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出発(デパーチャー)

 それから一週間。


 ミラは、エマから冒険者としての心構えやルールを教わった。

 それを受けて、ミラは驚異的な速度でそれらの知識を吸収した。

 ように周囲から映ったが、かつてエマと同じ職業に就いていたミラにとって、それらは既に習得済みの知識だった。


 くわえて、褒めて伸ばす主義を自称するエマは、ことあるごとにミラを褒めた。

 その影響もあって、ギルドでのミラの評判はうなぎのぼりだ。

 若くて可愛らしい女、しかも有望な新人がいると、ギルドでは忽ち噂になった。


 そして今日。

 ついに、ミラが炎の剣と共に迷宮探索へ行く日がやってきた。

 今日の迷宮探索で、ミラがパーティーメンバーに相応しいかどうかテストされる。


「イリア、準備はいいかい?」


 ラグーンが尋ねた。


 ラグーンの装備は、全身銀色のプレートメイルに、おそらくオーダーメイドの長剣と丸盾。

 ランクが低い迷宮探索にも関わらず完全装備だ。

 それは無論、装備を自慢するためではなく、万が一の事故を避けるための合理的判断だった。


「ええ、準備万端です。よろしくお願いします」


「フン、せいぜい足を引っ張らないことね」


「今日はよろしくだな〜」


 モネとマトウも全身装備だ。


 モネの装備はローブと大杖。魔法の威力を上げるローブと大杖の組み合わせは、魔法使いの定番装備だ。

 マトウは、縦にも横にも大きいその体格に見合う、大盾と大剣を装備していた。両方とも両手武器に見えるが、同時に装備しているということは、それぞれを片手で扱うということらしい。


「モネさん、マトウさん、今日はよろしくお願いします。皆さんのお眼鏡に叶うように頑張ります!」


 ミラも、彼らと比べれば装備こそ貧弱だが、やる気では負けていない。


「イリアは張り切りすぎて失敗しないでね」


「不吉なこと言わないでください!」


 ミラとエマの掛け合いが、場を和ませた。

 ミラの緊張も、心なしかほぐれたようだ。


「イリア、がんばってね。健闘を祈るわ。みんなも、くれぐれも怪我だけは気をつけてね」


 エマはいつも通りの笑顔で四人を見送った。

 その笑顔は、炎の剣への信頼を物語っているようだった。


「さあ、出発しよう」


 一行は、迷宮へと出発した。




「最後にもう一回、確認しようか」


 迷宮の入り口で、ラグーンが言った。


「フォーメーションは、俺とマトウが前衛。モネとイリアが後衛だ。俺たちが敵を引きつけるから、モネはいつも通り支援魔法と補助魔法を頼む。イリアちゃんは攻撃魔法で前衛の火力の援助。万が一にも後衛に魔物が漏れる可能性もあるから、心構えだけはしておいて。みんな、大丈夫か?」


「はい!」


「大丈夫よ」


「了解だな〜」


 ミラの魔法使いとしての攻撃力を、最大限に生かすための陣形だった。


「よし、他に何かあるか?」


「……この際だから言っておくわ」


 口を開いたのはモネだ。


「さっきから思ってたけど、この子の装備貧弱過ぎるんじゃないの?」


 ミラより早く、ラグーンが反論する。


「それは仕方ないだろ。僕たちだって駆け出しの頃は装備にお金をかけられなかったじゃないか。僕はイリアが革鎧とはいえ、全身防具を揃えてるのに好感が持てるぐらいだよ」


「好感ですって?」


 モネの不穏な気配を察したマトウが割って入る。


「モネ、問題はそこじゃないんだな〜」


「……そうね。防具はまだいいとして、武器の一つも持ってないじゃない。杖が買えないなら、せめて自分の身を守る剣ぐらいは用意しなさいよ」


 モネの言い分を聞いてラグーンは思案した。


「うん……普通の魔法使いはモネみたいに杖を装備しているから、武器は携帯しないけど。杖がないなら、剣を持つのがいいかもな。たしかに、モネが言うことにも一理ある」


「あの……、ごめんなさい」


「ミラが謝ることないんだな〜。新人冒険者がいい装備を揃えられないのは当たり前なんだな〜。それより、分かってて黙ってたモネもモネなんだな〜」


「うっさい」


 確かに新人冒険者が装備を揃えられないのは、珍しいことでは無かった。

 そして、それが原因で彼らが命を落とすというのはよくある話だ。


「とは言っても、ここまで来てしまった。剣なら、帰った後に僕が見繕ってあげてもいいけど、今日の探索には無理だな。仕方ない、今日のところは出直すか?」


「そんな、私のためにそこまでしてもらったら悪いです」


「そうよ、身の程を知りなさい。あなたなんかこれで十分だわ」


 モネがスッと差し出した手には、一本の無骨な短剣が握られていた。


「わぁ、モネさん!」


「か、勘違いしないでよね。日を改めるなんて面倒だし、あなたに足を引っ張られたら嫌だからよ」


「すまない、モネ。そこまで気がつかなかったよ。正直、助かった」


「いいとこあるんだな〜」


「た、たまたまお古のが余ってただけよ。別にこの子のためじゃないから!」


 下手な照れ隠しは、誰の目にもバレバレだった。


「モネさん、ありがとう!」


 ミラは思わぬ親切に、心から感謝の言葉を伝えた。


「フン。どういたしまして」


「よし、これで本当に準備万端だな。モネ、マトウ、イリア、行くぞ」


 ラグーンを先頭に、四人は迷宮の入り口へと足を踏み入れる。


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