表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/104

【第98話】終戦と2度目のさよなら




 見渡す限りの異形、異形、異形。

 これらを描いた張本人のリオ爺は、心做しか恍惚とした表情を浮かべている。

 第三者が見たら、間違い無くこちら側が悪役に見える事だろう。



「さぁ、異形の皆々様……いざ、尋常に参りましょう」



 リオ爺の掛け声と共に、異形の大行進が始まった。

 ディクティオが描き、今尚燃え続ける『大紅蓮』の炎を気に留めること無く、ただただ行進する。

 先頭の数十匹は炎に灼かれて朽ち果てたが、後続がぞろぞろと炎を突破した。

 その先にいるディクティオへ襲い掛かろうとする。

 しかし、あまりにも遅かった。

 既に『能無し勇者の物語』が奴の体内に全て取り込まれた後だった。


 炎の奥、異形達の隙間から辛うじて見えたその姿。

 人型ではあるが、人のそれでは無い。

 今にも倒れそうな程細い四肢、肋骨が浮き出て見える程の痩身、腰辺りまで延びた毛髪。

 一見弱々しく見えるが、違う。

 普段見ること事が出来ない魔素や魔力と言った物が、空間の揺らぎとして視認出来る。

 あんなの、どうするんだ?



「まるで、日本神話に登場する禍津日神(まがつひのかみ)のようではありませんか。

 人が名乗るにしては、大層な名ですがね」


「禍津日神……」



 もはや邪神じゃないか……

 まぁ、リオ爺ならそういう感じの方が、なんて言うか、燃えるんだろうか?

 異形相手の時は人が変わってたし、さもありなん。



『ア"……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』


「っ!!?」



 鼓膜がはち切れそうな程の声量。

 さながら獣の咆哮だ。



『ハァ……ハァ……ハハハハッ……

 アーッハッハッハ!!

 ようやく馴染んだか。今なら何でも出来そうだよ。

 まずはそうだな……邪魔だ』



 その一言で、ディクティオの近くに居た異形が弾けた。

 特に何かをした訳でもないのに……

 死なないってだけでも厄介極まりないのに、こんな力まで持たれたら堪ったものじゃない。


 リオ爺と成り行きを見守っていると、また1人こちら側の人物が合流した。

 それも、異形を連れて……



「ナツメ君、無事!?

 って、うわっ!? 何これ?」


『こいつは……百鬼夜行か?

 っと、あの子がルーナの……』



 新手の敵に僕は身構える。

 いや待てよ? 何でルーナと並んでいるんだ?



「待ってナツメ君! この人は大丈夫だから。

 戦ってる途中で意識が戻ったみたいで……

 詳しくは分からないけど、わたしのお姉ちゃんだよ!」


『ご紹介に預かったお姉ちゃんだ!

 名前はアステラ! よろしくな少年!』


「え、え? はい、よろしくお願いします?」


『リオテークのお爺ちゃんいるじゃん!

 わぁ! 久っさしぶりだ!』


「これは驚きましたね。

 アステラさんではありませんか。

 異形……なのでしょうか?」


『そうそう! 敵意は無いから安心して欲しい!

 そんで早い話、敵はあの異形達で良いのかな?』



 合流したと思えば、どんどん話が進む。

 この人が前騎士隊長のアステラさんか……

 話には聞いてたけど、凄いな。

 でも、今は1人でも味方が多い方がいい。

 それに、ルーナが大丈夫って言うなら大丈夫だ。

 誰よりも信頼出来る。



『それじゃ、行こっか!

 ルーナと、ボーイフレンド君?』


「なっ!? まだ違うからねお姉ちゃん!」


『ほほ〜ん。()()、ねぇ……』


「〜〜っ!! いいから! 行くよナツメ君!」


「う、うん! リオ爺にメイレールさんも!」


「言われるまでも無く。行きますよリオテーク」


「はい。まだまだ若手には負けないと、見せつけて差し上げましょうか、メイレール」



 僕、ルーナ、アステラさん、リオ爺、メイレールさんの5人でディクティオを相手取る。

 リオ爺が描き出した異形は、ほとんどが奴に倒されてしまい、残りは数える程しかいない。


 我先にと駆け出したのはリオ爺、メイレールさんのペアだった。

 リオ爺は『大黒天』鎧を描き纏い、メイレールさんと共に駆ける。

 あの大柄な鎧で、なんであの速度で走れるんだ……



「元館長として、貴様はここで止める!」


『五月蝿いな、死に損ないがァ!!!』


「させません! リオテーク!」



 リオ爺とメイレールさんの攻撃を避ける事無く、全て受けて捌くディクティオ。

 奴の殺意、戦闘力はどれをとっても一級品。

 2人による剛撃はさながらスコールの如き勢いなのに、1人で相手している。



『ルーナ、少年! 私達も行くぞ!』


「「はい!!」」



 僕達も出る。

 アステラさんはともかく、ルーナも素手なのか。

 いつもなら戦鎚を担いでるはずなのに。

 まぁ、アレ相手だと素手の方が良いのか。



「加勢します!」


『何人来た所でぇぇぇえええ!!』



 嵐のような暴風がディクティオを中心に吹き荒れる。

 ただ、そんなものに臆する者はもう居ない。

 皆が暴風の中に突っ込み、懸命に攻撃を加える。

 現状は5対1だ。これなら押し切れる!!


 暴風の中では黒い雷撃(メイレールさん)赤い雷撃(ルーナ)紫の雷撃(アステラさん)、そして巨躯の漆黒(リオ爺)疾風の如き漆黒()が大乱戦を繰り広げる。

 この人数だと、流石のディクティオも全ての攻撃を捌く事が出来ず、少しずつ押されていた。

 一撃でも多く、少しでもいいから奴に攻撃を通す!



『ぐぅぅぅうぉぉぉおおおおおおああ!!!!


 まだ残ってるんだろ! 来いよ()()()()()ゥ!』



 ケルベロスが残ってる……って事は、モネさんがまだ戦ってるのか!?

 何をする気か分からないが、合流させるのは避けたい。

 しかし、非情な事に戦況は変わる。



『ウォォォォォン!!』



 乱戦に現れたのは……狼、なのか?

 いや、現れたと言うのはおかしいか。

 なんせ、声はするのに姿が全く見えない。

 それと──。



「待て、逃げるなぁぁぁあ!」



 モネさんの声だ! 戦いに負けた訳じゃなくて、本当に良かった……

 それにしても、近くにはいるのか?

 姿が全く見えない。



『っ! 少年! 屈めぇえ!!』



 アステラさんの警告とほぼ同時に、体を反射的に地面に突っ伏すさせる。

 すると、頭上でさらりと風が通り過ぎた。

 次の瞬間、吹き荒れる暴風。

 この現象、以前何処かで……


 思い出した、これモネさんの技だ!

 目に見えない程早く動いて、通り過ぎた後の真空に近くなった空間を埋める為に風が乱れる。

 って事は、見えないだけでケルベロスとモネさんは()()に居るんだ!



『さぁ来い、ケルベロス!』


『ウォン!』



 ディクティオの呼び掛けにそいつは止まった。

 姿を現したのはケルベロスなんかでは無い。

 言うなれば"神狼(フェンリル)"。

 体毛は黒く、よく聞く白銀の毛並みなどでは無いが、その出で立ちは間違いなく神話のそれだ。



「お前はアタシが仕留めてやる!」


『何だ貴様は……まぁいい、殺れ』


「騎士隊長として、勝利以外の結末は否定してやる!」



 そうしてまた、両者が消える。

 少なくとも僕の目にはまるで見えないが、あちらこちらで衝突音が聞こえて来る。

 これが『閃光』の2つ名持ちの戦いか……

 それと互角にやり合うフェンリルも、相当だ。



『遅いな……そんなのに時間を掛けるな。

 もういい、こっちに来い!』



 ディクティオは僕達から距離を取ると、右手を横にかざしてフェンリルを呼び付けた。

 よく見ると奴は肩で息をしている。

 多少なりとも追い詰めてはいるんだ。


 奴が呼び掛けたにも関わらず、フェンリルは一向に止まる気配が無い。

 そうか、モネさんに阻まれて止まれないのか。

 自らの命令に止まらないフェンリルに、ディクティオの苛立たし気な表情が垣間見える。



『早く来るんだ! 雑魚は放って置け!』


「お前は、喧しい!!」



 モネさんの声が聞こえた瞬間、ディクティオの右手が宙を舞った。

 この場にいる誰もが目で追えていない。

 しかし、モネさんが切ったと言う確信はある。

 呆気に取られていると、モネさんとフェンリルの動きが止まった。



「さっきから聞いてればさぁ……!

 ()()()()やら、()()やらと随分とアタシを舐め腐りやがって」


『君が切ったのか……

 痛みには大分慣れてきたが、さっきのは痛みすら感じなかったな。

 すまなかったね、訂正しよう!

 君は強い! だが、程度は知れた』


「あ"ぁ!?」



 モネさんの口調がかなり荒くなってる……

 こんな姿、今まで見た事ない。



「この程度で、程度が知れただぁ?

 それなら見せてやる。

 聖天騎士隊長にして『閃光』の2つ名を背負っているってのが、どういう意味か教えてやるよぉ!」



 刹那、モネさんは音を置き去りにして消えた。

 それと同時にフェンリルも風となる。

 決着は一瞬だった。


 姿を現した時には、既にフェンリルに首は無かった。

 そして、残された体はバタリと床に倒れ、粒子状になって消え去った。

 モネさんは次いでと言わんばかりに、ディクティオの首も刎ねていたようで、奴の首が無様に床に転がる。

 僕達だと防がれるのに易々と……



「強い……でも、らしくないというか」


『そっか、若い子は知らないよな……

 あの子は所謂、()()()ってやつなんだ。

 間違っても、絶対怒らすんじゃないぞ?

 ぶっちゃけ私でも手が付けられん!』


「元ヤン!? あのモネさんがですか?」


『そう、あのモネがだ。

 でも、立派に隊長してるじゃないか……』



 聞いてはいけない事を聞いちゃった気はするけど。

 でも、あのフェンリルが消えた事で残りは……



「そら、犬っころは討ち取ったぞ。

 『閃光』の2つ名といい、隊長の座にいるってのはこういう事だ!

 後はお前だけだぞ、首切れ大マヌケ」


『僕は不滅さ。

 首が切れた程度では死なない。

 それにしても、全員やられたのか……

 1人残ってはいるが、何故かそちら側にいると来た』



 奴の不死性に目を瞑れば、有利なのはこちら側だ。

 復活したディクティオとモネさんの間、割って入るように出てきたのはリオ爺。



「ディクティオ、いい加減諦める事です」


『黙れ、死に損ないめ!!』


「殺す事が出来ぬのであれば、仕方ありません……

 わたくしも鬼になる覚悟を致しましょう。

 モネさん、任せて貰ってもいいですね?」


「はい、後はお願いします。

 アタシは他の応援に回ります。ご武運を」



 短く言葉を交わすと、モネさんはそのまま何処かへ行ってしまった。

 リオ爺、何をするつもりなんだろう……



「今からお見せする技は、とても戦闘には向いているとは言えません。

 それは、心を折る事に特化させた技だからです。

 不死が死を乞う程の苦痛を与えましょう」



 リオ爺は筆を構える。

 対するディクティオは危険も察知したのか、ガラスペンで鎧を描き、守りの体制に入った。



「さぁ、耐えられる物なら耐えてみなさい。


 (むしば)め……『黒色鼠狼処(こくしょくそろうしょ)』」



 リオ爺は筆を振るって、小さな黒い点を無数に撒き散らした。

 すると、その黒い点から無数の茨が這い出でるように周囲を埋め尽くす。

 必死に足掻いてはいたが、逃れる事叶わずに数多の茨に拘束された。

 そして奴の表情から、一切の余裕は消え失せた。



『グゥォアアア!!! ヴア"ア"ア"!!

 痛い痛いいだい!!! ハァ……グゥゥゥウア!!』



 余りにも悲痛な絶叫が轟いた。

 その茨は奴の体内を侵食しているかの様に見える。

 これには流石に、リオ爺以外の全員が少し引いた。

 あの技の原理は分からない。だが、分かりたいとも到底思えない。



『ア"ア"! ア"ア"! ガハッ……殺せぇ!

 いっぞ殺じでくれぇっ!!』


「貴方が選んだ道です。

 痛みを、噛み締めなさい。

 ナツメさん、それにルーナさん。最後は任せてもいいですかな?」


「「分かりました」」


『少年、ルーナ。私も手伝おう! 折角だからな。

 ルーナ、お前の出せる最高の技を私とぶつけるか?

 姉妹なら、ネーミングセンスも似てるだろ!


 その後はナツメ少年の出番だ。行けるか?』


「うん、やるよお姉ちゃん!」


「最後は任せてください!」


「僭越ながら、私からぶちかまさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 

 提案したのはメイレールさんだ。

 まぁ、そうだよね。

 愛する人(リオ爺)を殺された怒りなんて、そうそう収まる訳が無い。

 無論、僕達は快く譲った。

 悶え狂うディクティオの正面に立ち、腰の辺りに拳を構えた。



「動かない的なら、私の全身全霊渾身の一撃をお見舞いする事が出来ます……」



 バチバチと弾ける黒い稲妻、それが構えた拳に徐々に集中しているのが見える。



「これは……私の分!!」


 バヂィィィィィイイイ!!!!


 ディクティオの鳩尾に、とてつもない一撃が入る。

 奴は真っ直ぐ後ろに吹っ飛び、図書館の大扉に叩き付けられた。

 そこへ間髪入れずにメイレールさんは飛んで行く。



「そしてこれはリオテークの分だ!!!」


 ボゴォォォウ!!!


 奴の腹に今度は強烈な膝蹴りが見舞われた。

 その威力を物語る様に、図書館の大扉にクレーターができている。



『そんじゃ、次は私達だな! 行くぞルーナ!』


「うん、お姉ちゃん!」



 メイレールさんに続いて、アステラさんとルーナの姉妹も駆けて行く。

 ディクティオは先程の攻撃で1度死んだようで、傷こそ全快しているが、リオ爺の技の影響は続いていた。



「お姉ちゃん! わたし達のありったけを!」


『ああ! 少年に見せ付けてやろう。姉妹の力を!』



 走りながら2色の雷撃が、互いに共鳴するかの如く大きくなっていく。

 紅蓮の雷撃はルーナ、濃紫の雷撃はアステラさん。

 2つの雷撃は留まることを知らず、周辺にまで影響をもたらす程になる。

 ルーナは右手を、アステラさんは左手を大きく振りかぶり、ディクティオの胸部を目掛けて拳を放った。



星穿つ一撃(アステラ)!!!』


月砕く一撃(ルーナ)!!!」



 2人の名前を冠する技!!

 そもそもルーナの技で、技名があるものを初めて見る。

 そしてその威力!!

 重厚な図書館の大扉に大きくヒビが入り、砕け散った。

 凄い、正直ここまでとは思わなかった……

 さぁ、最後は──。



「僕の番か……」


『折角です。わたくしもご一緒しましょう』


「リオ爺! じゃあ、最後は僕達で!」


『さ、参りましょう』



 館内にまで殴り飛ばされたディクティオの元へ。

 あの一撃で何回かは死んだのだろう。

 奴はほとんど虫の息だった。


 僕とリオ爺は一振の大鎌を描き持ち、ディクティオの首へ当てる。

 ディクティオは既に意識ここに在らずな状態だ。

 もう素直に死んでくれると有難いんだけど……


 リオ爺と目を合わせ、タイミング良く2人で大鎌を振り抜いた。

 奴の首はゴトリと床へ転がり消えていった。

 体も少しずつ灰のようにサラサラと風に流されて、消え去る。

 復活する様子はまだ見られない。

 やった……のか? ホントに?


 どれだけ待っても復生き返る兆しを見せない。



『やったな少年! ほれ、勝鬨をあげとけ!』


「は、はい! 僕達全員の勝利だぁああ!!」



 僕がそう叫ぶと、図書館内が避難していた人達の歓声で大いに沸いた。

 その中には先輩やセルビア、アルバさんの姿も見える。

 お祭り騒ぎの中、アステラさんに異変が起こる。



『おっ? はは、私はここまでみたいだな』


「お姉ちゃん? いや、ダメだよ!

 一緒に居ようよ! せっかく会えたのに……」


『そう言うなルーナ。元より、私は既に死んでるんだ。

 言い方はアレだが、あの野郎のおかげでこうして会えてんだ。

 あいつが居なくなりゃ、消えるのが道理さ』


「そんな……そんなぁ……」


「「「アステラ前隊長!」」」



 飛んで来たのは聖天騎士のザックさん、マインさん、ミナさんだ。



『お前達も来たのか……モネは?』


「会うと絶対泣いちゃうからって、意地張っちゃって」


『あの子らしいな……

 3人とも、これからもあの子を支えてやってくれ』


「「「はい!!」」」


『おおぅ、もうホントに時間が無いな!

 ルーナ、少年! こっち来い!』



 言われるがままにアステラさんの元へ向かう。

 そして、ルーナ共々抱きしめられた。



『私の妹をよろしくな少年。

 ルーナも、しっかりと少年をものにするんだぞ?

 最愛の妹に看取られるなんて、最高じゃないか。

 じゃあね、ルーナ。元気で……また……』



 最後に名残惜しそうにルーナの頭を撫で、光の粒子となって消えてしまった。



「ゔゔ……お姉ちゃぁん……」



 アステラさんとのお別れ……

 そして、もう1人──。



『おや、次はわたくしのようですな』


「リオ爺! 僕、立派な図書館長になって見せるから!」


『もう充分に立派ですとも』


「リオテーク!」


『おお、メイレール……んむっ!?』



 飛んで来たメイレールさんが、いきなりリオ爺の頭を鷲掴みにして唇を奪った。

 見ているのも失礼かと、少し目を逸らす。



「別れの言葉は要りません」


『ええ、愛していますよメイレール』


「リオテークさん!」


「……リオ爺!」


「リオ爺さん!」



 メイレールさんに引き続き、アルバさん、先輩、セルビアが駆け付けた。

 先輩に至っては、リオ爺腰に涙目の顔をグリグリと擦り付けてる。



『これこれ、クークラ……

 貴女に泣き顔なんて似合いませんから、ほら』


「……ん……分かった……クークラ泣かない」


『セルビアさん、クークラが立派なお姉さんで居られるように、しっかりと見張っていてあげてくださいね?』


「は、はい!」



 これじゃ、セルビアがお姉ちゃんみたいだな……



『それと、アルバ……事後処理は頼みますね』


「はは、考えたくも無いですね……」


『それと、最後に彼奴が復活しなかったのは……』


「ええ、僕のルールだと思います」


『アルバに借りを作ってしまうとは、不覚ですな』


「ご冗談を……そう言えば、ナツメ君はどうしてリオテークさんを描いたのに、普通に会話が出来てるんだい?

 その……記憶は」



 アルバさんの問いは確かに気になる。

 以前に鳥を描いた時は、その鳥の記憶を描いた時点で忘れていたからだ。



『思い入れや、思い出、その人にとって大切だったからでしょう。

 そう言う物は記憶が長く残ります。

 わたくし自身で以前、実証しましたので』



 そっか、リオ爺との思い出か……

 ここに来てから色々あったもんな……



『最後に、皆さんにお別れの言葉を伝える事ができ、わたくしはとても満足です。


 そう言えばナツメさん、貴方から貰い受けた記憶に面白いものがありましてね』


「面白い記憶?」


『もうこれで最後になりそうですからね。

 ナツメ君、いえ……ナツメ

 ()()()()()()()。世界中とはいかなかったが、お前と冒険する事が出来た……じゃぁな』


「そ、それ……爺ちゃんの……!

 うん、うん! 僕、最高に楽しかったよ!!

 リオ爺……いや、爺ちゃん!」



 リオ爺は満足そうに頷くと、バシャっとただのインクに戻ってしまった。

 周りの皆が泣いている。

 僕も……何で涙を流しているんだろう……






 こうして無事、神殺しの大戦(ラグナロク)は終戦した。

 でも何故か、心には大きな穴が空いた感覚がする。




読んでいただきありがとうございます!


面白いと思ってくれた方は、評価やブックマーク、いいねで応援してください!

この作品がランクに乗る日が来る事を祈ります……


いよいよラグナロクが終戦しました!!

まだ少し続きますので、引き続き応援をよろしくお願いします!


次回は閑話、他世界の最後の物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ブラボー!!!! ★5個しか入れられないのがもったいない。頼む、もっと増やしてくれ!! ここまで興奮と感動と涙をありがとうございました!!  [一言] もちろん完結まで追わせて頂きます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ