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同盟(アライアンス)

「まあ、聞いてくれや」


 壁の向こうでラムが言った。

 ミラは沈黙で続きを促す。


「何から話すか。そうだな……固有技能(ギフト)のおかげで、匙を使えば壁に穴を掘れるとは言ったが、それは簡単な話じゃあねえ。壁の中でも、硬くて掘れない部分があるんだ。いや、むしろほとんどがそうだ。唯一、柔らかくて掘りやすい方向に向かって掘り続けていたら、その先にいたのがミラ、お前だった。俺の予想だが、ここの壁は基本的に魔法加工で強化されていて、独房同士を隔てている壁だけそれが無いんじゃねえかとにらんでる」


(そんな!じゃあ、穴を掘って脱獄はできないの!?)


 ミラにとってはそこが最も重要な話だ。

 ラムは言いにくそうに答える。


「まぁ要するに……今のところ手詰まりだな。だから俺には協力者が必要だ。俺にできることなら何でもする、だからミラ、俺の脱獄を手伝ってほしい」


(そんなの私だって同じ。何でもするから、とにかくここから抜け出したい。そのためには、ラムの協力が必要だとは思う。でも、まずはラムを信用できるか見極めないと)


 ミラは額に手を当て、目を瞑った。

 ラムからもう少し話を聞きたい。


「……でも、ラムが脱獄したら故郷に迷惑がかかるんじゃないの?」


「……っあぁ、その通りだ。だがな!先に裏切ったのは向こうだぜ。王国の上の連中なんて、もう信用できねえ。村が今頃どうなってるのか、俺はこの目で確かめなきゃ気が済まねえんだ」


「裏切られたって?」


 ミラは当然の疑問を口にした。


「あぁ、奴らは約束したんだ。10年の懲役をきっかり全うすれば、俺の身柄を解放するってな。暗い独房生活の中、俺は毎日日付を数えてた。だが、俺がここに入れられてからもう11年が経つ。奴ら約束を反故にしやがったんだ」


「それは……許せないわね」


(期間を全うすれば、安全にここから出られるのかもしれない。でも、反故にされる可能性もあるってことね。そうされたって抵抗できないし、反論の余地も与えられない。そもそも、私の投獄期間は何年?何の説明も受けてないのに、こんなの酷すぎる!)


 権力の力の前に泣き寝入りするしかない理不尽を感じているのはミラも同じだ。

 怒りを孕んだラムの話しぶりに、ミラは今までで一番共感できた。


「ああ許せねえ。看守には何を言っても無駄だった。だから俺は、1年前から脱獄を考え始めたんだ。この監獄内じゃ魔法は使えねえが、幸いなことに固有技能ギフトは使える。看守の目を盗んでちょっとずつ穴を張り進めた」


「それがこの穴ってことね」


 ミラは独房の中の小さな穴を見つめた。


(隣の独房まで、どれぐらいの距離があるんだろ?そんなに離れているとも思えない。その距離を掘るのに1年かかる。しかも、独房間以外の壁は穴を掘ることさえ難しい。ラムの言うとおり、このままじゃ脱獄できるとは思えないわ)


「穴を掘りながら、俺も思っていたんだ。方角的に、このまま進んでも出口に通じるとは思えねえってな。だが、この方向以外には壁が硬すぎて掘り進められねえ。なら、とりあえず掘るしかねえ。それでも、実際にこの穴が貫通するまでは、俺も一縷の望みを持っていた。まあその結果は……見てのとおりだけどな」


 ミラは同じ囚人の立場から、ラムに自然と感情移入していく。


「……そっか。たった今、1年間の努力が無駄になっちゃったんだ……」


「ああ、そうだ。正直、状況はかなり厳しい。詰んでると言ってもいい。だが、それに一つ意味があったとすれば、この状況下でそれでもなお希望があるとすれば、それはミラと会えたことだ」


「私に?」


「ああ、ミラは王都の冒険者ギルドに勤めていたんだろ?平凡な人間が就職できるところじゃない。ミラを脱獄の同士と見込んで、改めて頼む。ミラの知恵を俺に貸してくれないか?」


(私なんて、そんな大層な人間じゃない。でも、ここを脱獄したい気持ちは同じ)


「私にできることなら、何だってするわ。ラム、私にもあなたが必要よ。だから、これからよろしくお願いします」


「そうか、やってくれるか!やったぜ、痛っ」


 狭い穴の中で拳を挙げようとしたラムは、壁に手をぶつけた。

 しかし、ラムの表情は明るい。


「くすっ」


 壁越しで見えないが、ミラはその様子を想像して思わず笑いを零した。

 それは、ミラが監獄に入ってから初めて笑った瞬間だった。


(やっぱり、ラムには私の固有技能ギフトのこと、話すべきね。何だってするって言ったばかりだもの。もう、迷ってる場合じゃない)


「ねえラム」


 ミラが話しかける。


「私、そんなに頭が良い方じゃないから、作戦とか計画とか、そっち方面では役に立たないかもしれない。でも、私も固有技能ギフトを持ってるの!だからきっと役に立つことがあると思うわ!」


「何だって!……ワハハ、ハハハハハハ!こりゃすげえ!すげえぞミラ!ホントに希望が見えてきたぞ!」


 ラムは興奮して声が大きくなった。


「ちょっとラム!声大きいって!」


「つい、すまねえ」


「うん。でね、早速だけど私の固有技能ギフトのこと聞いてくれる?」


 ミラは己の固有技能ギフトの詳細を、ラムに話し出した。





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