序説
拙い文章かつ最強系主人公なので合わない人はブラウザバックを推奨致します。
皆様に楽しいと言われるよう頑張ります
突然ですが皆さんは異世界と言えばどんなことを思い浮かべるだろうか。
広大な草原、ダンジョン、ギルド、冒険者、勇者と魔王、魔法等々
様々なモノがあり夢が膨らむことと思います。俺もそう。
でもそれらは結局のところ夢でしかなく非現実だからこそ色々と想像してしまうわけだ。
でももし、もしも本当に目の前にそんな光景が広がったら?
もし、本当に次元を渡り異世界へと行ってしまったら皆さんはどうだろうか?
自分の住んでいた世界に帰りたいと思うだろうか。それとも異世界を堪能するだろうか。
俺は――
「おひょおおおおおおおお!これが本物かああああ!」
「おほーっ!草木のにほいがしゅるううううう!」
若干言葉が怪しくなり挙動も怪しくなります。
いやですね?さっきまでフローリングやらコンクリートやらで敷き詰められた我が家にはいましたよ?
こんなに草木が生えてるような場所には居ませんでしたし、こんな場所なんて小学生の時に田舎の祖父母の家に行った時くらいじゃないだろうか。
では何故、こんな場所にいるか説明をするとつい3時間前のことだ。
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「このゲームもあと30分で終わりか・・・」
独りごちりながら椅子に靠れかかると少し椅子が悲鳴をあげてくる。
そんな椅子の悲鳴を華麗にスルーしながらPCの画面に映っているゲームの終わりを物悲しそうに見つめる。
ラグナロクワールドオンライン 通称たそオンと呼ばれていたゲーム。今でこそほとんど人がやっていないまでもリリース当時はそこそこ注目されていた
その理由の一つはカスタマイズ機能にある。キャラメイクはもちろんのこと生産品も自分で名前が付けることが出来たり、自分自身がギルドを運営出来たり国起こしをしたりとカスタマイズが様々だ。
もちろん戦闘でもカスタマイズが出来、一定のスキルがあるもののそこからの派生は多種多様だった。
例えば、魔法ならばファイアーボールを出すにしてもチャージをして攻撃力を高めたり、連射性を重視したり、遅延発動をさせたり、弾幕のように広範囲にしたり等々独自に思い描く形に使うことが出来る。
だが、そこまでしようとするとMP消費が高かったり練度が足りなかったりとするため序盤では選択肢の幅は少ない。それも武器スキルによって少しは軽減出来たりはするため初心者でも敷居はそこまで高くないとだけ補足しよう
今では別に対して新しくもなくさらに洗礼されたゲームが沢山出来ている。でも俺は、このゲームが好きだった。
初めてネトゲに手を出したのがこのゲームだと言うのもあるのだが背景やBGMが俺を魅了している。
「この姿とも見納めか・・・データだと分かっててもずっと一緒だったから愛着しかないな」
そうぼやきつつステータス画面で全身を眺める。そこには上半身は純白のYシャツのようなものに黒いベストそして膝近くまである大きな漆黒のマントと下半身は黒のキュロットを主体とし装飾品は下品にならないようにでワンポイント程度に胸の辺りにチラリとディープブルーのブローチをアクセントとしている。
体系はボディービルダーのような筋肉ではないががっちりとした筋肉がついてはいるのは服越しでもわかる程度だ。
顔は西洋風でやや釣り目で銀髪で少し髪が肩にかかる程度である。
実在するならばどこかの国の王であってもおかしくない気品溢れる感じに仕上がっている。
だが、実在することはおそらくないだろう。それは雰囲気等が理由という訳ではなく種族にある。
背中には暗闇にも似てマントと同じ漆黒の翼が生え口を開けば異様に伸びた犬歯がチラリと見える。
種族:ヴァンパイア
そう、吸血鬼と呼ばれる空想の種族だ。昔から吸血鬼に憧れていた俺は遊んだゲームには必ずと言っていいほど吸血鬼が出ていた。
敵であろうが味方であろうが千差万別することなくにだ。それ程までに俺は吸血鬼という種族に傾倒していたのだった。
だが、そんな吸血鬼万歳な俺にも納得できない所はある。皆さんもお気づきだろうが大体の吸血鬼の弱点として銀を溶かした弾丸、銀の十字架、銀の杭、流水などがある。
確かに、ゲームや映画なんかで弱点を作らなければどこかの旦那よろしく無双になるのは大いに判るのだがそれでもやはり個人的には納得できないのだ。
だが、このゲームでは一切先程言った様な弱点がないのはまさに俺の理想だったのだ。
むしろ特性と称号で強化されている。その最たる例をあげよう。
特性
闇属性攻撃100%カット
闇フィールドでの自身の性能を強化(1秒につき100%)
眷属契約:対象を眷属化し絶対服従させる
不死王の祝福:自身のステータスの1/2を眷属化した味方の補正値へと上書きしHP概念を無効化する
称号
不死の王:死の概念から外れた先の王。HPの概念がなくなる
闇神:闇を支配する神。相手のステータスを1/3まで下げ味方のステータスを10倍補正する
始祖たる吸血鬼:同種族からのダメージを受け付けない。また闇属性をもつ種族のダメージを90%カットする
例にあげたものを見れば最早一目瞭然である。当然ここまで強いのには訳がある。
ヴァンパイアという種族自体は最初から選べる種族ではあるが特性と称号をとるためには上限解放MAXの5回目までレベルを上げ尚且つ最終ダンジョンを踏破しなくてはならないと割と苦行なのである。
何が苦行なのかと言えば解放である。解放はレベル上限限界まで上げ解放に必要な素材を使う必要がある。
そしてその解放に必要なレベルというのは最初は150でありそこから解放する毎に上限が200上がるのだ。つまり最終となる解放は1150レベルということになる。
終末のダンジョンと呼ばれる場所で経験値アップ課金を6ヶ月毎日して22時間狩り続けてようやく到達できるレベルだ。
無理なレベルではないのだがそれでもやはり苦行だろう。特に時間があまり取れない社会人には辛いものがある。
画面の前で座っている柏木修二も永遠とも言える時間の果てにようやく手に入れた称号だったのだ。
だが、その称号を手に入れた瞬間は感無量であったのを今でも覚えている。
しかしその感慨深さもあと30分程でなくなってしまうのがなんとも言えない気持ちである。
「・・・そろそろ拠点に戻っておくかな」
そう言葉にしつつスキル画面を開きテレポートで登録された拠点へと戻ることにした。
画面が切り替わった瞬間今まで見ていた風景とは違った風景が画面へと映し出されそこには今までのような街中ではなく広々とした空間が広がっており入り口の左右には西洋騎士のような鎧が置かれ
床の全体には紅い絨毯引きつめられいる。そして中程にある左右から伸びた階段が曲線を描き2階へと登る道を作っておりその先には1階より二周りほど小さいスペースが広がっている。
そんなホールにテレポートした瞬間システムチャットウインドウが帰還を待っていたかのような一文が出てくる。
『ガロンが拠点へ戻りました』
そう、ここは修二の拠点となる屋敷の中なのである。ガロンとは自分のキャラクター名である。
そして修二は拠点へ帰ってくるとすぐに2階の一番奥にある自室を目指して歩き始めた。
自室の扉を開き部屋の中央に中世風のテーブルと椅子が置かれておりそこへ修二はキャラを座らせながら
「明日から何か新しいネトゲでも探そうかな・・・でもなぁ」
そんなことを修二はボーッと考えながら微睡む意識へと身を委ねた――
『・・・か、・・・・おき、、か・・・ほりゃ!起きんか!』
誰かが起こしているのはわかるのだが、寝ぼけているせいで頭が正常に起動せず為すがままに両肩を前後に揺さぶられてしまう。
『仕方ないのぉ、ほれ、気付け薬じゃ!スパーク』
何処からか声がしたと思った矢先に全身に何とも言い難い痺れがくる。
「いだだだだだだ!・・・ってなんだ!?」
『ようやく気が付きおったか。全く世話の焼けるヤツじゃのぉ』
目が覚めた俺の目に映ったのは真っ白な只々何もない空間にポツンと椅子とテーブルがあり俺の座っている向かいには白髭を生やした爺さんが居ただけだった。
(一体此処は何処だ・・・?そしてこの爺さん誰?てか何でこんなところで寂しい老後を過ごしてんのだろうか。俺もこうなっちゃうの?)
『お主前半の疑問は当然じゃと思うがなんで最後の方で老後の心配なんぞしとるんじゃ!?』
ンオッホン!と態々聞こえる声量で咳をし目の前の爺さんはこちらを見てくる。
『色々と聞きたいこと等があるかも知れんが一先ずワシの話を先にさせてもらってもええかの?』
現状でわかることが少なすぎるため修二にとってもこの提案は渡りに船だったのでしっかりと目の前の白髭爺さんの話を聞くために耳を傾ける。
『先ず最初にお主が先程まで遊んでいたラグナロクワールドオンラインは今し方サービスを終了したぞい。そして柏木修二よ、最後まで遊んでくれてありがとう』
「いや、俺の方こそ今まで楽しかったからこちらこそありがとうございます」
目の前の爺さんが運営なのかは今の俺には判断がつかないが御礼は言って置こうと思い御礼を言う。
だが確かに、先程まで俺はたそオンをプレイしていたはず。自室でだ。もし驚愕のビフォアーアフターでもしない限り俺は自室なはずなのだがと考えていると
『時間はまだ残っとるがあまり長くなっても仕方がないしの取り敢えず大まかなことだけ伝えるぞ?』
そうして目の前の爺さんが言うことを俺は自分の中に落とし込み考える。
爺さんの話す内容を簡単にまとめるならば
・元々このゲームは別にあった世界を元に作成しておりその元ある世界に対してゲームの世界がどれほど干渉するのかという試験的なものでもあったらしい
・そしてその元あった世界に今までずっと遊んでいたプレイヤーの中で一人だけ異世界へ行くことが出来るようにした結果、俺が当選したらしい
・ただし俺たちの住んでる世界とのリンクは消滅するために絶対に俺は戻ることは出来ないとのこと
・その理由は使用しているキャラの全てと拠点を世界に送ることになるから居た世界の俺の肉体はなくなるとも言われた
ざっとこんな感じのことを言われ俺は考えることにしたのだが・・・
元より自分たちの居た世界では刺激もなく働いて食べてネトゲして寝てを繰り返しているだけの生活だったため特に戻りたいとも思わない。
両親は既に父親の実家であった田舎に移り住んでおり彼女も居ないので特に気にする必要性もなさそうである。
「ひとつだけ爺さんにお願いしたいことがあるんだけどいいですか?」
目の前の爺さんはおそらく偉い神様なのだろうと当たりをつけお願いをするために爺さんに声をかけた
『両親に自分という存在の記憶の消去と今まで貯めている貯金を両親の元へ届けておく。とかそんなことじゃろ?』
まだお願いもしていないのに俺のこれから言おうとしていたことを当てられ俺は驚愕した
「驚いた。まさにその通りです。頼めますか?」
それを聞いた爺さん改め神様は当然と言わんばかりに約束をしてくれた。
なら俺の答えは唯一つ。
「俺をあの素晴らしい世界に連れていって下さい―」
この時より俺は柏木修二改めガロンとしてあの世界へ足を踏み入れることになった
そこで待っているものは予測出来ないことばかりではあるが全てに置いて掛替えのないものであり
俺はこの世界に来れたことを深く深く感謝するのだった
―この物語は一人の王が夢に思い描いていた異世界を冒険するファンタジーである―
異世界さんこんにちわ~不死王だけど元人間です~ ―序説―