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ドーピング  作者: 銀槍
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赤耳の少女

赤耳の少女ヒルダは母親との二人暮らしだ。ヒルダには姉が一人居るが、姉は二人の生活を支える為に住み込みで出稼ぎに出ている。

ヒルダの犬耳と赤い髪の毛と尻尾は父親譲りだ。その父親は彼女が幼い頃に亡くなっている。それ故、彼女の家はとても貧しい

今日も彼女は少しでもお金を稼ぐために王都の外に生えている薬草を採取しに来ていた


「うんしょ、うんしょ」


ナイフも買えないほど貧乏なので素手で薬草を引っこ抜くヒルダ


力一杯薬草を引っ張ると、薬草は地面から根っこごと抜けて、抜いた勢いのままに、後ろに尻もちをつくヒルダ。


「ふうー、1時間探してやっとこれだけか」溜息をつくヒルダ


王都周辺では、怪我の治療薬の材料となる薬草が自生しており、冒険者ギルドか商業ギルドに持っていけば買い取ってくれる。


日がまだ高いので、辺りを見回し、もう少し薬草を探そうとするヒルダだったが、木々の隙間から風に乗って漂ってくる血の匂いに気付くと、薬草を握りしめ、血の匂いのする反対側へ向って走り出した。


王都周辺でも魔獣は生息しており、血の匂いは魔獣が狩りでもして獲物を捕食したのだろう。

普通種より肉体能力が優れている半獣人のヒルダは、空気中の僅かな血の匂いを感じ取り、危険を回避する為に素早くその場を離れる。


暫く走り続けて王都の壁が見える場所まで移動すると、安心したのか走るのを止める。

軽く肩で息をしながら、今日は危険だからと思い、薬草を換金する為に冒険者ギルドに向う。


ギルドに向う途中、王都の門番の兵士がヒルダに話しかけてきた。


「やあヒルダ、今日の調子はどうだった」


ヒルダは首を横に振りながら


「全然ダメ、これじゃあ銀貨1枚にもならないよ」


そう言って、右手に握りしめている薬草を兵士に見せる。


「まあ、そんな日もあるさ、これが魔力草だったら金貨7枚は確実だっただろうけどな」


「魔力草なんてここら辺には生えてないでしょ、もしあったら根こそぎ採ってやるのに」

心底悔しがるヒルダ


「俺だって同じ気持ちだよ、金貨7枚と言えば俺の給料と同じ金額だからな」


お互いに見つめあい、はぁ~ と溜息をつく二人


ヒルダは門番の兵士と別れて開かれた王都の門を潜る。


本来ならば王都の住人の証の市民カードを見せなければ中には入れてくれないのだが、ほぼ毎日薬草を採りに王都の外に出ているヒルダは、いつの間にか門番の兵士達と親しくなり、顔パスで通してくれている。


王都の門を抜け冒険者ギルドに行く為に、駆け足で大通りを走り続けていると、一人の少年と目が合う


(わあー、黒い髪と黒い眼なんて珍しい、見た事無いや)


走りながら黒い瞳を見続けていると、なんだか吸いこまれそうになって胸がドキドキしている自分に気付いて、慌てて眼を逸らし、少年の脇を掛け抜ける。


そのまま2分程走り続けると、冒険者ギルドの建物が見える。

ギルドのドアを開け、何時もの様に買取の受付へ向う。

受付には結婚を機に冒険者を辞めた五十代の厳つい顔をしたオヤジが暇そうに ぼー としていたが、ヒルダが来たのに気が付くと、


「やー、ヒルダ今日はどうだった?」


「今日は全然ダメだったよ、ギリアムおじちゃん、はい、これ」

そう言って受付台に採って来た薬草を乗せる。


「確かに今日はすこし少ないな、銅貨9枚って所だな」


「えー、切の良い所で銀貨1枚にしてよ、お願いおじちゃん」


「ダメダメ、ギルドは公平が基本なんだから、人によって贔屓なんて出来ないんだよ」


「ぶー、そんなだからベルお姉ちゃんに恋人が出来たのにも気が付かないんだよ」

ベルとはギリアムの娘で今年で十四歳になる。


「なんだと」

穏やかな雰囲気が突然、勇猛な冒険者のそれに代わるギリアム


「馬鹿を言っちゃーいけないなヒルダちゃん。あの娘に近づく男はあらかた片づけた筈だ」


「でも、ベルお姉ちゃんびじんだしねー」


「誰だ、一体誰だ、教えてくれ頼む」

手をついて必死にヒルダに頼み込むギリアム


「薬草代込みで銀貨3枚で教えてあげる」


「高い、銀貨2枚で頼む」


「今頃、お姉ちゃんとその人が会っているか……

ヒルダが言い終わる前に


「判った、判った、銀貨3枚払うから直ぐに教えてくれ」

ギリアムは懐から銀貨3枚を出し、ヒルダに渡す。


「ベルお姉ちゃんの恋人さんはサフラン商会の新入社員さんです」


ヒルダから恋人の情報を聴くと、何処からか2メートルはあるバスターソードを取り出して、ギルドの扉を蹴り破り、


「許さん、許さんぞ――――――」と叫びながらギルド会館から飛び出していく。


(ごめんねベルお姉ちゃん)


心の中で呟きながら銀貨3枚を懐に仕舞い、冒険者ギルドを後にするヒルダ。


家に帰る途中に大通りを通ると、美味しそうな匂いが漂ってくる。なまじ鼻が良いヒルダはその匂いに抗う事が出来ず、ふらふらと匂いの元まで引き寄せられてゆく。

引き寄せられた先は、肉の串焼きを売っている屋台で、店主がせっせと肉を焼いている


(銀貨3枚も有るんだから、少しくらい買ってもいいよね)


「おばさん、肉串5本ちょうだい」


「あいよ、全部で銀貨1枚だよ」


大きな木の葉で作られた袋に肉串を5本入れられた物を受け取ると、代わりに銀貨1枚を渡す。袋から肉串を一本取り出すと、口を大きく開けてかぶりつく。


「久しぶりのお肉の味だ――、おいしい―――、お母さんにもはやく食べさせてあげたい」

母の事を想うと、帰る速度が上がる。


ヒルダの家は王都の中層区に在り、2階建てでそこそこ大きい。

家の扉を開け、この時間は母が裁縫の仕事をしているので、仕事をしている居間へと向う。

居間の入り口の縁に片手を掛け、


「お母さんただ……


居間には苦悶の表情で汗をかき、荒い息を吐き、倒れている母の姿があった。


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