表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちきしょう  作者: えcs
1/1

プロローグ:いつもの風景

「やる気ないなら帰ってもいいぞぉ〜!」

ちっ、こんなこと言われて帰る奴がいるかってんだ。


昼休み終了後20分経過。ただ今5時間目、日本史の授業。季節は春。そして俺は窓際。この、時、場所、状況で寝ない奴はいるんだろうか。いるかもしれない、物凄く近くに。


「・・・・・・はぁ」

「なんだい?」

俺はため息を吐きながら、隣の真面目ちゃんから目を離す。

メガネ。そう、クラスに一人はいるメガネ。別にメガネを馬鹿にしていない。しかし、こうもメガネが似合う奴がいるなんて。

身長は俺より高く、体の線も細い。貧弱ともいう。狐目というか、なんというか、鋭い目つき。漫画に出てきそうな委員長キャラ。なんとリアル(現実世界)でも委員長。

「きめーきめー」

「私語は謹んで、授業受けろ」

おまけにこの上から目線。一回ノシてやろうか。いや、やめとこう。停学明けて2週間も経ってないし。

「あーあ、なんか楽しいことねぇかなぁー」

「邪魔するなら出て行け!」



ちきしょう。






「霞さん、今日はどうします?」

あぁ、これが可愛い女の子からの会話なら俺はキャッチするだろう。だが、実際にこの言葉を放っている奴は、目の下に切り傷痕がある、金髪小僧。俺の一個下だ。

ピアスをしていて、髪は短髪、金髪。見れば一発「不良」。そう俺はその不良達のドン、つまりTOP。

「なぁ、大河。俺と武藤の間にある差ってなんだ?」

「武藤?あぁ、あのイケメン野郎っすね!あんなの殺すっきゃねぇっしょ」

「お前、俺の質問聞いてる?」

「え?なんでしたっけ?」

「・・・もういい・・・」

馬鹿ってどこまで行っても馬鹿。まぁ俺も他人のことイエナイ。「目くそ鼻くそを笑う」っていうよね。それ俺のこと。

おっと、イケメンの話をしていると、張本人が来たよ。

「よっ、イケメン」

「黙れよ、不良」

俺の友好的な会話を見事にスルー。もうちょっと言葉のキャッチボールしない?

「てめぇ!霞さんに何タレてんだ、ブッ殺すぞ!」

案の定、大河が吼えた。これで俺の高校生活青春偏差値が下がったよ。キナ臭い高校生活が段々確立されていくよ。あぁ・・・・。

「吼えるなよ、下っ端Aが」

武藤が大河に言い返す。もちろん顔も見ずに。

武藤はサッカー部で、1年ながらレギュラーを任されている。ポジションは・・・どこだっけ。

「今日は玉蹴らなくていいのか?」

俺は聞いてみる。正直あんまりサッカーは知らない。けど、最低でも普通の友人くらいはもう少し増やしたい。しかもイケメン。俺の周りは堅気には見えない奴等ばかり。

「玉じゃねぇよ、ボールだ。あぁ、今日は筋トレだ。お前こそ何やってんだ?停学明けたばっかだろ」

「だから、てめぇはよぉ!」

大河がついに武藤に殴りかかった。俺は上半身を大河の進行方向に入れ込んで止める。

「やめろ、大河。今日はもういい。皆に『白菊の実』に集合かけろ」

「・・・・うっす」

まだブツブツ言いながら大河はカバンと小さな体を揺らしながら、校門を出て行く。

「不良の長も大変だな」

無表情で喋る武藤は校門を出て、道を曲がっていく大河を目で追いかけながら俺に言う。

「まぁ、俺だってなりたくてなったんじゃねぇ。普通の生活ってのを今でも取り戻したいと思ってるさ。」

俺はため息を吐きながら答える。そう、なりたくてなったんじゃない。本当なら、普通に勉強して、部活して、恋愛もそこそこして、卒業する。その後の事は後で考える。

でも、もう戻らない。戻れない。このポジションからは引き返せない。巻き込んだ責任、集めた責任が俺にはある。今更逃げれない。

「ふーん、やっぱ入学当初のアレか。あんなに派手にやらかしたら嫌でもそんな状態になるな」

「イケメンでも言っていい事、悪い事があるんだぜ?」

「おっと、怒れる獅子が目覚める前に俺はミーティングに行くよ」

おっと、無意識にイラついてたみたいだ。落ち着け、俺。停学明けたばっかだ。これ大事よ。

停学明けてすぐ、また問題起こしたら面倒になるからな。あぁヤダヤダ。

イケメンこと、武藤君が振り返った。一体なんだ?

「あぁ、言い忘れてた。木下と奥川が付き合ったぞ。今日の昼休みにな。ご定番の『3番目の桜の木』の下でだ。まぁ頑張れ、不良」

奥川さん。クラスで一番可愛い女の子。髪はセミロング、目はクリクリ。色白。おまけに性格は天然。

木下君。誰それ。

「なにーーーー!?」




そうさ、世の中面白くない。

だから言ってやる。






ちきしょう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ