兄登場
セレスが王都に旅立って2週間近くが過ぎ、セレスが居ない事に少し寂しく感じなずらも時は過ぎてゆく。シンの小屋では朝食を済ませて、3人で食後の紅茶を楽しみながら話し合っていた。
「セレスが王都に行って暫く経つけど、元気でやっているかな。」
「元気の無いセレスさんなんて、想像付きませんけどね。」
「もぐもぐ」
「そういえば、王都にはマリーの家族がいたけど、どうしているか知ってる?」
「いいえ、この家の機密保持の理由から手紙を書くのを禁止されてますから、もう13年間、家族の事は何も知りません。でも、かなりの額のお金を仕送りしていますから、生活する事には困らないでしょう。」
マリーは、魔獣の森で定期的に魔獣を狩っている。取れた魔獣の素材を売って、お金に換えて仕送りしている。
「マリーは帰りたいとは思わないの?」
「そうですね、小さい頃は何度も帰りたいと思いましたが、今は帰りたいとは思いません。こちらで過ごした時の方が長くなった事も有りますが、ここでの仕事は好きですから。」
「そうか……」
(マリーのお母さんやヒルダには、僕からマリーの事は話しているけど、マリーは家族の事は知らないんだよな。転移の魔法を使えば家族に会わせてあげられるけど、僕の力の事がバレる可能性もあるし、せめて家族の近況だけでも教えてあげたいけど……)
ユニコーンナイトがマリーの家族を助けた頃は、サフラン商会の関係者とみなされて色々と危険な事もあったが、商会が力を付けた最近では安全となっている。
「そういえば話は変わりますが、鍛冶室でまた新しい魔道具が開発されたそうですよ。」
「ふ―――ん、今度はどんな魔道具を作ったの?」
「なんでも、馬よりも速く走る馬要らずの馬車だそうですよ」
(それって、自動車のことなのかな)
「へ―――、馬が居なくても走る馬車なんて凄いね」
「でも黒水晶の魔石を沢山使うから、凄く高価なんだそうですよ」
「あんまり高いと、移動するときに魔獣に襲われて壊れでもしたら赤字だね。」
「そうですね、そう考えると、凄い発明でも余り使い道がありませんね。」
「さて、そろそろパンを売りにいかないとお客様が待っているからね。」
シンの作っているパンは、迷宮から取れる小麦粉、バター、牛乳、卵と自家製の吟味された酵母を使い、この世界のパサパサのパンとは違い、しっとりフワフワに仕上がっている。普通の小さい丸パンが銅貨二枚程度で買えるのに対し、シンの作る丸パンは銀貨1枚はするが、他にはない美味しさの為、富裕層に人気が有り、もし正規にパンの値段を付けるとしたら、迷宮産の材料を使い、更に迷宮からの距離を考えると丸パン1個の値段は、銀貨5枚でも安いくらいだろう。それとパンを焼いて売る日は、大体4日位の間隔で焼いて売っている。儲け過ぎて他のパン屋に迷惑を掛けないためだ。シンとしては、此処で不自由の無い生活が出来れば良い程度に稼げればいいので、それくらいが丁度良いのだ。ちなみに雨の日は休みになる。
そして今日は、街へパンを売りに行く日になっている。
食器を片付けて、釜戸の火を消して外へ出る。マリーも籠一杯のパンを持って小屋を出る。
パンを載せた台車を引いて、林の中の小道を通る。日々紅葉で色着く木々を見ながら、2人で林を進む。
幸運な事に今日は飛行魔獣に襲われずに林を抜け出れた。今のシンとマリーの実力からして、幸運なのは魔獣の方なのだが。
館の近くでマリーと別れて、薬草室へ向かう。セレスが王都へ行ってから、シンが犬先生夫妻の所へ焼いたパンを持って行く係りになっている。パン籠を持って薬草室の扉を開けると、お通夜みたいに暗い顔をした犬先生が目の前で立っていた。最初にセレスが王都に行って初めてパンを此処に届けた日に、同じように行き成り暗い顔をして立っていた犬先生を見て、思わず持っていたパン籠を落としてしまった。それくらい迫力のある暗い顔だったのだ。
「おう…シン…いつもすまねえ…」
何時元気だった犬先生がセレスが王都へ行ってから、すっかり抜け殻になってしまった。
「犬先生、元気を出して下さい。セレスも王都で頑張っているんだから。」
「王都だから心配なんだ。王都は遊ぶ場所が多い。セレスが変な男に引っ掛かるかもしれんと思うと、心配で心配で夜も眠れん。」
「もしかして、今度の休みに彼氏を連れてきたりし…」
「言うな―――――」
シンが言い終わる前に犬先生がシンの首を両手で締め上げる。
「あの子に彼氏はまだ早い、連れてきたらぶっ殺してやる。」
そう言いつつ、シンの首を締めあげる。
(ぐるじぃ――、冗談のつもりで言ったのに、彼氏が来る前に僕の命がヤバい)
締め上げる犬先生の両手を自分の両手で掴み、ゆっくりと引き離しながら、
「先生落ち着いて冗談ですって、そんなに心配なら時々会いに行けば良いでしょう。」
「おお、済まねえ、お前の顔が彼氏に見えちまって、しかしアイツに会いに行くか…」
「鍛冶室で馬車より速く走る魔道具が開発されたそうですよ、鍛冶室長に借りたらどうですか」
「本当か、それじゃ早速借りてくるわ」
生気を取り戻し、魔道具を借りに薬草室を出ると、風の様な速さで鍛冶室に走って行った。
(鍛冶室長が犬先生に貸すとは到底思えないけど、それに自分で走った方が馬より早く着くんじゃね)
犬先生の走りを見て思うシン
薬草室を出て、館の門を抜けて街の街道に入る。20分程台車を引いて何時もパンを売っている商店街の大通りの一番端っこの空き地へ台車を止める。既にパンを買いたい人が15人以上並んで待っていた。大体並ぶ人は同じで、シンの常連さんになっている。街路の反対側で、少し痩せた顔の青白い20歳位の男性を挟んで2人の男の騎士がこちらを見ているのが、いつもとは違う事だった。
「みなさん、お待たせしました。」
「おう、待ったぞ」
「良い匂い、早く売って頂戴」
そんな言葉を聴きながら、被せてあった台車の布を取ると、籠一杯に入った焼き立てのパンが辺りに香ばしい匂いを立てながら、お客の前に現れる。
「お待たせしました、では一番前の方からどうぞ」
「食パン一斤と丸パン5個頂戴」
「はい食パン一斤と丸パン5個ですね、全部で銀貨8枚になります。」
お客が持ってきた籠にパンを移しながら、パンの値段を伝える。
お客は銀貨8枚を払うと、早速籠の中から丸パン1個を取り出して美味しそうに食べながら、歩いて帰って行った。大抵の人が金貨1枚近くのパンを買い、大抵の人が、パンを齧りながら歩いて帰って行った。それだけシンのパンが待ち遠しかったようだ。どんどんパンが捌けてゆき、お客も居なくなり、台車の中のパンも数個残すのみとなった。
辺りに人が居なくなってから、街路の反対側で見ていた3人の男が街路を横切って此方にやって来た。
そして痩せこけた白衣を着た男性が、
「僕達にもパンを売ってくれないか」
「はい、もうこれだけしか残っていませんが、どれにしますか」
「それじゃあ、丸パンを3個貰おうかな」
「有難う御座います、丸パンが3個ですね、銀貨3枚になります」
パンを3人の男に渡して、代わりに銀貨3枚を貰う。その場で男達は丸パンを齧る。騎士の2人組は「うまい、こんなパンは初めて食べた」と驚いているが、痩せた真ん中の男は、
「うん、美味い、流石は迷宮産の材料を使っているね。銀貨3枚出しても安いくらいだね。ユニコーンナイト君。」
シンの顔が一瞬で険しくなり、身体を身構えるが、2人の騎士も、
「何、こいつが王都最強と言われるユニコーンナイトだと」
驚いてシンを見ている。
「何の事ですか」
「誤魔化さなくてもいいよ、君の事は 知識の神 から聞いているから。」
「知識の神?」
「ああ、君が知らないのは無理無いね。君が5歳の頃、治癒の神の加護を受けたアメリアって子の身体を治癒の神に頼み込んで態々借りて、君の事を調べようとした神様だよ。」
「あの痴女か」
「痴女とは酷いね、君の事はその神様に聞いたのさ」
「その痴女の知り合いが、僕に何の用何です」
「つれないなあ、僕は君のお兄さんなのに」
「は……今なんて…兄―――だと―――」
「そう、僕は君のお兄さんなんだよね。腹違いだけど。」
「証拠はあるのか。」
「証拠と言われても困るけど、僕も君と同じで、父親アイゼンから失敗作の烙印を押された子供の1人だからね。」
「あの男の名前はアイゼンて言うのか。」
「父親とは呼ばないんだね、確かに僕もあの男を父親とは呼びたくないね。僕は生まれつき身体が弱くて、父親から5歳の時に処分されそうになったのだけれど、知識の神の加護によって処分を免れて王都の魔道科学研究所に送られて、そこの研究員になってたんだ。今ではそこの所長をやっている。」
「それを信じろと」
「確かに、信じて貰わないと困るんだけどね」
「あんたの目的は何?」
「君の力がどれ位の物か、僕自身が確かめたくてね。」
「どうやって確かめる」
「それはこのドーピ……」
そう言って懐から妖しい液体の入った瓶を出そうとしたら、遠くの方から、
「シン―――――、ちょっと聴いてくれ―――――」
犬先生が信じられない速さでやって来た。そしてシンの肩を両手で掴んで揺らしながら、
「シン聴いてくれ、おのクソ鍛冶の野郎、馬鹿には大事な魔道具は貸せないんだとよ――、娘の一大事なのによ―――、あの屑が」
「ちょっと犬先生落ち着いてください。」
「これが落ち着いてって…あれ、お前、もしかしてロイか?」
真ん中の男を見詰めながら犬先生が話しかける。
「お久しぶりです犬先生、10年ぶりですか」
「やっぱりロイか、相変わらず青白い顔してんなあ、お前」
「犬先生、この人知り合いですか」
犬先生は気まずそうに指で頬を掻いて」
「あ―――なんだ、その、お前の腹違いの兄貴だって……そう言えばロイ、お前今、魔道科学研究所の所長をやってたよな」
「そうですけど」
「だったら、俺に魔道具を作ってくれ」
「どんな魔道具を作ればいいんですか」
「空を飛ぶくらい速く走る魔道具を作ってくれ、出来るだけ早く」
「有り合わせの部品を使えば早く出来ますけど、お代はきっちり頂きますよ」
「ああ、幾ら掛かっても構わない、宜しく頼む」
「判りました。帰ったら早速取りかかります」
「フフフ、これで鍛冶の屑にひと泡ふかせてやる。」
嬉しそうにスキップしながら犬先生は帰って行った。
(なんか、魔道具の目的が替わって無いか、セレスに逢う為の魔道具なのに、鍛冶室長を見返すのに切り替わってる)
「さあ、改めて挨拶をしようか、僕はロイ・フォン・シュタインベルク、そして左に居る騎士がガチホモ、右に居る騎士がドエムスキーだ、2人とも彼に挨拶して、ちなみに彼がユニコーンナイトなのは此処だけの秘密にしてくれ」
角刈りにした銀色の髪に、少し角ばっているが整った顔、中肉中背の体格の騎士がロイより一歩前へ出て、シンに向けて右手をさしだし、
「ガチホモだ、ロイ様の護衛をやっている、よろしく」
シンも右手を差し出して、ガチホモと握手する。
「シンです、よろしく」
握手した瞬間、ガチホモの顔が若干赤みがさし、鼻息が荒くなる。
(握手した手だけで判る。鍛え抜かれた肉体、幼さの残る整った顔、ああ、たまらん、いやダメだ、俺にはロイ様という心に決めた方が…)
「あの――、いい加減手を離して貰えます?」
「ああ、済まない」握っていた右手をお互い離す。
(何か握手した瞬間、レスさんと同じ感覚がしたけど、どうしてだろう)
今度はロイの右側に居たスキンヘッドにゴリラみたいにゴツイ顔、無精髭を生やし、短い手足に体中を傷だらけにした歴戦の勇士風の男が一歩前へ出て、シンと握手する。
「初めまして、ドエムスキーだ」
「シンです」
(貴殿がユニコーンナイトか、ワシがまだ戦っていない強い魔獣とも戦った事もあるんだろう、全くもって羨ましい限りだ)
ドエムスキーとも挨拶を終えて、パンも残り2個となったので、今日の販売を終わりにして並べてあった空になった籠を重ねて一つにして台車に載せる。シンが台車を引くと、3人も後ろから付いてくる。
「闘う場所は、何処か良いかな」
「魔獣の森の入り口で良いんじゃないかな、あそこは人が寄り付かないから丁度いいでしょ、でも、身体が弱くて戦闘なんて出来るの?」
ロイは、懐から妖しげな液体の入った瓶を取り出して、
「大丈夫、心配は要らないよ、僕にはこのドーピング1号が有るからね、これの説明の前に、疲れたからその台車の上に座らせてくれないかな?」
「別に構わないよ」
「有難う、さっきから疲れて仕方がなかったんだ」
台車の後ろの開いている場所にシンの向きとは反対に腰を下ろし、
「ふ―――、この薬はね、誰でも超人になれる薬なのさ。」
「そんな誰でも超人になれる薬なんて作れるの?」
「現に出来ちゃったんだよね――これが、でも副作用はどうしようも出来なかったけど」
「副作用?」
「薬の効果中は、超人の力を得るけど、その間、知能が赤ちゃん並みに低下するんだよね」
「それじゃあ戦闘なんて無理じゃん」
「でも、知識の神の加護を受けた僕なら知能の低下を抑える事が出来る。」
「なるほど」
ゴロゴロと台車は進み館と魔獣の森への道への分かれ道に差し掛かる。
「ドエムスキー、済まないが、館まで行って鍛冶室長に僕が来た事を伝えてくれないか。あの人、僕をライバル視しているから、挨拶しないとうるさいから。」
「判りました、挨拶が終わり次第、私も魔獣の森へ向かいます。」
ドエムスキーと別れて魔獣の森へ台車は進み、30分後、漸く魔獣の森の入り口に到着した。台車を森の入り口に止めて、3人で魔獣の森の入り口から少しだけ奥へ進み、少し開けた場所を見つけて、此処を戦闘の場所に決める。少しだけ地面がぬかるんでいる為、ロイは小高い岩の上に立つ。シンとの距離は15メートル程離れている。
「さて、始めようか、準備は良いかい」
「何時でも良いぞ」
ロイは懐からドーピング1号を取り出し、一気に飲む。1分後、薬の効果が直ぐに現れる。胸の筋肉が盛り上がり、上着を弾き飛ばしても筋肉は膨張を続け、下半身も太ももから下の衣服を弾き飛ばし、なおも筋肉は成長を続ける。2分くらいの時間を掛けて漸く筋肉の成長が止まる。ロイはボディビルダーのスタイルに更にもう二人分の筋肉を貼り付けた格好の姿になっている。しかも血色も良くなっているのか、顔がテカテカと輝いている。
余りの変貌にシンが驚いていると、ロイが、右手を斜め左上に上げて、
「あれは誰だ」
右手を下ろして、今度は左手を斜め右上に上げて、
「あれは誰だ」
左手を下ろして、右手でグーを作り、親指だけ立てて自分に向けて、
「俺だ――――――――」
「何あれ?」状況が判らないシンを余所に、ロイの演説はまだ続く。
「筋肉を身に纏い、伝説の戦士、今此処に俺参上、お前の力、見せて貰いマッスル、かかってこいや―――」
ファイティングポーズをシンに向けるロイ
「それじゃ遠慮無く」
『火炎弾』魔法を発動してロイに叩きつけるシンだったが、火炎弾がロイに当たる直前、
「ぺい」
右手の甲だけで火炎弾を弾き、火炎弾のコースを変える。弾かれた火炎弾はロイの右斜め後ろに向って進み、木に当たり爆発した。
ロイはシンを指さし、
「貴様、魔法なんか使うんじゃない、戦いと言ったら肉弾戦と決まっているだろう。その性根を叩き直してやる。いくぞ、トウ」
その場で10メートル程高くジャンプ、シンの傍までジャンプで行くつもりが、寸分変らず同じ場所へ着地する。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
岩の上から降りて、トコトコと歩いてシンの側へ向うロイ。シンの目の前で止まり、
「待たせたな、行くぞシン」
右ストレートを高速で繰り出すロイ、反射的にシンは身体を捻って外すが、拳圧が尋常でない事に気付く。更に今度は左ストレートを繰り出し、それを高速で繰り返す。
「わははははは、反撃してみろや、シン」
「ちょっと待って、体勢を直させて」
「甘い、戦闘に待ったなど無いわ―――」
ぬかるんだ足場で、シンの体勢が崩れると、そこをすかさず右ストレートを叩きこむロイ
「もらった――――」
シンに拳を叩きこむ瞬間、シンの姿が消えて、ロイの右ストレートは空振りし、ロイの体勢が崩れる。ガラ空きのロイの右脇腹にシンの拳が炸裂する。くの字に身体が曲がり、ロイが吹き飛ぶ。シンは短距離転移でロイの右側に移動して攻撃したのだ。右脇腹を押さえて蹲るロイ、そんなロイにシンは追撃しようとするが、
「ちょっと待って」
そんなロイの言葉を無視して、シンは再度ロイの右脇腹へ拳を叩きこむ
「ほげっ」
ゴロゴロと右脇腹を押えて、痛みにのたうちまわるロイが、
「待てって言っただろう、何で攻撃すんだ」
「えっ、だって戦闘に待ったは無いって言ったから」
「トイレに行きたくなったんだよ、トイレは別口なんだよ」
「そうなの、ゴメン」
「まったく近頃の若い者は…」
ブツブツ言いながら、草木の生えた処へ行き、隠れるロイ
何か嘘臭いので、索敵の魔法で中を窺っていたら、ただ座って体力を回復しているロイの姿が見えた。
5分後、ロイが出て来たので、3メーターの距離で向かい合い、お互い戦闘態勢をとる。先に動いたのはロイだ。シンに向って右拳を振り上げた瞬間、ロイの動きが止まる。動きが止まったロイから空気の抜ける様な、プシュ―――、とした音がすると、筋肉は縮み、元の青白いロイに戻って行く。完全に元のロイに戻ったが、ロイはその場で蹲り、足を両手で組んで丸くなり、そのまま地面に横に倒れてしまった。
何かブツブツ言っているので、近付いてみると、
「何が伝説の戦士だ、何処の伝説なんだよ馬鹿じゃねえの、ああ、もう死にたい」
どうやら知能が回復して、先程の行動に自己嫌悪している様だ。
「何が見せて貰いマッスルだ、本当にアホだ」
「あの、ロイさん、大丈夫ですか」
話し掛けても全く反応しないロイに、ガチホモがロイを担ぎあげて、そのまま森を出る。
台車にロイを乗せて、森を離れてもロイはまだブツブツ言っていた。
「何が、あれは誰だ、俺だ―――だ、ああ、僕は貝になりたい」




