クロス
スクランブル交差点
通りゃんせのメロディに急かされて
近づいていく僕
追い越していく君
目が離せなかったのは
同じ匂いの影のせい
すれ違った瞬間に
揺れて重なるふたつの輪郭
胸を衝く
うつむきがちの白い横顔
思わずその名を呼んでみたけれど
振り返る僕の瞳に映ったのは
迷いもなく遠ざかっていく
真っ直ぐなうしろ姿だけ
ふたりの道が出会うことは
もう二度とないのだろう
嘆いても
叫んでも
すがりついても
交わった二本の直線は
時が経てば経つほどに
遠く離れていくばかり
だから僕も立ち止まらない
痛んでも
悔やんでも
肩を震わせても
雑踏にまぎれて消えていった
あの遠い日々だけが
せつなくきらめく結晶となって
胸の奥に残り続けている