ニコリと笑う
ガイド本に従い豊富な商品が揃っている中級区の商店街に向う歩道を景色を堪能しながら歩いていると、色々な人種の人々が通り過ぎてゆくのが目に入る。犬耳や猫耳の獣人やハーフ、エルフやドワーフの姿も見受けられ服装も様々だ。人生勝ち組とハッキリ分かる程の豪華な服装をした者、鎧や盾を装備した冒険者、ボロボロの服を着て明日の生活にも困りそうな者まで色々だ。
辺りを忙しく見回しながら、田舎者丸出しで王都を歩くシン
そんな彼の瞳に一人の少女が映り、歩く足が止まる
赤みを帯びた髪に頭の上に付いた犬耳、シンにとって何故か親しみを感じる端正な顔、そして左頬に縦に走る傷、そんな彼女の姿から目が離せないシン
(どうして、こんなにこの子が気になるのだろう)
良く見ると少女は右手に薬草を持ち、粗末な服を着てボロボロの壊れかけた靴を履いて駆け足で駆けている。一瞬だけ少女とシンの視線が合う、だが少女の方が視線を逸らし、やがて人の群れの中に消えてゆく
少女の姿が見えなくなるまで彼女を見続けるシン
(考えても仕方ないか)
考える事を止め再び歩き出すシン
王都だけあって中級区の商店街のお店の多さにシンは圧倒される
数ある商店の中でも一回り大きい店を選び足を進める
扉を潜ると左側には様々な武器や防具が並び、右側には冒険に必要な道具、生活に必要な物ががズラリと並び、見回すと目的の衣服は奥の方にあるのが見える
奥に進み、下着が置いてある場所の前に立ち、パンツを物色する
大人用のパンツばかりが多くて子供用のパンツが中々見つからず、店員さんに尋ねようと辺りを見回すと、一人の男の人が腰をクネクネさせながらシンに近付いて来た
ほんのり顔に薄化粧をして女っぽいブラウスを着て、ピンク色のズボンを穿いた20歳前後の男の人がシンに話しかけてきた
「あら~カワイコちゃんねん~、何かお買いものかしらん」
「あのー失礼ですが、あなたは?」
「私の名前はレス、このサフラン商会の一人娘よん」何故か左目をウィンクしながら答える
一瞬、身体がゾクッとしたシンだったが
「間違っていたらゴメンなさい、あなた男の人ですよね」
「そう、確かにこの身体は男の子、でも、でも、でも心は女の子、汚れを知らないハートはピュアピュアに光り輝く乙女なのよー」
自分の身体を両手で抱き締めながら、悲劇のヒロインの如く振舞うレス
(あーうぜえ、そんな事はどうでも良いんだけど)
「そうでしたか、気が付かないでどうもすいませんでしたレスさん」
「ううん、いいのよボク、それよりどんな御用でウチに来たのかしらん」
「下着と服が欲しいのですが、何処に在るのか分からなくて」
「子供用の服類はこちらに在るわよん」 レスの後ろを付いて行くシン
レスに案内され建物の更に奥へと進み、子供用の衣服が置かれている場所まで来るとレスが
「私があなたに似合う下着を選んであげるわね、所であなたのお名前は」
「はい、シンといいます、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくねシンちゃん、こんなパンツはどおかしらん?」
レスが選んだパンツは色が赤色で、お尻はティバック、股間にお花の飾りが付いている、それはそれはある意味素晴らしい物でした。技術的な意味で
(五歳児にこんなパンツを履かせて何がしたいんだこの人は)
「いえ僕はパンツ派よりトランクス派なのでトランクスが良いです」
やんわりと断る
「だったらこんなのはどう?」
取り出したのは黄色のトランクスで股間の部分に 極上&芳醇とプリントされている
(何で派手な色ばかり選ぶんだ、しかもこの文字何なの)
「もっと大人しい色のトランクスを選びたいんですが」
「それじゃこういうのはどお?」
次に選んだのは青色のトランクスで股間の部分に 短小&不能とプリントされている
(ある意味大人しいけど、だからこんな文字はいらないだろ、冗談で選んでるのか)
「出来れば前にプリントされてないトランクスを下さい」
「じゃあ、これでどう?」
出された品は股間に何もプリントされていないトランクス
(やれば出来るじゃないですか、コレですよコレ、僕が欲しかった物は・・・・・・・と思っていた時もありました、やっぱダメだこの人)
トランクスを良く見ると、お尻の部分にダーツの様な的が描かれており、その的の上には大きな文字でカモーンと書かれている
(これを穿いて僕にどうしろと、この人とは感性が違いすぎるなんとかしなくては)
トランクスを見るふりをしてレスを観察しているとある事に気付くシン
「あのーレスさん、顎の下に剃り残しが有りますよ」
シンのその言葉を聞いた途端
「嘘、ヤダ、恥ずかしいキャー」
顔を両手で押さえてお店の奥へ引っ込んで行くレス
(見てるこっちが恥ずかしいわ、取り合えずこれでやっと選べる)
無難に無地のトランクスとシャツ、布の上着とズボン、皮の靴と財布、フード付きのマント、それらを入れる鞄を選んで受付に持っていく。受付の人はまともな男の人の様だ、受付の台の上に品物を置いて
「これで幾らになりますか」
「全部で金貨2枚になります」
ポケットから金貨2枚を出して支払い、下着等を鞄に入れ鞄を肩から担ぐ、鞄は肩から担ぐタイプで両手が使える物を選んだ
そして服の中から魔道具を取り出し
「この魔道具を腰に装備したいのですが、何かいい物はありませんか」
受付の男は魔道具を受け取り、魔道具を見つめて暫く考えていると
「銀貨5枚程掛りますが、専用に作った方がよいでしょう」
「それでお願いします」銀貨5枚を追加で支払う
「剣などを腰に下げるベルトを改造して作りますのでそんなに時間は掛りませんが、それでも作るには一日ほど時間が必要ですが宜しいでしょうか」
「構いません」
「では、明日の午後に出来あがりますので明日の午後以降に品物を取りにこの店に来てください」
店員と約束し店を出て宿に帰り、老婆に鍵を貰い部屋へと戻る
早速買ったばかりの服に着替えてベッドに横になる
(マリーの家族にお金を渡したくても居場所が分からないし、それにお金を渡した事をマリーが知ってしまったらマリーの性格からしたら絶対にお金を返そうとするだろうし、これからどうするか)
コンコンと部屋の扉がノックされ老婆が顔を出し
「夕食の時間じゃよ、早く降りてきなさい」
老婆に言われたので部屋を出て一階に在る食堂に行き、隅の方にあるテーブルの椅子に座る
食堂には他にも数人食事をしている、中には鎧を着ている者も居るがきっと冒険者だろう
周りの様子を観察していると老婆が食事を持ってきた。
魚の香草焼きと野菜のスープそして黒いパンだ
「有難う御座いますお姉さん」
(最初にお姉さんと言ってしまった為に今更お婆さんとは言えないよな。これ何の羞恥プレイ)
実際お姉さんと言われた老婆は少し嬉しそうだったからいいかと考えていたシンだったが一人の鎧を着たオヤジが
「このババアがお姉さんだと? ガキお前の眼は腐ってるのか、それとも死んでいるのか、俺の眼にはどう見ても生きて動いているのが不思議なくらいなクソババアだぞ」
シンをからかうオヤジに表情を変えない老婆が厨房に行きオヤジの食事を持ってくるが、スープを持つ左手がプルプルと震えてスープの中身が殆ど床に零れてしまう
オヤジの所に着く頃にはお皿の中にはスープが殆ど残ってはいなかった。
「はい、おまちどおさま」 料理をオヤジの前に並べるお婆さん
「ぶざけるなババア、スープが入ってねえだろうが、変えてこい」
「すいませんね、なんせ年をとってるもんでね、嫌なこった」
オヤジは立ち上がり、老婆に右パンチを繰り出すが、老婆は左腕でそれを受け流し右手でオヤジに目潰しをし、オヤジが怯んだ所を金的、更に痛さでしゃがんだところを脳天かかと落としを喰らわして床に沈める。
その光景に周りは静まり返る。静かになった食堂で一人の男が、
「お姉さんこっちにビールを下さい」と老婆に向って注文するとまた別の人が
「お姉さんこっちにもビールひとつ」と注文する
次の日からこの宿では老婆の事をお姉さんと呼ぶのが当たり前となるのであった。
翌日、サフラン商会でベルトを受け取り腰にあるケースに魔道具を入れて装備するシン
流石専用に作られただけあって魔道具にミラクルフィット、満足するシン
だがそんなシンの前に例のアイツが腰をくねらせやってきた
「あらんシンちゃんゴキゲンねん、よっぽど其れが気にいったみたいねん」
「はい、とても気に入りました。それと少し訊きたい事があるのですが」
「あらん何かしら」
「高価だけど高価に見えない物ってありますか?」
「中々難しい質問ねん、それならこんなのはどうかしら」
シンが案内されたのは、宝石等が入った貴金属が並べてあるガラスケースで、レスはその中の一つを指さし
「この黒水晶の指輪は金貨200枚、こっちの一回り大きい黒水晶のペンダントが金貨1500枚になるわ」
「こんなガラス玉程の大きさの指輪が金貨200枚ですか」
「宝石的には価値は低いけど、黒水晶が持つ能力で値段が高くなるのよ。黒水晶は魔石の一種で身に付けた者の魔力を蓄える性質があって、迷宮に潜る者にとっては必需品だから価値が高くなるのねん」
「何で迷宮で必需品なんですか?」
「迷宮では転移魔法が必要で、転移魔法の発動コストは一人魔力1000も必要なの、だから迷宮に潜る者のレベルは最低でも100以上、ベテランの多くは魔力の必要性を痛いほど知っているから黒水晶の値段も高くなり、しかも黒水晶は迷宮の30階層以上じゃないと見つからないし、しかも奥へ行くほど黒水晶の魔力を蓄える能力が高い物が見つかるの、ちなみに指輪の方は迷宮の30階層で採れた物で魔力を100貯める事が出来て、ペンダントの方は40階層から取れた物で魔力は1000蓄える事ができるわん。ちなみに売れ筋はペンダントの方ねん」
「迷宮に出る魔獣って魔獣の森と比べて強いですか?」
「迷宮に出る魔獣も魔獣の森の魔獣も強さは一緒ぐらいじゃないかしらって、前に冒険者のパーティが言ってたけれど、何でそんな事を聴くの?」
「もし僕が黒水晶を持ってきたら宝石に加工して貰えますか」
「シンちゃん馬鹿な事は考えちゃダメよ」
心配するレスにシンはニコリと笑顔で懐からカードを取り出しカードに魔力を通しレスにカードを見せる
カードを覗き込むレスの顔が驚きに変わる
「出身地魔獣の森ですってーーーーーーーーーー」
驚くレスを見てシンは再びニコリと笑う




