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第一話-⑤ 王子と王女

また少し時間が遡りますが、イギリスからの姉妹との対比、というか落語的な天丼ネタの演出したくて、時間を前後させてます。

気になるようでも、気にしないで下さい。

 またも時間的に話は前後するが、少女達が集結しつつある時から二日前………。



 ここは千葉県成○市にある成田国際空港。


旧称、新東京国際空港。通称、成田空港と呼ばれ、21世紀初頭に今の名称に変更された海外の玄関口となる空港の一つである。


 その中のロビーに今、ゾロゾロと出てきた集団が居た。

 その数、目測で十数名。

服装はまちまちだ。

ターバンを巻いている者いない者、ルンギを履いている者いない者、クルタを着ている者いない者、中には英国風スーツを着こなしている者もいる。

 そんな集団が、先頭を歩く一目で上質な生地を使っていると分かる、だが派手さも嫌味も感じさせないシャルワニを(まと)った老齢の紳士然とした男がロビーの中ほどで立ち止まる。


「……王子、ここが日本の玄関口になります」


後ろを振り返り声を発すると、少し後ろを歩いていたクルタパジャマを着た少年が軽く手を挙げて応える。


「そうか………(じい)、ついに来たのだな?」


「御意」


「……そうか…………ついに来た(しみじみ)………日本よ!(わたし)(かえ)って来た!!」


王子と呼ばれた少年は、感無量と言った風情で軽く肘を曲げて目を閉じて、少し大きめな声で声を上げる。

どこかの公国の武人みたいである。


 やがてゆっくり目を開けた少年はおもむろに軽く握った左の手を口元に、グッと握った右の手を胸の辺りに持ってきて、何故か突然、歌い始めた。


「♪~は~~~~~るばる 来たぜ、は~こD「お兄様、危ない!!」(ゲシッ!)ぼるあぁ!?」


 歌い始めた少年の側頭部を、助走をつけて駆けて来たチュニックにパンジャビドレスの少女が、伝説のプロレスラーT.Kawada張りのジャンピングハイキックをかます。

しかも、ジャンプした時からキリモミ回転を加えて威力を増したやつだ。

 蹴られた少年は勢いで数センチ床から浮遊しつつ、スーパー(S)パワード(P)トレーサー(T)のように頭部辺りを中心として身体全体が回る感じで回転し、丁度足が天井の方向に向いた時に頭部から着地する。


 一方少女の方は、キリモミ回転しながらスチャッと膝を痛めるような着地を綺麗にキメて、周りの大人達から賞賛の拍手を受けていた。


『流石、姫様』

『相変わらず、綺麗なフォームで技を繰り出される』

『ますます洗練されてきてますな』


 拍手をする周りの者達は、口々にそう言って少女を讃える。


「フゥ~~、危なかったですわねぇ、お兄様!日本じゃ大人の事情か何かで、歌を唄ったら何処からか謎の組織のメンバーが絡んで来て、著作権料とか色々名目を唱えてお金をふんだくられるところでしたわよ!

良かったですわねお兄様、マルっとワンフレーズ唄われる前で…………」


「ちっとも良くないよ!

そういう謎の組織というのは、都市伝説にしか出てこないシロモンだぞ!」


「あれ?そうでしたっけ?」「そうだよ!」


かぶせ気味に抗議する少年の言葉を、少女はしれっと受け流す。


「……まぁ、その辺の事はどうでもよろしいですわ。イギリスの双子姉妹が詳しいはずですから、覚えていたら会った時にでも聞いてみましょう」


「お、お前なぁ~…………」


「……ではお兄様、床面フェチを(こじ)らせるのは構いませんが、せめて新宿の中村様のお店の表敬訪問とかパール(作者注:厳密にはベンガル語読みの『パル』発音だが、日本に馴染みのあるパールで表記)さんの九段下の方の顕彰碑(けんしょうひ)の慰霊などを終わらせてからにして下さいね」


「誰もそんな性癖、拗らせてないよ!お前が蹴っ倒したからだろ!!」


「あら、そうですの?(しれっ)まぁ良いですわ。

いつまでもここで立ち止まって周りの(かた)にご迷惑をおかけするのも何でしょうから、早々に移動しましょう」


「そうですな。お嬢様の言うとおりですな」


「爺までそんな事言うのか!?」


「仮にこの場で兄妹喧嘩されましても、話が進まず周りの方が迷惑すると思われましたので………」


「ぐぬぬ~…………」


「そのようなリアクションは、昔の中国の演義物語(作者注:横○光輝先生著 三○志 個人的に名作の一つと思います)を日本人が描いたマンガ以外で、初めて見ましたな」


「それより、今後の我等のアジトとなる場所は決まったの?お前たちに任せてギリギリまで待ったが、明後日にはかの者達も合流する予定なのだぞ?」


「その辺りはご心配なく。

我らのアジトとなる場所の土地は既に知人を通して購入済みで、後は、只今こちらに向かっている移動基地が到着するのを待つのみです」


「ならば良い。此度(こたび)の事は、我らインディアン(作者注:ここでは、広義的な意味でのインド人、またはインド地域に在住している人を指します)のみならず、友邦のニッポン、ひいては西欧、アメリカ、ロシア、アラブ、支那、ポリネシア………全ての人に影響が出かねない事案ゆえに、()()()は許されぬからのぅ」


「おぉ!姫……ご立派になられて……………不肖セバス、歓喜のあまり目から水が(こぼ)れそうな勢いです」


「手に目薬を持ってなければ、少しは真実味が出るのだがのぅ。

まぁ、それはそれとして、早く新宿へ行こうではないか。

行くぞ、セバスちゃんと皆の者!」


 セバスに姫と呼ばれた十代半ばくらいの少女、マハリタ・ナンダマツヤの声がけで、集団はぼちぼち動き出す。


そう、彼らは今回、ある使命を帯びてインドより来日した、世界的な連合組織の傘下組織の者達だった。


そしてその組織のインド支部の構成員を束ねる者の中の二人が、誇り高き血統の後継者たるこの兄妹(きょうだい)である。


兄の方はマハリク・ナンダマツヤ、妹の方はマハリタ・ナンダマツヤ。

何気にヤンバラヤンヤンヤンな名前だが、昔王家になったり王朝を興したりした血統の末裔(まつえい)と云われる出身の兄妹である。


そんな彼らが、はるばる日本にやってきた理由……。


世界的な連合組織の掲げる思想、『正義』を守るためだった。

『正義』が何の正義かは、そのうち明らかになっていくはずである。

あともうちょっと…………。

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