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ロック・クラシック

「へいゆー!俺やってみせるぜい」


「はあ」


幼なじみは夢見る夢男くんだ。

ま、夢見るのは別にいいし、問題無いしね。


ただ、問題は、私を巻き込もうとしていることだ。


ロックバンドに、私を誘っている。


確かに、私はピアノが弾ける。

キーボードくらいはジャカジャカ鳴らせる自信はある。


だけど、私はロックはやらない。クラシックの方がいい。


「あー、ねえ私やりたーい!入れてえ」

「いや、俺は天才探してるから」

「えー、なんでなんで? 高田くんて、上手いの、ギター」

「いや、俺ができないから」

「なにそれー」

「いや、そこそこ上手いよ?」

「うっそーお」


可愛い女の子はいくらでも集まるのに、なんで私?


「え……、花野さんて、上手いの、ベース?」

「あ、花野はキーボード」

「まーじー?じゃ、私ベース!」

「あたし、ドラムやる! これでも中学で吹部でパーカッションやってたしー」


「いーねえ、楽しくて。でも私興味ないから、キーボードやんないから誰かやれば?」


「え、花野?」


『ピアニストになりたい』

いつか見ていた夢。私は天才というものを間近に見て、それを諦めた。

だから努力もしないのに、へらへら夢だけ語る奴、大嫌いだ。


なんで、諦めた私は苦しまなくてはいけないの。

なんで、苦しまないで、あんたは夢を語る?


「花野。俺は」

「興味ないの。高田がいつか、もし、それが叶った時に私は、絶対に、あんたのことを嫌いになる。だって、私は……」


音楽っていうのは、楽しむものだ。苦しめるものとして神様はこの世に置いて行かなかった。だから、苦しむ前に諦めた私は卑怯だし、苦しまずに夢を語るあんたも卑怯だ。


「んじゃ、苦しめば?」

「はあ?」

「苦しんだら、なれるもんなのか、音楽家ってのは」

「……」

「苦しかったら音鳴らす。俺は楽しむためだけにロックやってんだ。クラシックやりたければ、ロックと一緒に編曲しちまえば。なかなか、面白いんじゃね?」

「え?」


「ロック・クラシック」


「私達は、新しいことことをやるってこと? ロック・クラシック……」

「そうそう! 新しいことやんのは、辛いかもだけど、苦しくはないだろ?」

「苦しいわけないじゃん、敵いないんだもん」

「いーのいーの。出来ないなら、やれるように工夫するだけだから!」

「あは、歪んでる」

「正論言ってて出来ることじゃねんだよ」

「正論だね」

「あれ、俺正論言った?」

うん。言った。


「いーねえ、楽しくて」


「あれ、断っちゃう?」

「んーん、様子見。今度、学園祭あるから、そこまで取り敢えずやる。結果出たら続ける」

「……結果?」

「音源、録って、レコード会社にかたっぱしから送る」

「花野って考えることえげつないなあ」

「正論言ってて出来ることじゃねんだよ、ってあんたが言ったんじゃん?」

「いやそーだけど。つーか、練習……来月じゃん」

「完成させとくから。では、よろしく」

「怖っ! 怖すぎ! スパルタ⁈」

「うん」


苦しかったら音鳴らす。


心に響いた、幼なじみの言葉。

私、逃げてたんだ。

音楽から。


だから、もう逃げない。やり遂げる。

目標、持って。


ーfinー


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