第2説
翌日の予定を立て風呂でも入るかとガロンが立ち上がったその時、突如頭の中でコールという文字と音が鳴り響く。
「な、なんだ!?コ、コール?ってか、これどうやって取るんだ?」
携帯の通話ボタンを取るようなイメージをしてみると通話状態って文字に切り替わりちゃんと取れたことに安堵し、通話先の相手に話しかけようとガロンが声をかける。
「もしもし?」
『お!ちゃんと繋がったようじゃな。ワシじゃよワシ』
使い古されたボケでもしようかと一瞬考えたがそんなことよりも神様からのコールをしてきたということはそれなりの用事なのかとそっちに興味が出たためにウェイスに質問をすることにした。
「ウェイスさんどうしたんですか?何ですかこの機能!?っというか何か問題でも起こったんですか?」
『いや、そういう訳じゃなくての。お主に少しだけ言い忘れたことがあってコールしたんじゃよ。あと、このコールはこの屋敷内限定でワシを繋がるようにしたんじゃ』
神様と会話出来る屋敷って物凄いことなのに物のついでで発覚したのに驚愕しながら言い忘れたこととは何のことだろう?と頭に疑問符が思い浮かんでいたがウェイスの次の言葉でそんな疑問も吹き飛んでいった。
『うむ。まずはじゃな―』
◆◆◆◆◆◆
時はガロンが光に包まれて白い空間から消えた時に戻る―
『行ったようじゃの。何とも心の広い青年じゃったのぉ』
顎から十センチ程伸びている白髭を軽く撫でつつ光の中から消えたガロンを見守りながらウェイスは微笑んでいるのだった。
いきなりこんな空間に連れてこられ見知らぬ人物に異世界へ行かないかと言われて承諾出来る人間が何人いるだろうか。それを考えると確かにガロンは心が広いと言えるだろう。
『さて、では早速約束を守ることにするかの。ご両親から彼の記憶を除去だけではなく世界から消さんと辻褄が合わんようになるしそっちも調整しておくかの』
そうウェイスは口にしながら作業に取り掛かろうとした矢先に一人の人物がウェイスのすぐ傍現れた
「ウェイス様」
気配を感じた瞬間にウェイスは誰かの予想は出来ていたために呼んだ人物へ向き直ることをせずに声だけで反応する
『どうしたんじゃミュールよ』
ミュールと呼ばれた女性は膝を折り背中に生えている大きな翼を前方へと倒し傅く形を維持したまま言葉にする
「差し出がましいことだとは思いますが宜しかったのですか?彼に我々の目的を伝えなくて」
『構わんよ。目的と言うほどの大それたことでもないしの。彼があの世界で見たこと感じたことを受け入れてその上で決断した時に改めてワシから聞くことにでもするかの』
ウェイスはそう言いながらガロンが先ほどまで座っていた場所に目をやりながら彼がどんな結論を出すのかと想像しながら少し愉快そうに笑った。
ミュールは少し顔を挙げそんなウェイスを見ながら
「左様ですか。先ほどのご無礼お許しください」
そう言いながら頭を下げ罰を受け入れるかのように口を噤んだがウェイスは気にするなと一言ミュールへと声をかけた。
「ウェイス様の寛大なる処置に感謝致します。ですが、一つだけお聞きしたいことがあります。宜しいでしょうか?」
ウェイスはそこで初めてここに来たミュールを見るために向き直すことにする
『どうしたのだ?何か不明な点でもあったのかの?』
自分には何か問題があったような気がしなかったためにミュールの疑問とやらが全く想像つかなかった
「はい。彼のことに関してなのですが・・・どうしてウェイス様はあの方に魔法とスキルのすべてを譲渡したことをお伝えしなかったのでしょう?何かお考えがあってのことだとは存じておりますが気になってしまったためにどうかお答え戴ければとお『あっ・・・』」
少しミュールの質問と被るようにしてウェイスはしまったという感じを顔をしながら必死に言い訳を考えるのだが
『すっかり忘れとったわ!ほっほっほ』
ウェイスは誤魔化さずに清々しい感じに笑いながらガロンに連絡するかのぉと言いながらコールボタンを押している。
そんなウェイスをミュールは見ながらこれからのガロンに対して少しだけ同情の念を密かに向けた。
「では、私は執務に戻ります。何かあったらお呼び下さい――神王様」
◆◆◆◆◆◆
『実はの、お主にワシからのサプライズプレゼントとしてラグナロクワールドで使えておった魔法とスキルを全部譲渡しとるんじゃ』
「・・・・え?」
何かとんでもないことを口にしたような気がするのだが気のせいだろうか?
(全魔法とスキルを渡した?つまり未修得だったスキルも使えるようになっているってことか?)
半信半疑のままメニュー画面を念じてみると使い慣れたメニュー画面が姿を現してその中にある魔法の項目を開いてみるとガロンはそのまま固まった。
そこには見慣れた魔法タブがあるにはあるのだがその数が異常だった。本来なら闇属性と風属性と無属性だけのはずがそれ以外の属性もあり恐る恐るタブを一つ開いてみると習得済みとなっている。
他にも開いてみたところいくつかロックは掛かっているものの習得済みとなっていた。まさか聖属性まで一部習得出来ているとは思わず苦笑いを浮かべガロンは深く考えるのはやめておこうと心に決めウェイスに質問をすることにした。
「確認しました。ですがいくつかロックが掛かっているのがあるようですね」
『それはお主との相性で使えないものや称号や種族によっての条件でアンロックされる魔法じゃな。その辺りの魔法が使えないのは諦めてくれ』
「えぇ。それは仕方ないと思います。しかし、まさか全魔法渡されていたとは思いませんでしたよ」
『ほっほっほスマンのぉ。本来ならあの部屋で言うべきことじゃったのだが失念しておったんじゃ』
ウェイスは謝罪しつつもワシからのサプライズはお気に召したかなと聞かれガロンは
「確かにサプライズでした。でも自分には使用出来ない魔法だと思っていたものが使えるようになったので感謝してます」
そう答えつつ改めてこの世界で生きていくということに意識を向けこれから先、人や動物の生死に関わることもあるだろう。ならばと、その覚悟もしなければと強く決意を胸にする。
(これからは自分の腕が全ての世界で冒険者になると決めたんだ。決して迷わないようそして、後悔も恨みも受け入れて前に進もう)
これからの生活に楽しみと不安を覚えながらそう言えばとふとした疑問が浮かんで来たのでウェイスに質問をする。
「そう言えば、ウェイスさんに聞きたいことがあるのですが俺って寿命とかあるんですか?さっきは浮かれていて質問し忘れていたのですが・・・不死であることからたぶんないだろうとは思っているのですが」
『お主の予想している通りじゃな。死の概念がないからお主は死ぬことはないぞ。ただ、転生したいのであればワシに言えばよい。それくらい造作もないからのほっほっほ』
笑いながらウェイスはそう言うがガロンは目を見開きつつウェイスは実は物凄く偉い人物ではないかと思った。何せ不死者という人ではありえない者を転生させることが出来るのだ。相当の力を持っているのだろうと予測する。
「何から何までありがとうございます。ですが、転生のことに関しては俺はしないと思います」
なぜならば、俺は望んでこの世界に来たのだから。
「あと、俺って子供とか作れるんですか?」
『問題ないぞい。ただ人とは違うから出来にくいと言うだけじゃな。あと、お主の伴侶や眷属にした者も同様に不死者になるからお主の器量次第じゃなハーレム作るにしても全員愛でるんじゃぞ』
ハーレムの下りで少し苦笑するがガロンは、なるほど。と答えこの先使うことがあるのかどうかは分からないが相棒にも活躍してもらおうと密かに心に決めた。
軽く雑談をし翌日から冒険者として生きていこうと決めたことをウェイスにも教え、別れを告げたガロンは1階の奥に設置された大浴場へと足を運んだ。
翌日、快眠した俺は屋敷を出て空の散歩を楽しみながら街を目指している。
空を飛ぶという感覚に初めは慣れなかったもののしばらくするとやはり体が俺の体を最適にするようにし頭の中に浮遊する感覚が伝わってきて・・・今現在俺は空を飛びながらになったわけだ。
「しかしこう見るとほんと森と昨日居た草原以外何もないなぁ。ゲームでこんな場所なかったしちゃんと街につけるかな・・・」
空から見てみるが近くに人が通るような道がなかったために少しだけ不安になってしまった。が、それならそれで空を自由に飛んでいられるしいいか・・・なんてな。
と、気持ちを切り替えて空を飛んでると大体30分くらい飛んだ辺りだろうか、人が使っているだろう道が見え始めた。
それを確認し俺は少し手前の森へ降りて辺りに対して索敵魔法のサードアイとマジックサーチを使い辺りを警戒しながら森を出る。
街道を道なりに進んで行くとサードアイのサーチ範囲限界の辺りで動く何かが見えた。マジックサーチにも反応があるということはおそらく・・・人か動物、はたまた・・・
「魔物か・・・おいおい、しかもスライムかよ」
動く何かに近づいてみるとそこにはスライムが3体程がズズっと音を立てながらうろついていた。
スライム自体はレベルが低くHPもそれ程苦労はしない魔物ではあるがこいつらは数体でうろつきしかも体内に溶解する成分を持っており相手を腐食させる特性を持っている魔物である。なのでまず一気に凍結させ斬るかチャージスキルを使用した魔法で消滅させるかというのがセオリーだ。
ゲームだと腐食効果は装備の耐久度を落とす魔物のため初心者帯で金策が十分じゃなかった時は苦労させられたものだった。なんてことを思い出し少し懐かしんでいるとスライムもこちらに気がついたのか近寄ってくる。
スライムの通ったであろう跡を見ると地面の草が腐食しているのが分かる。現実だとこの腐食効果は恐らく生態系を脅かす程の脅威だろう。ならば一気に片を付けるべきだろう。
「さて、初の魔物退治と行こうかねっと!」
ゲーム時代と対処法は変わりないはずだが油断は禁物だ。初心者だった時の気持ちを思い出せ。
心でそう呟きながら眼前の敵が近づいてくる前に俺は
「フリーズ」
スライム3体を頭の中でロックし魔法を発動させる。すると見る見る内にスライムはその体を凍結させていきその場で氷像にでもなったかのように身動きが取れなくなった。
それを確認するや否や俺はメニュー画面の装備欄にある愛剣を取り出し疾駆する。一息する間もなくスライムの目前まで駆け一閃、そして体を返しまた一閃
恐らくこの場に人が居たのならばスライムが勝手に自らの体を裂いたように見えるだろう。それ程までにガロンの身体能力はあったのだ。それはガロン自身も自負しているし誇りである。
確実にオーバーキルではあるのだがこの世界の魔物がどれほどの強さかを確かめるために全力でぶつかる必要があったと判断したためにガロンは全力で切ったのである。
カチッと音を鳴らせ愛剣を鞘に納め、またメニュー画面を開き装備欄へと入れた。
「ふぅ、凍結させたあとだったから感触的に紙を切るくらいだったしスライムだったから良かったけどこれが斬るってことなのか。心では覚悟を決めたつもりだったんだけどな・・・」
手を見ると少し震えているのが分かる。決して武者震いなどではなく倒さなければ逆に俺がダメージを受けてしまっていたかも知れないという恐怖心だった。
レベルは最高上限であり自らは不死王の称号と特性を持つヴァンパイアだ。だが、それでも俺は元人間だ。そしてそれを忘れてはいけないと改めて強く思った。
途中で予想はしていたとは言えスライムとの戦いで戦闘経験を積めた俺はさらに道なりに進んで行くと太陽が丁度真上にくるくらいには大きな壁のあるものが見え初めていた。
徐々に近づいていくと壁は一段と高く見える。周囲も同じ高さの壁が覆っており外敵から内部を守るのに十分な役目を果たしている程である。
心の中で俺は現代に居た所だとまずはお目に掛かれなかった光景に驚嘆をあげていた。
「っとと、いけないいけない。まずはギルドに行って冒険者にならないとな」
そして門兵のところまで近づいて行くと門兵も気がついたのか少し呆けていた顔を引き締めている。
丁度昼時だしな。腹へったんだろうなぁ
さて、どんな出会いが待ってるだろうなっと
「どうも、こんにちは。ようこそいらっしゃいました。街へは何か御用ですか?」
(ん?なんかこの人一瞬ビックリしたような感じの顔をしたけど何か俺まずいことしたかな?)
「えぇ。実はここで冒険者登録をしようと思いましてね。何分こんな大きな街は初めてですから期待と不安で」
「それはそれは。最近は冒険者志願の方が多いのでギルドで少し時間を取られるかも知れませんから早めに行くことをお勧めしますよ」
冒険者志願が多いのか。それなら確かに早めに登録しないと今日一日はクエスト受けれるか怪しいなぁとガロンは少しでも早めにギルドに行くことに決めた。
「それではこの水晶に手を当てて貰ってよろしいですか?犯罪歴があるか確認させて頂きます」
そう言いながら門兵さんは俺の前に水晶台を持ってきた。
この世界に来たのは昨日だし歴も何もあったものじゃないな俺。などと思いながら水晶に手を当てても何も反応がないことから門兵さんも安心しありがとうございます。と言って水晶台を横に移動させ
「ようこそ!東の都アルマルスへ!」
それから門兵さんと一言二言言葉を交わし俺は今冒険者ギルドを目指して街中を歩いている。
なんだか道行く人が少し俺の方を見てまた視線を戻すということをしているために若干気にはなるものの足早にギルドへと向かっていった。
「おぉー。これがギルドかぁ」
あれから10分くらい歩いた街中に回りの建物より二周りくらい大きい建物がそこには経っておりデカデカとした看板には「冒険者ギルド東支部」と書かれていた。
文字が読めているのはこの世界に神様が体を構築してくれた時に言語理解もつけてくれたのだ。マジであの爺さん何者なんだろうか。
街中で呆けているのも迷惑だろうと気持ちを切り替えて俺はギルドの扉を開ける。
ギルド内部はかなりの賑わいを見せており緊急と書かれたボードを見ている人やパーティー募集のボードを見ている人やギルド内の端に併設された休憩所で仲間たちと談笑している人などで人が多かった。
そして冒険者登録受付と書かれている受付場とクエスト受注場と書かれた所にも当然人が多かった。これは、かなり長い時間待たされるなと思いながら登録受付の所へ俺も並んだ。
途中で前に並んでいた団体や後ろの男女カップルに話を振られたりしながらかれこれ1時間くらいしてだろうか漸く目の前の人まで登録が終わり俺の番は来た。
「いらっしゃいませ。ようこそ冒険者ギルドへ。早速ですがこちらのスクロールにお名前と希望するタイプをお書き下さい。代筆も可能ですが代筆の場合は銅貨3枚を頂戴することになっています。あとタイプのご説明は必要ですか?」
笑顔で接客してくれる受付のお兄さんは素敵にイケメンだった。そんなイケメンお兄さんは笑顔を崩すことなくこちらを見ているのでタイプの説明をお願いすることにしたところこれまたイケメンスマイルで対応してくれた。
「畏まりました。タイプですが大まかに分けて前衛、後衛、支援に分かれます。前衛タイプは常に前線に立つことになります。後衛は遠距離タイプです。支援は味方への強化や周りへの警戒タイプです。そこから更に細かく区分されますが細かい区分に関しては人それぞれですので今は省かせて頂きます。お聞きしたいようであれば後日初心者指南が開かれますので緊急クエストボードの一番上をご確認下さい。以上になりますが質問はありますか?」
確かに大まかな説明だけではあったがこれだけ聞ければ十分ではあった。俺としては既に自分のタイプは決まっているのだがこの世界に関しては初心者なので人に聞けることは聞いていこうと思っている。
ありがとうとお礼を言いスクロールに名前とタイプを書き込みお兄さんに渡すとお兄さんは受け取り確認していた。
「ガロン様ありがとうございます。では、登録料として3銅貨を頂戴致します。もし、お手元に無いようでしたらこちらで代金を立替させて頂きますが如何なされますか?」
特に問題はないのでそのまま銅貨3枚を渡すことにしてお兄さんは受け取り
「では最後にこちらの魔力鑑定水晶に手を当てて頂いてよろしいですか?これで出た数字がガロン様の現在のランクになります。」
俺の前の人たちが手を当たりしていたものだろう。事前に前の人を見ていたために俺はすでに偽装してある。どこまで偽装するか悩んだがとりあえず最大限引き落とすことにし水晶に手を当てると出たランクは3の表記が出た。
まぁ妥当な数字だなと俺は納得していたのだがさり気なくフォローしてくれた。気遣いまでイケメンだった。
全ての作業が終了しお兄さんが小さな引き出しから青のカードを取り出しスクロールの横に並べると手に魔力を集中させスクロールに手を当てるとスクロールが消え横にあったカードに自分の名前とタイプが書かれていた。
「はい。これでガロン様のカードが発行されました。今後はこちらがガロン様が冒険者であるという証明になります。左手奥の講堂にてギルド員がカードとクエストについてご説明致しますのでどうぞ他の皆様同様にお座り下さい。まもなく30分前後でご説明に入ります。」
そう促され左の奥にある講堂へ入るとズラリと冒険者たちが座って各々一緒に登録したであろう人物たちと談笑に華を咲かせていた。
そうして自分の後から数名の冒険者が入ってきた所で正面横の扉から一人の男が入ってきた。その男の身体付きは現役の冒険者と思わせる感じをしていた。
そしてその男は正面中央に設置されている台へ向かうとそのまま台で足を止めクルリとこちらを見渡し
「今日この日、冒険者になった君たちを私は嬉しく思う!冒険者とは危険な目にもあうモノだ!しかし、やり甲斐はあるものでもある!
だが、それ故に常に覚悟をしていてもらいたい!君たちはまだまだ新人だ!
魔物の討伐や一攫千金を目指すものもこの中にはいるだろう!だが、それは新人のうちには回すことをないということを予めに言って置く!
不満のある者は正直に手をあげても構わない。不満があるものはいるか!?」
それを聞いた冒険者たちのほとんどが手を挙げた。自分たちは何のために危険の付き纏う冒険者に身を置くことにしたのか、それは魔物と戦い金を儲けるためや地位を得るためだと思っている。
そんな彼らを男は一人また一人と見つめ満足そうに笑みを浮かべた。
「よかろう!ならば冒険者としての高みを目指せ!君たちは立派に冒険者だ!手を挙げなかった者もいるがその者たちの目も決して覚悟がないという目はしていなかった!
私は今日、君たちに会えたことを誇りに思う!君たちが名を挙げ実力がついたとしても今、私が言ったことを覚えていてくれ!以上だ!最後に自己紹介をしよう!私はこのアルマルスのギルド長ガブルだ!」
そう言い来た時と同じ扉に向かって歩き始めそれと入れ替わるように一人の青年が中に入ってきた。
「それでは、私ギルド員ホーウェイが皆さんにお渡ししたカードとクエストについてお話させて頂きます。
まず、カードについてなのですがこれは今は皆さん青色をしていると思います。ですがこのカードは昇格するごとにカードの色が変わります。色は全部で青、緑、黄、銅、銀、金、純白の7種類あります。その度に特典が付与されていきますがそれは昇格した時にお話致しますのでまずは、昇格するための条件をお話します。
昇格するにはギルドでクエストを受注して頂きます。その受注したクエストの成功回数によって昇格となります。
昇格するごとに昇格条件が高くなりますのでお気をつけ下さい。そしてクエストですがこれはカードの色と同等のものか下のランクまでしか受け付けておりません。ただし、ランク下のクエストの場合は成功回数には含まれませんのでご注意下さい。また、しか受け付けておりません。クエストを受注したい場合は右下にある窪みに手を当てると一覧が表示されますのでそこから受注してクエスト受付まで持ってきて下さい。
受注確認が取れますと任務中になり達成すると達成済とカードに表示されます。又、クエストを途中でキャンセルすると違約金として報酬額の半分をお支払い頂くことになります。それと同時に未達成数が一定以上になるとその方の昇格条件が高くなります。
あと、これは無いとは思いますがクエスト品の横流しや強奪の場合は発生した瞬間にギルドに通報が入り罰則となり最悪の場合は討伐依頼を出します。
報酬に関してですがギルドに達成条件品を納品して頂けることと交換でお渡ししております。その時には忘れずにカードをお出し下さい。カードにクエスト達成数が更新されますので。
また、紛失された場合は金貨1枚を頂戴しているのともし他の方が他の方のカードを使用するとそのカードは使用停止になります。以上ですが質問はありますか?」
ホーウェイは説明を終えると冒険者たちの顔を見渡したが冒険者たちは真剣に頷き特に質問がないのかと思い姿勢を正しにこやかに
「それでは私からも皆様が冒険者になられたことを心より祝福します」
とお辞儀をし講堂から出て行った。
それを冒険者は見送ったのを確認すると残っていた冒険者たちもゾロゾロと講堂を後にする者やこれからの予定を話あっている者に分かれた。
俺は特に残ってすることもなさそうなので講堂から出てその足で手の開いているギルド員に宿泊出来る所がないか聞いたら多少高いが食事の旨い宿を紹介してもらい宿を目指し歩いていくと正面に目的の宿を見つけた。
中に入ると小さなプレートに
全個室 1泊(朝食付き)銀貨1枚
1月(朝食昼食付き)金貨1枚と銀貨2枚
と書かれているのを見つけた。
確かにそこそこの値段が張るとは思ったが、個室なのは有難かった。個室のためテレポートで拠点に戻っても怪しまれないだろうしやはり一日に1回はあの自慢の風呂に入りたい。
決まりだな。と、決断し受付にいた女性に話かけた
「しゅみませ・・・す、すみません。宿を1月ほど借りたいのですが」
なぜここで噛んだのか。確かに美人の女性だし緊張するのはわかるがここで噛むなよ俺ェ・・・
少し落ち込んでいる俺を見た女性は微笑ましい感じで見つけてくるばかりかあらあらと指先を唇に当てながら笑っていた。
も、もの凄く恥ずかしいんだが・・・絶対これ俺の顔真っ赤だな・・・すごく逃げたい気分だ
なんてことを思いながらも無事に宿に泊まることに出来た俺は早速部屋の鍵を受け取り食事の時間を聞いた後部屋へと向かい食事の時間まで装備品のチェックやメンテナンスをして時間を潰し
食堂へと向かった。食堂は四人がけのテーブルや2人がけのテーブルやカウンターテーブルなどがそれぞれ20ずつくらいある場所で宿泊客だけじゃないのかかなりの人数が席に座って飲み食いをしていた。
そして腹が減ってる所に肉の焼ける匂いやジューッと音と時たまにパチッという脂が弾ける音が聞こえてくる一方では何かの香辛料を使っているのか少しツンとする匂いが漂ってきてさらに腹を減らせるには十分だった。
辛抱出来ずに俺はカウンターテーブルに座り店員を呼ぶことにし
「すみません!これ宿泊鍵です。それと、えっと・・・このブーフ肉のステーキとエッシュサラダにあと別に支払いでブーフ肉の煮込みとコージュスープをお願いします!」
注文を聞いた女性の店員は少し驚いてそんなに食べるの!?という顔をしていたがさすがはプロ、笑顔になり
「少々お時間掛かりますがお待ち下さい」
と調理場にいるスタッフにオーダーにし行く姿を眺めながら期待に胸を膨らませて待つ事にした。
そうしてしばらくすると先ほどの店員さんともう一人別の店員さんが料理を運んで来てそれぞれの料理を並べてくれたのでお礼を言ったら店員さん達は笑顔でごゆっくりと言って下がっていった。
さて、お待ちかねの料理だ!どれから食べようか・・・
どれも美味しそうではあるがやはりここは熱いものを先に頂くべきだろう。そう!このステーキからだ
傍には銀のフォークとナイフがおいてありそれを手にとり未だに熱を持ったままパチパチと脂が弾けているステーキの端にフォークを立てナイフで少しずつ切れ込みを入れていこうと思った矢先にスッとナイフがすべり肉が切れていったのだ
柔らかい肉だとは思ってはいたがまさかこれほどまでとは思わず目を見開く。いや、まだだ、まだ驚くには早い。味が整っていなければ完成とは言えない。だが、この程よく焼け切れ込みを入れようとすると傍から肉汁が少し出てきてそれが鉄板の上に落ちると同時にジューシーな匂いが広がってくる。これ程のもので味がイマイチなわけがない!
そう思い口に運んだ瞬間
肉がほぐれたのだ
噛む力など不要と言わんばかりに、まるでそう、淡雪を口に入れてるかのような、しかししっかりと肉を味がする。これ程のものか、これ程までに完成された料理なのかと俺は人知れず涙を流しながらステーキを完食し
エッシュサラダはフレッシュサラダのような感じで新鮮で瑞々しいおいしさがありこの宿オリジナルなのか分からないがドレッシングもとても美味でこれ単品でも美味しさが際立っていた。
続いてブーフ肉の煮込みはこれまたステーキとは違う美味しさがありこちらも煮込み具合が絶妙で肉を口に入れると少しほぐれこちらはこちらで噛めば噛むほどに肉の美味しさが際立ってくる。そして最後にコージュスープはコンソメスープのような味わいなのだがもっとさっぱりとした風味だった。
「ごちそうさまでした!」
両手を合わせ食材と関わった人すべてに感謝の念を送りレジへ向かい会計を済ませ部屋に戻ってきた。
途中レジで注文を受けた店員さんが「また良ければ沢山注文してくださいね」と笑顔で言われ了承してしまったが後悔はない。笑顔には弱いんです。特に子供と老人と美人な女性には。
部屋に戻ってくるや鍵をかけそのままベッドへとダイブした。どうやら自分が思っているより疲労していたらしくそのまま目を閉じながら
「明日は・・・クエストを受けよう・・・」
そう呟きながら意識を沈ませた――
異世界さんこんにちわ~不死王だけど元人間です~ 第2説「冒険者」
3/20 一部改稿