【第1話】 選択肢
皆様初めまして、妥協院リコリスと申します。
この度こうして初めて自分で書いた小説を投稿するにあたってとても緊張しております。
どうか皆さん優しい目で見守ってあげてください。
私の小説が皆様の心の癒しになる事を祈っています。
是非楽しんでください。
『それから皆は平和に暮らしましたとさ、めでたしめでたし』
そんな風に終わる物語が、僕は好きだ。
好きと言うよりは強く憧れている。
黒髪でやや背が低く、顔にはまだ幼さが残る少年 高野 棗は、病院のベッドの上で今日も多種多様な物語を読み漁っていた。ホラー、ファンタジー、ギャグや推理小説、特に異世界転生ものは何度も読み返した。
どこかの小説風に自己紹介するならこんな感じかな?
今日もそんなどうでもいい事を考えながら独り言を呟く。
「どうせ死んじゃうなら剣と魔法の世界なんかに転生して無双してみたいよなぁ」
「縁起でもない事を言わないでよもう…」
「……分かってるよ」
何度も繰り返した母とのやり取りだ。でも、実際自分の寿命がそう長くないことはなんとなく理解しているし感じている。
僕は生まれてから、今までのほとんどを病院のベッドの上で過ごしてきた。病名は聞かされていないけど、現代の医療ではどうもお手上げらしい。
「そういえば母さん。じいちゃんが次に来てくれるのはいつなの?」
「今週の末くらいには来てくれるらしいよ。まぁ、あの人の事だから正直分からないけどね」
そう聞いたのは、たまに会いに来てくれるじいちゃんの物語を聞くことが、数少ない楽しみの1つだったからである。
じいちゃんは所謂冒険家というやつだ。自分の冒険を小説にするのが好きで、度々僕にその冒険譚を聞かせに来てくれたりする。
「次はどんな冒険してくるのかなぁ…」
期待に胸を膨らませながら眠りについた。
◆◇◆◇◆◇◆
待ちに待った週末、朝から胸の高鳴りが止まらない僕は、病室の扉をしきりに気にしながら待ち続けていた。
しばらくすると、コンコン、ガラガラッとやかましい音を立てながら扉を開けて、笑いながら病室に入ってくるド派手な老人が姿を見せた。
「ひっっさしぶりじゃな! 元気か!?」
「僕はそこそこ元気だよ。でも、次からはノックをしたなら返事を聞いてから開けて欲しいし、病院では静かにね?」
背丈は170くらいの痩せ型で、灰色に近い白髪をオールバックにし、細長いレンズの眼鏡の奥には睨まれたら怯んでしまいそうな鋭い眼光を備えている。サンダルに短パン、アロハシャツのこの人は傍から見たらヤバイ人であるが僕の自慢の祖父 高野 勇である。
「早速だけど、じいちゃんの話を聞かせてよ!」
逸る気持ちを抑えきれる訳がない。
「まぁそう急かすでないわ! ゆっくり語り尽くしてやろうじゃねぇか!」
そう言いながらベッドの横にある小さいパイプ椅子に座る。
「そうじゃな、バミューダ海域を手漕ぎボートで横断した話と徳川埋蔵金を発見しかけちゃった話どっちがいい!?」
「今回も相変わらず訳わかんない事してるね……」
いつも思うのだが、それを実行するお金はどこから湧き出しているのだろうか?
もしかするととんでもない富豪なのではないだろうか?
そうして、僕のじいちゃんの長い冒険譚が始まった。
じいちゃんの冒険譚は今回も普通の人からしたら奇行としか思えない、それでいて心躍るそんな話ばかりだった。
「どうじゃナツメ! 今回も大冒険じゃろ!!??
まぁ、今回はいつも以上に死にかけたんじゃがな!」
「うん凄かった! でも、そろそろ年齢の事を考えた方がいいと思うよ?」
「ほう、一丁前にワシの心配か!? ナツメと一緒に冒険するまでワシはまだまだ現役じゃて! もうちょい前に約束したじゃろ?」
「そんな昔の事よく覚えてるね、僕がまだ6歳くらいの時にした約束だったよね?」
そう、記憶は曖昧だが確かに約束した覚えがある。
小さい頃に僕の病気が治ったら世界中を一緒に冒険してくれるという約束をした。
「ナツメとの約束を果たすまでは死んでも死にきれんわ!」
「ありがとう……絶対一緒に冒険しようね!」
「おう!任せとけ! それじゃ、次の現場に向かわにゃならんからワシは行くからな! 次に会う時を楽しみにしとれよ!」
「うん、わかった! 次も楽しみにしてる!」
そう言ってじいちゃんとお互いの拳を合わせて別れの挨拶を交わした。
しかし、約束は果たされることなく、祖父を見送った翌日の昼に12歳という若さでナツメの物語は終わってしまった。
母親の泣き叫ぶ声が響く病室で息を引き取った_____ 。
……はずだったのだが、気がつくと辺り一面真っ白な部屋の床に横たわっていた。
「死ぬとは思ってたけどこんなに早いとはなぁ、ワ〇ピースとかノゲ〇ラは最後まで読みたかったんだけどな。
ってかそんな事よりじいちゃんとの約束だよ!
じいちゃんこのままじゃ約束果たせなくて不死になっちゃうよ!」
「……目を覚ましたかしら?」
「うわぁ!!!」
突然聞こえた声に驚いたが、声の方へ振り向くと女性がしゃがみこんでいた。
腰まで伸びた淡い金髪。アメジストのような濃い紫色の瞳。そして何より、綺麗な顔に身体のラインが際立つ真っ白なドレスのような服がとても映える。
「えぇと…は、はじめまして?」
「はい、はじめまして。礼儀正しい子はお姉さんだぁい好きですよ!」
そう言って目の前の自称お姉さんは柔らかい微笑みを僕に向けていた。
「僕は死んじゃったって事でいいんですかね?」
「はい… 残念ながらナツメ君は病状が悪化して死んでしまいました…… でもでも!! あなたの現世での行動を見ていてピンと来たのです! あなたなら神域の図書館の職員になれると思うんです!!」
目の前の女性は僕の手を両手で握り、かなり興奮気味に捲し立てる。というか近い! 顔が近い、恥ずかしい!
「えぇと…色々聞きたいんですけど、まずあなたは誰ですか?あと、ここはどこなんですか? それと、職員ってなんなんですか?」
状況が整理出来ていない僕は、とりあえず思いつく質問を目の前の女性に投げかけた。
「わたしはオラシア、ここは神界と下界の狭間、そして職員とはまぁそのままの意味ですね」
僕が投げかけた質問を1度に答えてくれたけど正直よく分からない。
「ごめんなさい、1つずつ教えて頂けるとありがたいです…」
「ふふっ、そうなりますよね? では、まずは自己紹介をさせて頂きますね。改めまして、わたしの名前はオラシア。あなた方が言う所の神様みたいな者ですかね? その中でもわたしは、一応主神という立場なのですよ!」
「凄いでしょ!」とでも言いたげに紫紺の瞳が爛々と輝いている。ただ、神様であることはなんとなく予想していたので正直あまり驚きはない。
「むぅ、反応が薄いですね。次はこの場所の事ですね。ここは下界と神界の狭間でして、ここであなたは1つの選択をしてもらう事になります」
どうやら僕は何か選択ををさせられるらしい。 でも、この状況下で選択と言ったらもう アレ しかないだろう。
「異世界に転生できるならそうしたいです!!」
「えぇと、期待に応えられなくて申し訳ないのですが、
異世界に転生させることは私の権限では出来ないのです。ごめんなさいね?」
少なくとも憧れの異世界に転生できない事だけは分かってしまいとても悲しい気持ちになっているとオラシアさんが話しを続けた。
「ナツメ君には2つの選択肢があります。1つ目は、記憶を消してもう一度地球で生まれ変わって新たな人生を送る道です。あなた方が言う輪廻転生という物ですかね? そして肝心の2つ目は私のオススメなのですが、天界の住人になって図書館で働いてもらいたいのですよ!」
まだよく理解はしていないが、この2つの選択肢なら僕に迷う余地など無い。
どちらを選んだ方が楽しいのかなんて明白である。
「図書館でお願いします!!!」
こうして僕は天界にある図書館で働く選択を取った。
ここまでお読み頂き感謝感激雨あられです!
まだまだ拙い部分はありますが、楽しんで頂けたでしょうか?
もしお時間があれば評価と感想などをいただけると私の励みになりますのでよろしくお願いします。
今後ともどうかよろしくお願いします。