込まれるかじゃないですか……」
「ほほぅ……よく分かっていますね、流石アルバです。
ちなみに、今回は前者ですよ。おめでとうございます。
わたくしの報告書を押し付けに来ました」
リオテークは懐から1枚のメモを取り出し、アルバにそれを渡す。
「はぁ……碌でもない事よりはマシですけど……
えっと、今回は──あぁ、兎ですか。ここ数年で異形化の間隔が狭まってますね。って、いきなりナツメ君も連れて行ったんですか!?」
「まどろっこしい説明をしても困惑させてしまいます。
そんな説明に時間をかけるなら、実際に見せた方が圧倒的に理解が早いです」
「また貴方は……くれぐれも気を付けて下さいよ?」
リオテークは万が一にもそのような事態には陥らせないと軽く笑い飛ばし、最後にこう告げた。
「次の物語ではナツメ君を中心に戦わせるつもりです。
帰り次第、特訓を始めねば……」
読んで頂きありがとうございます!
次回からはルーナとの修行が始まります!
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