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プチ小説「納涼探偵P」  作者: まぜたん
2/7

「迷宮の街」

 ―――――今、とある男の張り込み中である。


 張り込み。とは言っても探偵の張り込みは、刑事ドラマのそれとはちょっと違う。基本的な仕事といえば、隠しカメラや超望遠レンズでの撮影などである。

 先輩探偵がカメラの設置とモニターのチェックをし、僕の仕事は、先輩探偵の欲するものを瞬時に買い付ける。俗に言うパシリであった。


 そうして今、明滅する街灯のしたでコンビニ袋を手に持ち、立ち尽くしていた。

 「・・・道に迷った。」


 ―――――完全に袋小路である。暗く、寝静まった街には、目印が極端に少ない。


 「えーと、小さな階段、街路樹、壁のポスター、バス停、・・・で、行き止まり。」

  

 今日の昼間、先輩女性探偵に言われた事が頭をよぎった。

 「よっPくん。何か、憑いてるわよ。心霊スポットとか行ったでしょう。」

 

 ―――――ギョッとした。つい最近、廃屋で怖い目にあったばかりである。

 

 「(あい)先輩って、そういうの見えるんですか?」

 「まぁね・・・。でも、悪い霊ではなさそうね。美人さんだし。」

 「お祓いとかは出来ないんですか?」

 「うん。無理。」


 その時は平気なふりをしていたが、内心、穏やかではなかった。

 悪い霊ではない?作業員にケガをさせた霊じゃないのか?


 明滅する街灯の下。僕は、背後に何かを感じ、硬直した。

 「いない、いない、なんにもいない。」

 だが、それは、小さな声で話しかけてきた。

 「あの・・・。」

 「いない、いない。」

 「あの、聞いて下さい・・・。」

 「なんみょうほうれんげーきょう・・・。」

 

 ―――――僕は臆病ものである。

 両手で耳をふさぎ、目も閉じていた。しかし、彼女の声はしっかりと聞こえるのである。

 

 「聞こえない、聞けば僕も大けがをする。」

 「誤解です。彼は自分で落ちたんです。私に、・・・良からぬ事をしようとして、地下に引っ張り、すり抜けて落ちました。」

 「そ、そんな人には見えなかったけど・・・。」

 「そんな人でした。」

 おかしな事だが、その声は真っ直ぐで信憑性があった。そして、優しく心地の良い声であった。

 「私の依頼受けて下さい。その代り何でもお手伝いします。」

 「依頼・・・?それに、幽霊に手伝える事なんて・・・ない。」

 「今、道に迷ってますよね。・・・ご案内します。」


 ―――――先輩の吸うタバコの煙が見えて、ホッと胸をなでおろした。

 「すみません。遅くなりました。」

 「おお、お疲れ、こっちも今終わったとこだよ。」


 幽霊の道案内は的確だった。そして、いつの間にか幽霊への恐怖も薄らいでいた。

 ただし、この幽霊に限ってのはなしである。

 

               「迷宮の街」終。

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