60 クマと首飾り
「そうであったか。
今の話では、アンナにこの村に入る許しをもらったということだが、なにかその証があるか?」
観戦モードだからぼーっとしてたら急に話が振られちゃったよ。
え、証?
たしか、イベントアイテムもらったよね。
あれ? ないぞ?
あのアイテムってジャックに渡さなかったっけ?
あ、持ってる持ってる。
イベントアイテムだから普通のカバンにはいらないのね。
なくしちゃったかと思って焦っちゃったよ。
アンナの首飾りを取り出して、エルフの女性に渡した。
「なんと、これは首飾りではないか。
アンナがもっとも大切にしているアクセサリーだ。
たしか祖母の形見と言っていたものだ。
普通、証なら別のものを渡すはずなのに……
もしや、クマよ。
アンナを殺して食べてしまって、この首飾りを奪ってきたのではなかろうな」
食べないよ!
そういえば、アンナも会ったときに、「きゃー、クマよ。食べないで!」とか叫んでたよね。
エルフから見ると、クマってそれほど血に飢えた猛獣に見えるの?
うーん、よく考えてみると、森にいるとクマってそういう存在なのかもしれないね。
もしかして、クマってエルフの天敵?
「ふむ。
殺したり食べたりしていないのだな。
ならば、クマよ。
お主はアンナからどのようにして、この首飾りをアンナから奪って来たのだ?」
もう、奪ってきたってところは変わってないのね。
わたしは、アンナとのいきさつをエルフの女性に話した。
「そうか、そのようなことがあったのだな。
だが、食べ物1つでアンナが首飾りを渡したというのは、どうも信用できない。
その『おはぎ』という食べ物を用意してみるがいい」
え、またおはぎを作るの?
んと、さっき作った餡はまだ残ってるし、米もあるから問題なく作れるかな?
「お待ち下さい」
なんか後ろからエルフの男の人が口を出してきたよ。
話が上手くいきそうだったのに邪魔しないでほしいな。
このまま、おはぎを作って差し出せば、シナリオが進みそうな流れなんだからさ。
「その『おはぎ』という食べ物にはわたしも興味があります。
またいきなりこのようなクマの作った食べ物を族長様に食べさせるわけにはいきません」
失礼なことを言うね。クマは毒とか入れないよ!
毒とか使い方もわからないし、持ってないし……
そしてどうでもいいけど、このエルフの女性は族長なのね。
「それならば、その『おはぎ』を全員分用意させよう。
そのクマを連れた男に最初に食べさせて、問題ないようなら順に皆で食べることにしよう」
え、そんなに大量に作るの?
ちょっと材料が足りるか心配だよ?