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好色王と呼ばれた男  作者: 空即是色
第1章 天界編
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1話 神にやり直しを要求する男

フェロモン

それは動物の体内でつくられ、体外に放出されて、同種の他の個体の行動や発育に影響を与える物質のことである。

この物語は特殊なフェロモンを放出する特異体質を持った男の数奇な運命を描いた物語である。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「天城君が悪いんだよーっ!彼女なんて作るからー」


「私も直ぐに後を追うからねっ」


「私もーっ!」


「私も直ぐにいくからっ」


「来世では夫婦めおとになろうね」


「なによっ、来世では私が天城君と……」


と言いながら地面に倒れこんだ俺の身体に次々とナイフやら包丁を刺していく女の子達を見ながら俺は思った。




理不尽だー!


酷すぎるっ!


やっと彼女が出来たのに…これからって時に…なんでだよ。


本当に神様なんているのかよぉ。


もし本当にいるのなら俺は・・・・・・





―――神よっ、もしいるなら聞けーっ、俺はやり直しを要求するぅぅぅぅぅーーーーっ―――





と、俺は激痛にうすれゆく意識の中で心の底から魂の叫びを上げた。



そして目の前が暗くなり俺は意識を落とした。



………………………………

…………………………………………

……………………………………………………



どのくらい時が過ぎたのだろうか。

ふと気が付くと俺は自宅マンションの近くにある見慣れたお堂の前に立っていた。


確か源覚寺げんかくじっていうお寺なんだけど、『こんにゃくえんま』って言ったほうが都内では有名だ。


その閻魔堂の前に立ってるんだけど、どうも様子がおかしい。

周りには何も無いんだ。閻魔堂だけしかない。

文京区のシビックセンターとか高層ビルが見えるはずなんだが何も無い。


それより俺はさっき女の子達にいきなり刺されて、あまりの激痛に気絶したはずだが、今は少しも痛くない。

って言うか刺されたはずだが身体は何とも無い様に思う。

夢だったのか?

だとしたら二度と見たくない程リアルで悲惨な夢だったな。

ものすごく痛かったし、半端無いほど血が出てたよ。

女の子達の手とか服とか俺の血で真っ赤だったしな。


だけど俺、こんな所で寝た覚えはない。


今日は朝から彼女と俺の部屋でいちゃいちゃしながらサバゲーの動画を見たり、えっちしたりして過ごしてたんだ。それで夜になって彼女を駅まで送った後、自宅マンションの前で女の子達に刺されたんだよな。

それも全部夢だったのだろうか。

とにかく帰ろう、風呂に入りたいし。


と、後ろを振り向いたら真っ黒な着物姿の女が立っていた。

ああ、そうか喪服を着てるんだと思っていたら、いきなり話しかけてきた。




『夢なんかじゃありませんよ、あなたは死んだのです』




なんだか耳から聞こえる声じゃなくて頭に直接入ってくる声って感じだ。

なんだか脳内で翻訳されているように感じる。


『そのとおり。君は神語も話せないでしょう。だから君の魂と直接話してるんだよ』


まあ、それほど聞き辛いということもない。

普通に話せるけど、慣れてない所為か頭に響く感じだ。


「でも死んだって言われても実際俺は生きてるし、ってあんた誰…」


なんでこの女は俺が考えてたことが分かるんだ。

それに和装の喪服を着てるけど、金髪だし目は青いし顔立ちは完全に外人だ。

胸の辺りまで伸ばした緩やかなウェーブの金髪は見事と言うしかないが、和服の喪服がまったく似合っていない。

まあ、美人だとは思うけど好みじゃないな、おばさんだし。


『なっ、おばさんって…あんたねえ、私を誰だと思ってんのよ。

だいたいこの服だってあんた達の風習に合わせて着てあげたのよ。

それに喪服姿の若い美人の未亡人って設定なのに、なによあんた、おばさんって。

いろっぽいおねえさんって思うのが普通でしょ。訂正しなさいよっ』


マジで俺の考えてることが分かるみたいだ。

いったいこのおば…おねえさんは何者なんだ。


『またおばさんって言いそうになったわね。まあいいわ、ちゃんとおねえさんと言い直したし。

そう、相手を見て素直に敬うことが大切よ。出来れば 綺麗な を付けたらもっとよかったわね。

それが長生きできるコツよ……って、もうあんたは死んでるけどね。

私の名はマアト、真理、調和、秩序の女神よ。敬いなさい、天城あまぎ 浩介こうすけ


なるほど流石に神を名乗るだけのことはありそうだ。

俺の名前も知ってるし、心が読めるって事は本当に神様なんだ。


『ふふん、そうよ、私は偉い女神様なのよ。ようやく認めたようね』


「じゃあ、マアト、なんで喪服姿の若い未亡人って設定なんだ」


『そ、それは…あんたが死んだから…あんたの世界では喪服を着るのが礼儀だと……』


「そうじゃなくて、若い未亡人って設定はどうなんだ」


『うっ、それは……その…そう、あんたは自分が死んだことを知ってショックを受けるわけだし、すこしはそのショックを和らげてあげようかなという女神としての慈悲の心よ』


……なんだかなぁ、今思い付いたような言い訳だけど。

まあ、それよりやっぱり夢じゃなかったんだ。

だいたいこの場所も閻魔堂しかないっておかしいし、周りは真っ白な空間だ。

やっぱり俺は死んだのか。


『そうよ、あんたは女の子達に刺されて死んだ。そしてここはあんたが暮らしていた世界の隣にある次元。

いわゆる天界と呼ばれる世界』


「なあマアト、おれは死んだんだろ。なんで今は生きてるんだ」


おかしいだろ、死んだのに生きてるって、どういうことだ。


『ああ、それはね、この天界にいると霊体のままだと魂が消耗してしまうのよ。

これからあんたには裁きを受けてもらうから何日か持つ身体を用意したのよ。

ああ、もちろんあんたの記憶から作った身体だから死んだ時と変わらないはずよ』


確かに違和感は無いが、今気付いたんだが俺は服を着ていない。

完全にマッパだ。

だけどいまさら恥ずかしがるのも癪だ。開き直ろう。


「それであの閻魔堂は」


『あんた達の常識だと死んだら、あの閻魔大王とか言うのに裁きを受けるんでしょ。

だからあんたの記憶から、わざわざ作って用意してあげたのよ』


これもなんだかなぁ、

確かにあの閻魔堂には何十回も参拝したよ。

駅から自宅マンションまでの帰り道にあったから、よく【彼女が出来ますように】ってお願いしてたさ。

その甲斐あって、ようやく彼女が出来たのに死んじまうなんてあんまりだよな。

閻魔様にお願いするような事じゃないとは思っていたけどさ。

だけど願いが叶ってすぐ死ぬとはやっぱり閻魔様だよ。俺が間違ってたんだろうな。


『うん、かわいそうにねぇ、喪服姿の美人で若い未亡人に癒されなさいな』


うーん、AVなんかでは喪服姿の美人で若い未亡人だと【げへへへ、奥さん、旦那を亡くして、夜な夜なその若い身体を持て余してるんじゃないの。ほれほれ、ここはどうかな。げへへ】

【あん、三河屋さんやめてください、ああ、あなた私を許して】とかがデフォなんだけど。


そう考えると不思議にマアトが妙にいろっぽく見えてきた。

あっ、やばい、マアトは俺の心が読めるんだっけ。

ここは誤魔化さないとまずい。


「なあ、マアト、なんだか俺だけ特別って感じがするんだが、死んだら皆こんな感じなわけ」


するとマアトは憤慨したように大きな声でまくしたてた。


『そんな訳無いでしょ!だいたいあんたが死ぬ間際にあんな事言うからこんな事になったんでしょうが。

もういい加減にしなさいよ』


えっ、なんだっけ……俺、死ぬ間際になんか言ったっけ。

覚えてねえ。


『あんたねえ、【俺はやり直しを要求するぅ】って言ったでしょ。

あんたの叫びは奇跡的に天界中に響き渡ったのよ。

こんなことは天界でも初めてだったみたい。

それで天帝様も大層驚いたみたいで、私に詳しく事情を調べろと命令されたのよ』


ああ、確かにそんなこと叫んだ記憶がある。

あの時は俺もテンパッてたからなあ。

それはそうと、憤慨して地団太を踏んでいたマアトが俺の身体を見てハッと言うように黙り込んだ。

そして急に顔を赤くしながら俺の体の一点を凝視している。

ああ、そうか。マアトをいろっぽいかもと思ったときから俺の体の一部分に血液が集まって来てたんだ。


「……」


『だ、だからね。私にはあんたのことを上司に報告する義務があるのよ。

あ、あんたの運命は私の報告次第って訳、わかった』


マアトは俺の下半身からまったく目を離さない


『こ、これから、と、と、取調べっていうか事情聴取をするんだからね』


「取調べって言ったってマアトは俺の記憶も読めるんだし、考えてることも分かるんだから意味無くね」


『そりゃそうだけど、あんたの口から説明することが大事なのよ』


「それにさ、俺は被害者だよ。大勢の女の子に刺されて殺されたんだ。

その刺されて死んだ被害者を取り調べるっておかしくね」


『あのね、あの星の生き物は殺さなければ生きていけないの。

動物だって植物だって相手を殺してそれを自分の糧にしてるのよ。

だから天界の法では殺すと言う行為は本能だから罪に問われないの。

あんただって肉や魚、野菜とか生き物を食べて生きてきたんでしょ』


「そりゃそうだけど、なんか釈然としないな」


『世の中は理不尽に出来てるものなのよ』


「そりゃそうかも知れないけど神様が言っていいのか。それって」


『いいのよ。それにしてもあんた、女神を前にして少しも動揺してないしタメ口叩いてるなんておかしいんじゃない。あんたは大物なのか馬鹿なのかわからないわね。あんたはそういう意味では特別よ』


「マアトこそ女神っぽくねえよ。軽い感じだ。その方が俺は助かるけどな」


『ふ、ふん、あんたに合わせてあげてるのよ。そ、そのくらい察しなさいよ』


そんなたわいも無い話をしている時も、マアトの目は俺の下半身から離れなかった。

マアトが俺の命運を握ってると言うなら、よしっ、ここはもっと仲良くしたほうがいいな。


「マアト、俺はあんたが好きだ」


『い、い、いきなり、真剣な顔して、な、な、なに言い出すのよ。

さっきは好みじゃないとかおばさんとか言ってたくせに、嘘をつくのは一番の罪なのよ』


ボンと音がするほど顔を真っ赤にしたマアトを見て俺はさらに攻め立てる。


「本当だ。俺のここを見れば分かるだろ。俺はあんたとしたい」


マアトは俺の顔と下半身を交互に見たあと、あわてて目を背けた。


『だ、だ、だめよ、だめだめ、私は未亡人なのよ。亡くなった夫に操を立ててるの』


喪服の袖で顔半分を隠しながらダメよダメよと首を横に振るマアト。

未だに未亡人設定は生きているようだ。

ここは合わせるか。


「いつまでも死んだ人を想っていても帰ってこない。それよりこれからはあんたが幸せを掴むべきだ。

死んだあんたの夫も草葉の陰でそう思っているはずだ」


そう言って俺はにっこりと笑顔を作ってマアトに近づき、そっと抱き寄せた。

弱弱しい抵抗をみせるマアトに俺は強引に唇を重ねた。


『あん、んんんん、ふう、ああん、だめよ、いけないわ。ああ、やめて』


少しも嫌がっているようには見えないが口では一応拒絶している。

何だこの三文芝居はとか思ってはいけない。

相手は心を読めるのだ。


「あんたが好きだ。あんたとしたい」


マアトを床に押し倒そうとした途端、いきなりマアトの後ろに豪華なダブルベッドが出現した。

そのまま勢いでベッドに押し倒したが、マアトが真っ赤な顔で言い訳してきた。


「こ、こ、このベッドは床に押し倒されたら背中が痛いから出したんだからね。そういう意味じゃないんだからね」


「もちろん、わかってるさ」


ここは大人の対応で行こう。


『あん、本当に駄目なんだから、私は女神なのよ。こんなことしちゃ駄目なんだから』


と弱弱しく俺を押し返すマアトだが


「俺は男でマアトは女なんだ。問題ないさ」


さらに唇を奪っていく。


『ああん、どうしても私としたいの』


と涙目で聞いてきた。

おれはにっこりと笑顔でとどめを刺した。


「ああ、あんたが好きだ。どうしてもあんたとしたい」


『ああ、だめよ、ダメなのに』


まったく抵抗しなくなったマアトに俺は言わなければならないことがあった。


「マアト、どうやったらこの帯が取れるんだ。脱がせられないよ」


マアトは真っ赤な顔のまま目をつぶっていたが、いきなり着物の帯が消えて無くなった。


『ああ、お願いやさしくして、私、初めてなの』


えー、処女の未亡人なの。

まあ絶対にいないとは言い切れないけど、やっぱり無理な設定だったよね。



※注意 この先、18歳未満の方にはお見せできないシーンが続きますので、音だけで事態を想像してください。



『アン、アンアン アアー、ダメー』


ギシギシギシ


『アンアン、アーン』


ギシギシ




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