表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドーピング  作者: 銀槍
9/29

それぞれの

小雨が降る中、マリーは目的の場所を目指して走り続ける。

走り続けると、やがて一本の細い小道に出る。 

その小道を伝い、暫く走っていると、遠くの方に、小さな小屋が見える。

この小道は小屋まで続いているようだ


「あっあれだ」


ようやく見えた目的地に、走るスピードを上げるマリー

だが上空から黒い影が三つマリー達に迫る


その影は、空を飛ぶ鳥型の小さい魔獣で、攻撃力は全く大したことはないが、

その分動きが素早いため、攻撃を当てるのには、かなり苦労をする

少しやっかいな敵である。

目の前から急速に迫る三つの魔獣に、


「何、あれ」 と驚くマリー


魔獣とマリー達との距離がグングン縮まる、ぶつかる寸前なんとか体を捻って魔獣の攻撃をかわす。魔獣は、その勢いのまま飛び去り、一気にマリー達との距離が開く。魔獣の攻撃をかわしたマリーだが、バランスを崩しそうになるが、なんとか踏み留まる。

どうしようかと立ち止り、悩んでいると


「林の中へ入るんだ、あの魔獣ピーは、スピードはあるけど、方向転換は苦手だから」


「シン様」


突然の背中からの声に、シンが生きていると感じ喜ぶマリー

だが、シンの言葉を直ぐに思い出し、林の中へ駆け込むマリー達

林の木々に邪魔をされ、攻撃が出来ないピーは

マリー達の上空をグルグルと旋回する。

マリー達は道沿いに林の中を、ピーを警戒しつつ、小屋を目指して歩き続ける

だがその林の木々もついに途切れる

林と小屋との距離は約二十メートル程あり、その間を遮る物は何もない。


「僕が魔法で奴らをけん制するから、その隙に小屋へ走って」


マリーがシンの指示にコクリと頷くと、一気に林の中から走り出る

上空に待機をしていたピーがマリー達に襲いかかる


『火炎弾』


シンは魔法を発動した

空中に現れたボール大の炎の玉は、三匹のピー目指して飛んでゆく

放たれた三つの炎の内二つは、目的を果たしピーを黒こげにしてゆく

だが残るひとつは、火炎弾をかわし、二人に迫ってくる

シンが、また魔法を発動使用とするとその前に、

何処からかナイフが飛んできて、ピーを串刺しにする。


その様子に、少し驚いていると、いつの間にかメイド長が、

マリー達と小屋との間に立っていた。


「大丈夫でしたか二人とも」メイド長の問いかけに


「有難う御座いますメイド長、でもどうして此処に?」


「この地は魔獣の森に一番近いから、時々空から弱い魔獣が出るのです。あなたが心配だから後をコッソリつけて来て仕舞いました」


「だったら、どうして一緒に来てはくれなかったのですか」と、尋ねるマリーに、


両手を頬に当てながら、腰をクネクネして顔を若干赤くさせながら


「だってー、マリーちゃんの大事な人の一大事なんですもの、邪魔をしちゃ悪いと思ってついね。」


その言葉を聞いたマリーの真っ白な綺麗な顔がミルミル真っ赤になってゆく


更に言葉を続けるメイド長


「でも、おかげでいい絵が撮れたわ」


とニコニコしながら、懐から小型の記録型の魔道具を取り出す


「お気に入りは、やっぱりマリーちゃんが、シン様、しんじゃいやのセリフかしらね、おもわず目頭が熱くなっちゃった。」


その言葉を聴いたマリーは


「イヤー ヤメテー」と、 顔を真っ赤にしながら叫んでいた。


小屋の中に入ると、既に暖炉には火が付いており、テーブルの上には

温かいスープとパン、新しい服が置いてあった。

しかもベッドのシーツも新しく替えられていた。驚く二人にメイド長は、


「メイドですから」と、当然の様に言っていた。


新しい服を着るために、騎士達にやられ、傷付き血だらけになった服

を脱ぎだすシン

シンの姿を顔を両手で覆い、指の隙間からチラチラとシンの着替えをガン見

するマリーと、眼を下に伏せ、時々シンを見るメイド長


( 凄い、アレだけ傷めつけられたのに、傷がもう殆ど無くなっている )


心の中で驚きながら、冷静な顔を保つメイド長 

シンが着替え終わるのを待つと、


「マリー、そろそろ日が暮れます、帰りますよ」


「えっでもシン様が」と、ためらうマリーに


「これ以上私達の帰りが遅くなれば、旦那様がシン様に嫌がらせをする口実を与える事になります。」


その言葉に納得せざるおえないマリー、 しぶしぶ頷くと、小屋を後にする二人

帰り道の中、無言のまま歩き続ける二人 途中急にマリーの歩みが止まる。

 

「どうしました マリー」


メイド長に問われ、意を決したように、話始めるマリー


「メイド長、私に闘い方を教えてください」

 

「いきなりどうしたのマリー?」


「私、シン様の為に何も出来なかった、こんな想いはもう二度としたくありません。だから私、力が欲しいんです、シン様を守れるだけの力が」


「それを、彼が望まなくても?」と、問うメイド長に


「はい」 


真っすぐな瞳で、メイド長を見つめるマリー


「はーまったく、若いっていいわねー」と、若干羨むメイド長


「いいわ、鍛えてあげる。でも、やるからには最強を目指すわよ、私が貴方を最強のメイドにして上げる。」


「あのー、最強のメイドじゃなくて、闘い方を……」


マリーの話しが終わる前に、走り出すメイド長


「さあマリー早速鍛えますよ、本館までダッシュです」


「あっ はい」慌てて走り出すマリー


( 待ってて下さいシン様、私、絶対強くなりますから )


メイド長とマリーは揃って走り出した。




・・・・それから三日後・・・

ガイエス帝国とリムノス国との国境付近


リムノス国側の砦の中の一つの建物の中で、一人の青年将校が、

ある報告の為に扉の前まで来ると、大きく息を吸い込み、扉を開ける


「失礼します」


扉を開け中に入ると、目の前には豪華な造りの椅子と机が有り

その椅子の上には、十二歳位のダークエルフの女の子が座っていた。

青年将校は、机の前まで来ると、女の子に手に持っていた報告書を手渡す。

手渡された報告書を手に取り、一通り報告書を読み終えると

報告書を無造作に机の上に投げ、怒気を露わに


「あのうつけめ、良くも二年間も、この私の事を謀りおって」


その余りの迫力に、少したじろぐ青年将校


「しかし、この報告書に書かれている事は、本当の事なのでしょうか、自分には正直信じられません」


「ほう、どのような所が信じられぬと」 少女が問うと


「はい、生まれて直ぐに人の言葉を理解し、しかも二歳で魔法を使うなど正直信じられません」


「では、この報告書には偽りが書いてあると?」


「そうは申しませんが」


「では、この報告書に書かれている事が真実だとしたら、お前はどう思う」


「はっ、考えられるのは、加護持ちか、或いは 神の覚醒者 ではないかと」


「加護持ちは考えられぬな、生まれたばかりの子供に加護の力は制御出来ぬ、必ず一度は暴走するが、この子にはそのような様子は見受けられぬ。 神の覚醒者 にしても、二歳で覚醒するなど聞いた事が無い」

  

「では一体何なのですか、この黒髪の子供は」


「私にも判らぬ」


「………」黙り込む将校


少しの間、沈黙が部屋を支配し、やがて少女が口を開く


「この子については様子見で良かろう。あの愚か者には罰を与える、黒髪と言う概念に捕らわれ、正確な状況判断も出来ぬ者には、シュタインベルク家の当主代行など務まらぬ、辞めてもらう。」


少女の指示を受けた青年将校は、少女に敬礼をすると部屋を出て行く


一人きりになった部屋で少女は椅子から立ち上がり、

窓際に寄り、窓の外を見つめる。

遠くの方に、黒い魔獣の骨の残骸が窓から見える。

彼女は闘う時以外は、いつも少女の姿をしている。

それには理由がある。

いずれまた出会うかもしれない 彼 に、出会った頃の姿でいれば

直ぐに自分の事を見つけてくれると信じているからだ。


彼女は、魔獣の残骸を見詰めながら、

彼が別れ際に発した言葉を思い出していた。


( またいつか、必ず逢える )


彼女は彼の事を思い出し呟いた


「  黒髪の仮面の剣士様  」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ