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第18章 月光タワー3F・疾風の蛭子

(某月某日 午前1:25 月光タワー・2F 部隊員の準備室)


 2Fに上がった先にあったのは、部隊員の準備室だった。各員のロッカーやベンチが置かれており、女性の水着ポスターや注意事項などが壁に貼ってあり、部屋の隅には道具入れ等が置かれていた。


 先ほどのように警備用のオートマトン等は配置されてなく、ガーディアンフェザーの追っ手などはまだこの階には到達してなかった。


 また、このタワーの関係者以外が、追っ手も含めて多数入り込むため、ガーディアンフェザー側が“侵入者感知センサー”を切ったようだった。1Fの時点でもそうだったが、希達が侵入した時点で警報が鳴らなかったのはそのためだ。


 希達もこんな所で物色している時間もなく、ロッカーは施錠されており、用事もないので、さっさと奥の階段を上って3Fに移動した。


(某月某日 午前1:35 月光タワー・3F 部隊員の休憩室)


 そこはある意味、一息付ける場所だった。3Fは部隊員の休憩室だったからだ。座り心地の良さそうな椅子、ソファー数台、各種自販機、ジュークボックス、ビリヤード台1つ、ピンボール台1つ、アーケードゲーム機2つ等、結構充実していた。


 自販機だけ維持のために動いていたが、他は全て電源offにされており、ざっと見て人気は無かった。


ぬこみん「ちょ、ちょっと、自販機でドリンクでも買おうかなぁ。まさか私たちの罠で自販機のドリンクに毒とか盛ってないと思うし…」

リキュール「そうね、緊張が続いて、ちょっと喉が渇いたわね。私は炭酸系がいいかな」

スイート「今の気分は、甘い100%果汁ジュースのオレンジか」

ステロイド「俺はコーヒーのブラックと行こう」

希「微糖コーヒーにしようかな」

ぬこみん「スポーツドリンクにしよう。後々考えて」

テンニャン「無糖紅茶アルね」


 ガチャコン ガチャコン


 各人がコインを入れ、各人の注文ドリンクを取り出した。残りは黒崎だけだった。


黒崎「では、俺は、暖かいお汁粉といった所か」


 ガチャコン


 全員、黒崎を見つめた。意外な人が意外な注文だったからだ。


黒崎「な、なんだよ!?」

希「黒崎さん、随分、おこちゃまな物を…」

黒崎「ああ、これか。いや、お汁粉は馬鹿に出来ないぞ? 意外に思うが、これは古来からバランスの良い栄養食だ。小豆から作っているから必要な栄養分も取れ、糖分もしっかり取れる。暖かいから内臓を冷やさなくて済むし。それに、俺は結構、甘党なんだ」

ぬこみん「ふふ、黒崎さん、カワイイ♪」

黒崎「おいおい…」


???「侵入した上に、敵地で休憩とは、良いご身分だな」


 全員が飲み物を地面に置き、ムーンライトガンを構えた。黒崎はまだ開けてもいなかったから、悔しそうに地面に置き、サタメントを構えた。


 その声は4Fへの階段から聞こえてきた。つまり、上から入っていった追っ手の中で、一番足の速いのが希達と遭遇した、と言った所だろう。女性の声だった。


黒崎「なるほど、おまえも追っ手の一人なら納得がいく。疾風使いのガンナーで韋駄天で有名だったからな。志奈津シナツ 蛭子ヒルコ、おまえだな?」

蛭子「黒崎、まさかお前がそこの旧式側に付くとは思わなかったが、いずれにしても、ガーディアンフェザーの備品やデイライトガンを返却せずに使っていること、草薙様は相当怒り心頭だったぞ?」

黒崎「あんな人道に反する仕事、あれっきりにしたいと思ったからだ。備品とデイライトガンは、“心的ダメージ由来の労災に対する治療費”として頂くことにする。また草薙に会う機会があったら、そう伝えておけ」

蛭子「なーにが労災だ! 旧式も含めて貴様ら全員片付けて、デイライトガンと備品は返して貰う。ついでにその違法改造したムーンライトガンは没収だ」


 リキュール達は、少し嫌な顔をした。確かにこの限界突破出来るムーンライトガンは、希の両親がルール外で施した銃だ。だが、そのムーンライトガンの“ルシフェリオンまでの成長システム”を許しているのは、他でもない、蛭子達ガーディアンフェザーだ。今更、何を言っているのだ。そんなに“脅威となりうるムーンライトガン”を恐れるなら、成長システムなど作らなければ良いのだ。自分達でリスクを背負っても、ムーンライトの統制をはかりたいから作ったと聞いている。“都合が悪くなったから、お前が悪い”など、子供の言い分である。


ぬこみん「とりあえず、おばさん、この銃は没収させないよ」

リキュール「そうよ、けばいおばさん、大事な物だから、だ・め・♪」

スイート「そうだ、おばさん、言葉は選んで使え。この銃は渡さん!」

ステロイド「そうだ、おばはん、力ずくなら、こちらも力ずくで守る!」

テンニャン「おばはーん、これは、だめアル!」

希「あのさ、おばさん、俺の銃、まだ限界突破もしてないからさ、それ、無しな」


 蛭子の眉間にみるみるしわが寄ってきて、こめかみに『怒筋』が複数現れ、明らかに怒り心頭状態になった。


 確かにガーディアンフェザーの“追っ手”であり“ガンナー”にしては、少々派手な姿、詳しく書くと、派手目のカラーの入った髪の毛、少々布地が少ないと思う“薄着”にミニスカ、更にミニスカの上に露出した右太ももに装着したガンホルダーに派手な羽根を数枚あしらったおそらくは彼女のデイライトガンが挿入されており、靴はやはり羽根が数枚付いた女性向けのブーツだった。おばさんは言い過ぎだと思うが、どう考えてもRPGや映画の女戦士、そのものである。とても“企業所属のガンナー”とは思えない出で立ちだった。


***


 ピッ


希「?・・・・・って、この音、もしかして、『サヴァイバリング』!?」


 蛭子は怒り爆発の寸前状態で、自分のガーディアンフェザー専用のスマホを操作し、『サヴァイバリング』のアイコンをタップしたのだった。


蛭子「き・・・・・貴様ら・・・・全員・・・・・デイライトの連中が見ている前で・・・・・我が疾風銃で・・・・ズタズタに切り刻んでやるぅぅぅぅぅぅぅうううう!!!!!!」


 黒崎以外は全員引いていた。このおばさん、ほんと、大丈夫なのか?


黒崎(怒らせて冷静を欠く戦法までは良かったが、まさか“一部のデイライト富裕層向け娯楽”としてデイライトエリア“では”成立しているサヴァイバリングを使うとは・・・。この狭い空間で、奴の“韋駄天能力”と“疾風攻撃”に勝たないといけないか…。さて、『誰が適任』か、奴が怒っている間に考えるとしよう・・・・)

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