【第98話】終戦と2度目のさよなら
見渡す限りの異形、異形、異形。
これらを描いた張本人のリオ爺は、心做しか恍惚とした表情を浮かべている。
第三者が見たら、間違い無くこちら側が悪役に見える事だろう。
「さぁ、異形の皆々様……いざ、尋常に参りましょう」
リオ爺の掛け声と共に、異形の大行進が始まった。
ディクティオが描き、今尚燃え続ける『大紅蓮』の炎を気に留めること無く、ただただ行進する。
先頭の数十匹は炎に灼かれて朽ち果てたが、後続がぞろぞろと炎を突破した。
その先にいるディクティオへ襲い掛かろうとする。
しかし、あまりにも遅かった。
既に『能無し勇者の物語』が奴の体内に全て取り込まれた後だった。
炎の奥、異形達の隙間から辛うじて見えたその姿。
人型ではあるが、人のそれでは無い。
今にも倒れそうな程細い四肢、肋骨が浮き出て見える程の痩身、腰辺りまで延びた毛髪。
一見弱々しく見えるが、違う。
普段見ること事が出来ない魔素や魔力と言った物が、空間の揺らぎとして視認出来る。
あんなの、どうするんだ?
「まるで、日本神話に登場する禍津日神のようではありませんか。
人が名乗るにしては、大層な名ですがね」
「禍津日神……」
もはや邪神じゃないか……
まぁ、リオ爺ならそういう感じの方が、なんて言うか、燃えるんだろうか?
異形相手の時は人が変わってたし、さもありなん。
『ア"……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
「っ!!?」
鼓膜がはち切れそうな程の声量。
さながら獣の咆哮だ。
『ハァ……ハァ……ハハハハッ……
アーッハッハッハ!!
ようやく馴染んだか。今なら何でも出来そうだよ。
まずはそうだな……邪魔だ』
その一言で、ディクティオの近くに居た異形が弾けた。
特に何かをした訳でもないのに……
死なないってだけでも厄介極まりないのに、こんな力まで持たれたら堪ったものじゃない。
リオ爺と成り行きを見守っていると、また1人こちら側の人物が合流した。
それも、異形を連れて……
「ナツメ君、無事!?
って、うわっ!? 何これ?」
『こいつは……百鬼夜行か?
っと、あの子がルーナの……』
新手の敵に僕は身構える。
いや待てよ? 何でルーナと並んでいるんだ?
「待ってナツメ君! この人は大丈夫だから。
戦ってる途中で意識が戻ったみたいで……
詳しくは分からないけど、わたしのお姉ちゃんだよ!」
『ご紹介に預かったお姉ちゃんだ!
名前はアステラ! よろしくな少年!』
「え、え? はい、よろしくお願いします?」
『リオテークのお爺ちゃんいるじゃん!
わぁ! 久っさしぶりだ!』
「これは驚きましたね。
アステラさんではありませんか。
異形……なのでしょうか?」
『そうそう! 敵意は無いから安心して欲しい!
そんで早い話、敵はあの異形達で良いのかな?』
合流したと思えば、どんどん話が進む。
この人が前騎士隊長のアステラさんか……
話には聞いてたけど、凄いな。
でも、今は1人でも味方が多い方がいい。
それに、ルーナが大丈夫って言うなら大丈夫だ。
誰よりも信頼出来る。
『それじゃ、行こっか!
ルーナと、ボーイフレンド君?』
「なっ!? まだ違うからねお姉ちゃん!」
『ほほ〜ん。まだ、ねぇ……』
「〜〜っ!! いいから! 行くよナツメ君!」
「う、うん! リオ爺にメイレールさんも!」
「言われるまでも無く。行きますよリオテーク」
「はい。まだまだ若手には負けないと、見せつけて差し上げましょうか、メイレール」
僕、ルーナ、アステラさん、リオ爺、メイレールさんの5人でディクティオを相手取る。
リオ爺が描き出した異形は、ほとんどが奴に倒されてしまい、残りは数える程しかいない。
我先にと駆け出したのはリオ爺、メイレールさんのペアだった。
リオ爺は『大黒天』鎧を描き纏い、メイレールさんと共に駆ける。
あの大柄な鎧で、なんであの速度で走れるんだ……
「元館長として、貴様はここで止める!」
『五月蝿いな、死に損ないがァ!!!』
「させません! リオテーク!」
リオ爺とメイレールさんの攻撃を避ける事無く、全て受けて捌くディクティオ。
奴の殺意、戦闘力はどれをとっても一級品。
2人による剛撃はさながらスコールの如き勢いなのに、1人で相手している。
『ルーナ、少年! 私達も行くぞ!』
「「はい!!」」
僕達も出る。
アステラさんはともかく、ルーナも素手なのか。
いつもなら戦鎚を担いでるはずなのに。
まぁ、アレ相手だと素手の方が良いのか。
「加勢します!」
『何人来た所でぇぇぇえええ!!』
嵐のような暴風がディクティオを中心に吹き荒れる。
ただ、そんなものに臆する者はもう居ない。
皆が暴風の中に突っ込み、懸命に攻撃を加える。
現状は5対1だ。これなら押し切れる!!
暴風の中では黒い雷撃、赤い雷撃、紫の雷撃、そして巨躯の漆黒と疾風の如き漆黒が大乱戦を繰り広げる。
この人数だと、流石のディクティオも全ての攻撃を捌く事が出来ず、少しずつ押されていた。
一撃でも多く、少しでもいいから奴に攻撃を通す!
『ぐぅぅぅうぉぉぉおおおおおおああ!!!!
まだ残ってるんだろ! 来いよケルベロスゥ!』
ケルベロスが残ってる……って事は、モネさんがまだ戦ってるのか!?
何をする気か分からないが、合流させるのは避けたい。
しかし、非情な事に戦況は変わる。
『ウォォォォォン!!』
乱戦に現れたのは……狼、なのか?
いや、現れたと言うのはおかしいか。
なんせ、声はするのに姿が全く見えない。
それと──。
「待て、逃げるなぁぁぁあ!」
モネさんの声だ! 戦いに負けた訳じゃなくて、本当に良かった……
それにしても、近くにはいるのか?
姿が全く見えない。
『っ! 少年! 屈めぇえ!!』
アステラさんの警告とほぼ同時に、体を反射的に地面に突っ伏すさせる。
すると、頭上でさらりと風が通り過ぎた。
次の瞬間、吹き荒れる暴風。
この現象、以前何処かで……
思い出した、これモネさんの技だ!
目に見えない程早く動いて、通り過ぎた後の真空に近くなった空間を埋める為に風が乱れる。
って事は、見えないだけでケルベロスとモネさんはここに居るんだ!
『さぁ来い、ケルベロス!』
『ウォン!』
ディクティオの呼び掛けにそいつは止まった。
姿を現したのはケルベロスなんかでは無い。
言うなれば"神狼"。
体毛は黒く、よく聞く白銀の毛並みなどでは無いが、その出で立ちは間違いなく神話のそれだ。
「お前はアタシが仕留めてやる!」
『何だ貴様は……まぁいい、殺れ』
「騎士隊長として、勝利以外の結末は否定してやる!」
そうしてまた、両者が消える。
少なくとも僕の目にはまるで見えないが、あちらこちらで衝突音が聞こえて来る。
これが『閃光』の2つ名持ちの戦いか……
それと互角にやり合うフェンリルも、相当だ。
『遅いな……そんなのに時間を掛けるな。
もういい、こっちに来い!』
ディクティオは僕達から距離を取ると、右手を横にかざしてフェンリルを呼び付けた。
よく見ると奴は肩で息をしている。
多少なりとも追い詰めてはいるんだ。
奴が呼び掛けたにも関わらず、フェンリルは一向に止まる気配が無い。
そうか、モネさんに阻まれて止まれないのか。
自らの命令に止まらないフェンリルに、ディクティオの苛立たし気な表情が垣間見える。
『早く来るんだ! 雑魚は放って置け!』
「お前は、喧しい!!」
モネさんの声が聞こえた瞬間、ディクティオの右手が宙を舞った。
この場にいる誰もが目で追えていない。
しかし、モネさんが切ったと言う確信はある。
呆気に取られていると、モネさんとフェンリルの動きが止まった。
「さっきから聞いてればさぁ……!
そんなのやら、雑魚やらと随分とアタシを舐め腐りやがって」
『君が切ったのか……
痛みには大分慣れてきたが、さっきのは痛みすら感じなかったな。
すまなかったね、訂正しよう!
君は強い! だが、程度は知れた』
「あ"ぁ!?」
モネさんの口調がかなり荒くなってる……
こんな姿、今まで見た事ない。
「この程度で、程度が知れただぁ?
それなら見せてやる。
聖天騎士隊長にして『閃光』の2つ名を背負っているってのが、どういう意味か教えてやるよぉ!」
刹那、モネさんは音を置き去りにして消えた。
それと同時にフェンリルも風となる。
決着は一瞬だった。
姿を現した時には、既にフェンリルに首は無かった。
そして、残された体はバタリと床に倒れ、粒子状になって消え去った。
モネさんは次いでと言わんばかりに、ディクティオの首も刎ねていたようで、奴の首が無様に床に転がる。
僕達だと防がれるのに易々と……
「強い……でも、らしくないというか」
『そっか、若い子は知らないよな……
あの子は所謂、元ヤンってやつなんだ。
間違っても、絶対怒らすんじゃないぞ?
ぶっちゃけ私でも手が付けられん!』
「元ヤン!? あのモネさんがですか?」
『そう、あのモネがだ。
でも、立派に隊長してるじゃないか……』
聞いてはいけない事を聞いちゃった気はするけど。
でも、あのフェンリルが消えた事で残りは……
「そら、犬っころは討ち取ったぞ。
『閃光』の2つ名といい、隊長の座にいるってのはこういう事だ!
後はお前だけだぞ、首切れ大マヌケ」
『僕は不滅さ。
首が切れた程度では死なない。
それにしても、全員やられたのか……
1人残ってはいるが、何故かそちら側にいると来た』
奴の不死性に目を瞑れば、有利なのはこちら側だ。
復活したディクティオとモネさんの間、割って入るように出てきたのはリオ爺。
「ディクティオ、いい加減諦める事です」
『黙れ、死に損ないめ!!』
「殺す事が出来ぬのであれば、仕方ありません……
わたくしも鬼になる覚悟を致しましょう。
モネさん、任せて貰ってもいいですね?」
「はい、後はお願いします。
アタシは他の応援に回ります。ご武運を」
短く言葉を交わすと、モネさんはそのまま何処かへ行ってしまった。
リオ爺、何をするつもりなんだろう……
「今からお見せする技は、とても戦闘には向いているとは言えません。
それは、心を折る事に特化させた技だからです。
不死が死を乞う程の苦痛を与えましょう」
リオ爺は筆を構える。
対するディクティオは危険も察知したのか、ガラスペンで鎧を描き、守りの体制に入った。
「さぁ、耐えられる物なら耐えてみなさい。
蝕め……『黒色鼠狼処』」
リオ爺は筆を振るって、小さな黒い点を無数に撒き散らした。
すると、その黒い点から無数の茨が這い出でるように周囲を埋め尽くす。
必死に足掻いてはいたが、逃れる事叶わずに数多の茨に拘束された。
そして奴の表情から、一切の余裕は消え失せた。
『グゥォアアア!!! ヴア"ア"ア"!!
痛い痛いいだい!!! ハァ……グゥゥゥウア!!』
余りにも悲痛な絶叫が轟いた。
その茨は奴の体内を侵食しているかの様に見える。
これには流石に、リオ爺以外の全員が少し引いた。
あの技の原理は分からない。だが、分かりたいとも到底思えない。
『ア"ア"! ア"ア"! ガハッ……殺せぇ!
いっぞ殺じでくれぇっ!!』
「貴方が選んだ道です。
痛みを、噛み締めなさい。
ナツメさん、それにルーナさん。最後は任せてもいいですかな?」
「「分かりました」」
『少年、ルーナ。私も手伝おう! 折角だからな。
ルーナ、お前の出せる最高の技を私とぶつけるか?
姉妹なら、ネーミングセンスも似てるだろ!
その後はナツメ少年の出番だ。行けるか?』
「うん、やるよお姉ちゃん!」
「最後は任せてください!」
「僭越ながら、私からぶちかまさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
提案したのはメイレールさんだ。
まぁ、そうだよね。
愛する人を殺された怒りなんて、そうそう収まる訳が無い。
無論、僕達は快く譲った。
悶え狂うディクティオの正面に立ち、腰の辺りに拳を構えた。
「動かない的なら、私の全身全霊渾身の一撃をお見舞いする事が出来ます……」
バチバチと弾ける黒い稲妻、それが構えた拳に徐々に集中しているのが見える。
「これは……私の分!!」
バヂィィィィィイイイ!!!!
ディクティオの鳩尾に、とてつもない一撃が入る。
奴は真っ直ぐ後ろに吹っ飛び、図書館の大扉に叩き付けられた。
そこへ間髪入れずにメイレールさんは飛んで行く。
「そしてこれはリオテークの分だ!!!」
ボゴォォォウ!!!
奴の腹に今度は強烈な膝蹴りが見舞われた。
その威力を物語る様に、図書館の大扉にクレーターができている。
『そんじゃ、次は私達だな! 行くぞルーナ!』
「うん、お姉ちゃん!」
メイレールさんに続いて、アステラさんとルーナの姉妹も駆けて行く。
ディクティオは先程の攻撃で1度死んだようで、傷こそ全快しているが、リオ爺の技の影響は続いていた。
「お姉ちゃん! わたし達のありったけを!」
『ああ! 少年に見せ付けてやろう。姉妹の力を!』
走りながら2色の雷撃が、互いに共鳴するかの如く大きくなっていく。
紅蓮の雷撃はルーナ、濃紫の雷撃はアステラさん。
2つの雷撃は留まることを知らず、周辺にまで影響をもたらす程になる。
ルーナは右手を、アステラさんは左手を大きく振りかぶり、ディクティオの胸部を目掛けて拳を放った。
『星穿つ一撃!!!』
「月砕く一撃!!!」
2人の名前を冠する技!!
そもそもルーナの技で、技名があるものを初めて見る。
そしてその威力!!
重厚な図書館の大扉に大きくヒビが入り、砕け散った。
凄い、正直ここまでとは思わなかった……
さぁ、最後は──。
「僕の番か……」
『折角です。わたくしもご一緒しましょう』
「リオ爺! じゃあ、最後は僕達で!」
『さ、参りましょう』
館内にまで殴り飛ばされたディクティオの元へ。
あの一撃で何回かは死んだのだろう。
奴はほとんど虫の息だった。
僕とリオ爺は一振の大鎌を描き持ち、ディクティオの首へ当てる。
ディクティオは既に意識ここに在らずな状態だ。
もう素直に死んでくれると有難いんだけど……
リオ爺と目を合わせ、タイミング良く2人で大鎌を振り抜いた。
奴の首はゴトリと床へ転がり消えていった。
体も少しずつ灰のようにサラサラと風に流されて、消え去る。
復活する様子はまだ見られない。
やった……のか? ホントに?
どれだけ待っても復生き返る兆しを見せない。
『やったな少年! ほれ、勝鬨をあげとけ!』
「は、はい! 僕達全員の勝利だぁああ!!」
僕がそう叫ぶと、図書館内が避難していた人達の歓声で大いに沸いた。
その中には先輩やセルビア、アルバさんの姿も見える。
お祭り騒ぎの中、アステラさんに異変が起こる。
『おっ? はは、私はここまでみたいだな』
「お姉ちゃん? いや、ダメだよ!
一緒に居ようよ! せっかく会えたのに……」
『そう言うなルーナ。元より、私は既に死んでるんだ。
言い方はアレだが、あの野郎のおかげでこうして会えてんだ。
あいつが居なくなりゃ、消えるのが道理さ』
「そんな……そんなぁ……」
「「「アステラ前隊長!」」」
飛んで来たのは聖天騎士のザックさん、マインさん、ミナさんだ。
『お前達も来たのか……モネは?』
「会うと絶対泣いちゃうからって、意地張っちゃって」
『あの子らしいな……
3人とも、これからもあの子を支えてやってくれ』
「「「はい!!」」」
『おおぅ、もうホントに時間が無いな!
ルーナ、少年! こっち来い!』
言われるがままにアステラさんの元へ向かう。
そして、ルーナ共々抱きしめられた。
『私の妹をよろしくな少年。
ルーナも、しっかりと少年をものにするんだぞ?
最愛の妹に看取られるなんて、最高じゃないか。
じゃあね、ルーナ。元気で……また……』
最後に名残惜しそうにルーナの頭を撫で、光の粒子となって消えてしまった。
「ゔゔ……お姉ちゃぁん……」
アステラさんとのお別れ……
そして、もう1人──。
『おや、次はわたくしのようですな』
「リオ爺! 僕、立派な図書館長になって見せるから!」
『もう充分に立派ですとも』
「リオテーク!」
『おお、メイレール……んむっ!?』
飛んで来たメイレールさんが、いきなりリオ爺の頭を鷲掴みにして唇を奪った。
見ているのも失礼かと、少し目を逸らす。
「別れの言葉は要りません」
『ええ、愛していますよメイレール』
「リオテークさん!」
「……リオ爺!」
「リオ爺さん!」
メイレールさんに引き続き、アルバさん、先輩、セルビアが駆け付けた。
先輩に至っては、リオ爺腰に涙目の顔をグリグリと擦り付けてる。
『これこれ、クークラ……
貴女に泣き顔なんて似合いませんから、ほら』
「……ん……分かった……クークラ泣かない」
『セルビアさん、クークラが立派なお姉さんで居られるように、しっかりと見張っていてあげてくださいね?』
「は、はい!」
これじゃ、セルビアがお姉ちゃんみたいだな……
『それと、アルバ……事後処理は頼みますね』
「はは、考えたくも無いですね……」
『それと、最後に彼奴が復活しなかったのは……』
「ええ、僕のルールだと思います」
『アルバに借りを作ってしまうとは、不覚ですな』
「ご冗談を……そう言えば、ナツメ君はどうしてリオテークさんを描いたのに、普通に会話が出来てるんだい?
その……記憶は」
アルバさんの問いは確かに気になる。
以前に鳥を描いた時は、その鳥の記憶を描いた時点で忘れていたからだ。
『思い入れや、思い出、その人にとって大切だったからでしょう。
そう言う物は記憶が長く残ります。
わたくし自身で以前、実証しましたので』
そっか、リオ爺との思い出か……
ここに来てから色々あったもんな……
『最後に、皆さんにお別れの言葉を伝える事ができ、わたくしはとても満足です。
そう言えばナツメさん、貴方から貰い受けた記憶に面白いものがありましてね』
「面白い記憶?」
『もうこれで最後になりそうですからね。
ナツメ君、いえ……棗。
約束は果たした。世界中とはいかなかったが、お前と冒険する事が出来た……じゃぁな』
「そ、それ……爺ちゃんの……!
うん、うん! 僕、最高に楽しかったよ!!
リオ爺……いや、爺ちゃん!」
リオ爺は満足そうに頷くと、バシャっとただのインクに戻ってしまった。
周りの皆が泣いている。
僕も……何で涙を流しているんだろう……
こうして無事、神殺しの大戦は終戦した。
でも何故か、心には大きな穴が空いた感覚がする。
読んでいただきありがとうございます!
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この作品がランクに乗る日が来る事を祈ります……
いよいよラグナロクが終戦しました!!
まだ少し続きますので、引き続き応援をよろしくお願いします!
次回は閑話、他世界の最後の物語。




