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好色王と呼ばれた男  作者: 空即是色
第1章 天界編
8/30

8話 天界最高会議(1)

「でも確か女神大戦は2度行われたんですよね」


「そうじゃ、しばらくの間はゼピュロスを確保したアテナ派の女神達は天界でおとなしくしておった。

だが所詮、つかの間の平和など次の戦争への準備期間のようなものじゃ。

辺境の星系で体勢を整えたガイア派はゼピュロスを奪い返すべく軍勢を進めてきた。

それに対しアテナは先の戦争で寝返ってきた女神や、ゼピュロスに助けられたり懐柔された女神達とその眷族だけを連れて戦場で対峙したのじゃ。

そしてその第2次女神大戦で生き残ったのはアテナとアテナの眷属、そしてガイアとヘカテの眷属だけじゃった。

そしてなんとアテナとガイアは仲良く天界に帰ってきた。

結局、わしら15柱に敵対した原初の神々は全員が殺され消滅した」


「えっ、と言うことは今の」


「そうじゃ、アテナとガイアは女神大戦で最初からの仲間である女神以外の女神達をその眷属ごと排除したのじゃ。

おそらく二人で相談してやったのじゃろう。それも全てゼピュロスが悪いのじゃ」


「なんでだよ」


「まあ、それで戦争は終了した。じゃがのう、わしらはこの一連の事件で思い知ったのじゃ。

いつ自分が殺されるかわからんとな。それにこれ以上原初の神を減らさないためにはどうしたらいいのか考えた。

それで”決めた”のじゃ」


「決めた?」


「そう、原初の神同士が戦ってもお互いが相手に少ししかダメージを与えられないようにしようということを決めたのじゃ。

わしら原初の神が全員で決めたことは、全員で破棄を決めないことには破れない。そのように呪縛がかかる。

だからいくら殴り合っても死ぬことはないし、怪我もしないのじゃ。

先ほどゼピュロスが申した通り本来の戦闘力の5万分の1程度しか力を出せん」


「よく原初の神様たち全員の意思が揃いましたね」


「ああ、わしら男神は仲間意識が強い、女神共は仲が悪い者もいるがそれはゼピュロスのせいじゃ。

だが女神共もゼピュロスが殺されたら自暴自棄になって自分が何をするかわからん。

だからゼピュロスを守るために、渋々ながらもこの約束事に賛成したのじゃ」


「なるほど」


「今の天界にはわしら原初の神とわしらの眷属である神しかおらんから、わしら原初の神は攻撃を受けることも無いのじゃ」


「そうゆうこった。俺たちはこの天界にいる限り死ぬこたあねえんだ。

だから俺は人間に転生して限りある人生を大事に生きてみたかったんだ」


ゼピュロスはすこし寂しそうだ。

マアトはどうしても天帝に聞きたいことがあった。


「天帝様、これから浩介さん、いやゼピュロス様をどうされるのでしょうか。

もし転生されるのでしたら、私も休暇をいただき一緒について行きたいのですが」


それを聞きフェイトもアリアンロッドも叫ぶ。


「私も浩介さんについて行きます」「私もです」


ネメシスとルサリィは黙っていた。

何か考えでもあるのか思案中である。


「いやそれは……無理じゃとおもうぞ。

とにかくパレスで会議を行おうと思う。

そこでゼピュロスの事を決めるしかないじゃろう。

ところでゼピュロス、ムーサがいることは先ほど聞いたがイシスとセクメトはどうなのじゃ。

とにかく十二神将を助け出さねばならん」


「ああ、そ、そうだな。マアト、俺の後追い自殺した女の子の中に白崎美緒しらさきみお神流川伊緒かんながわいおという女の子はいなかったか。おそらくいるとおもうんだが」


「は、はい、その二人ならいます」


「そうか、その二人がイシスとセクメトだ。じゃあ、長谷 奈津美と2人をここに呼んでくれ」


「あの…なんでわかったんですか。ゼピュロス様」


「ああ、あの三人は俺の眷属なんだ。そりゃ分かるさ」


「わかりました。じゃあ、ここに呼びます」


マアトが何か唱えると長谷 奈津美、白崎 美緒、神流川 伊緒の3人が現れた。

3人はびっくりしたように周りを見渡していたが、原初の神の力を取り戻したゼピュロスと天帝アイテールを見て思い出したようだ。

そしてゼピュロスに駆け寄り抱き着いてきた。


「「「ゼピュロス様ぁー」」」


「うわーん、やっと会えた、長かったんです」

「ああん、ゼピュロス様、よかったぁ、よかったぁ」

「ゼピュロス様ぁ、もう私を置いてどこにも行かないでください」


3人は感極まったようで号泣している。

ゼピュロスは優しい笑顔で3人を抱きしめた。

ゼピュロスは3人が泣き止むのを待って話しかけた。


「すまなかったな、これからはずっとお前たちと一緒にいよう。お前たちは俺のたった三人の眷属だからな」


「「「ゼピュロス様ぁー」」」


3柱の女神はその言葉を聞いてまたも泣き出してしまう。


「おいおい、もう泣き止めって。それでミューズ、十二神将のことなんだが、あそこまでしなくても良かったんじゃないか」


「ぐすっ、私たちもゼピュロス様の願いは知っていましたからすぐに追いかけるつもりでいたんです。

でもあの者たちはゼピュロス様のことを穢したんです」


「そうです、女たらしのヒモだとか、ヤリチンだとか」


それを聞いたマアトやフェイト達も十二神将に対して激しい怒りを感じてしまうが、ゼピュロスは怒らなかった。

じつは、ゼピュロスは天界を去る際、十二神将に協力してもらっていたのだ。


当時、ゼピュロスは人間に憧れていた。

限られた人生の中で幸せを求めて頑張って生きている姿に感銘を受けていたのだ。

伴侶を得て、二人で同じ人生を生き、なによりも老いて死ぬことができる。

そして転生してまた新たな人生を生きていく。

こんな素晴らしいことはない。

それに比べ、いまの俺の神生はどうだ。

永遠に死ぬことは無く自由も無い。

何万年も同じことの繰り返しだ。

本来、風の神であるゼピュロスはなにより自由に生きたかった。

だが原初の神であるゼピュロスは簡単には天界を去ることなどできないし女神たちが許さないだろう。

だから天界を騒乱させたとして罪に問われるよう十二神将に頼み込んだのだ。


≪天界を出て人間として転生したい≫


そのゼピュロスの願いを十二神将は理解してくれた。

ゼピュロスを追放すれば女神たちの怒りはすさまじいだろうし、間違いなく報復される。

それを覚悟のうえで十二神将はゼピュロスの願いを叶えてくれたのだ。

ゼピュロスは彼らには恩こそあれ、恨むことなどなにもない。

すぐにでも助けてやりたい。


「なあ、ミューズ、すぐに十二神将を助けたい。開放してやってくれ」


「は、はい、ゼピュロス様、ですがどうすれば……」


ミューズたち三人は困惑しているようだ。


「えっ、どういうことだ。十二神将はお前たちが崑崙山の火炎洞に首を晒したんじゃないのか」


「いいえ、私たちは十二神将の首をはねた後、すぐにゼピュロス様を追いかけて天界を出奔しましたので、その後のことは分かりません」


「おい、アイテール、どういうことだ」


これには天帝アイテールも驚いたようで絶句している。


「…………!!」


「な、なあ、ミューズ、その時何かなかったのか」


「はい、私たちが十二神将の首をはね天界を出る際、そこに原初の女神様達が現れて

『お前たち、よくやったわ。本当は私たちが殺ろうと思っていたんだけど、私たちが殺ったらこの十二神将は存在自体が消滅してしまうのよ。

そんなに楽に死なれたら私達の気が済まないのよね。後は私たちに任せて、お前たちはゼピュロスを追いなさい』

って言ってくれたんです」


「な、な、なんじゃと!そ、そんなことが……」


「お、おい、ミューズ、その原初の女神達は誰なんだ」


「はい、確かセレネ様、プロセルピア様、グライアイ様、ヴァルキュアレ様でした」


「……なんということじゃ」


「すぐに会議を開こう。女神たちは俺が説得する」


「いいのかゼピュロス、お前もしばらく天界に留まることになるぞ」


「ああ、仕方ねえ。十二神将を助けねえとな、俺にはあいつらに恩もあるんだ」


こうして原初の神々と今回の関係者による会議が天上界のパレスで行われることになった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





天界は最上階に天上界があり、その下層は4層になっている。

天上界には15柱の原初の神々の居城があり、中心に天帝の居城であるパレスがある。

第1層にはそれぞれ原初の神々の側近である上級神が住み、第2層には中級神、第3層には下級神、第4層には天使達が住んでいる。

ちなみにマアトやフェイトらが住んでいたのは第3層であるが、彼女らはゼピュロスによって中級神まで上がったのでこれからは第2層に住むことになる。


さて会議は天帝の居城であるパレスで極秘のうちに開催されることになった。

出席者は原初の男神が天帝アイテール、ヒュペリーオーン、ゼウス、オーディーンそしてゼピュロスである。

原初の女神はアテナ、ガイア、ヘカテ、アフロディテ、アルテミス、エロス、セレネ、プロセルピア、グライアイ、ヴァルキュアレである。

それから参考人として、ミューズ(ムーサ)とイシスとセクメト、マアト、フェイト、ルサリィ、ネメシス、アリアンロッドの各女神である。


ヒュペリーオーンとゼウスはゼピュロスと会って怒りを露わにしていた。


「くおらっ!ゼピュロスっ、貴様どの面下げてここに戻った。貴様の顔など二度と見たくなかったわ」


「まったくじゃ、仕事もしないでもめ事ばかり起こしおって。わしらは貴様の尻拭いで散々苦労したのじゃ」


「みんな元気にしてたか。まあそんなに怒るな。俺がいなくても特に問題なかったろ」


「問題ないどころか、いないほうがいいくらいじゃ。この馬鹿者が」


ヒュペリーオーンとゼウスは怒ってはいるが、ゼピュロスが帰ってきたことは喜んでいた。

このゼピュロスという男はどこか憎めないのだ。

それにオーディーンはにこにこしていて少しも怒っていない。


「おいおい、ゼピュロス久しぶりだな。ずいぶん若返ったみたいだな。うらやましいぞ」


「ああ、この姿は最後に死んだときのままの姿なんだ。ちょっと気に入ってるんだ。

まあ、みんなはずいぶん老け込んだな。特にヒュペリーオーンとゼウスはじじいだぜ。

オーディーン、久しぶりにアフロディテのところで酒でもどうだ。」


「おおー、いいないいな、お前と一緒ならアフロディテも相手をしてくれるしな」


アフロディテに惚れているオーディーンは嬉しそうだ。

ちなみにゼウスとヒュペリーオーンはアルテミスに惚れている。

アフロディテもアルテミスもエロスも性格的に穏やかでやさしいのだ。

他の原初の女神たちはゼピュロスにだけはやさしい。

全員がゼピュロスに夢中でほかの男は、まったく見えていないのだ。

だが女神たちもよくしたものでゼピュロスが連れてきた男神もきちんと接待するし、眷属の中から美しい女神をあてがってくれる。

すべてゼピュロスのためであるが、その時は酒池肉林でオーディーンら男神にとってまさにこの世の楽園である。


原初の神々は眷属を作ることはできるが同性の眷属しか作れない。

だがゼピュロスの眷属はミューズとイシスとセクメトの3柱の女神だ、この3人はもとは天使だった。

生まれたばかりの天使で、まだ誰の眷属にもなっていないときゼピュロスが眷属にしたのだ。

そして何千年にも渡ってゼピュロス近くにいて抱かれ続けた彼女らは、天界でも有数の戦闘力を持つ上級女神になったのである。

これは他の神にはないゼピュロスだけが持つ能力のせいである。

だから彼女らのゼピュロスに対する忠誠心は【ゼピュロスのためなら全宇宙を敵に回すことくらいなんでもない】らしい。

ちなみになぜゼピュロスが眷属を作らないのかと言えば男神の眷属など持ちたくなかったからである。

アイテールも女神の眷属を何人かもっている。

これは女神達への連絡係として必要だったため、各女神から何名かずつ譲り受け自分の眷属としたのだ。

マアトなどもこれにあたる。パシリとして使っている。


そう言った訳でヒュペリーオーンもゼウスもオーディーンも女神の眷属は持っていない。

だからゼピュロスと一緒にアフロディテやアルテミス、エロスのもとに遊びに行ったとき夜伽まで努めてくれる女神をあてがわれて嬉しいのだ。

そういった意味で彼らはゼピュロスが帰ってきたことは彼らにとって喜ばしいことだった。


「おいゼピュロス、わしもアルテミスとところに連れていけ」


「俺も頼む」


ヒュペリーオーンとゼウスもあわてて頼み込んでいる。

そこにアテナとガイアを先頭に女神たちが会議室に入ってきた。




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