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ドーピング  作者: 銀槍
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紋章

「スイマセン、ごめんなさい、誠に申し訳ない、アイムソーリー、ヒゲソーリー」


揺れる馬車の中でダールトン伯爵に平謝りするシン


「いや、君が普通種の五歳児だと、すっかり忘れていたからね」

 

今馬車が向っているのは商業ギルドだ、商業ギルドは迷宮の直ぐ側に在り、冒険者が迷宮から持ち帰った品を買い取り、買い取った品を商人に卸すシステムになっている

商人が直接冒険者と取引しても別に構わないが、商業ギルドや冒険者ギルドに目を付けられ、この国では商売が出来なくなる。この国にとって迷宮から出る品は大切な資源だからだ。


「本当にどうもすいません、ところで王都に関する地図は何処で売られていますか」


「それなら商業ギルドに王都のガイド本が置いてあるから、それを買うといい」


「わかりました、有難う御座います」


王都の高級区を抜け、王都の中心部へ向う

高級区と商業ギルドの在る場所の距離はかなり近い

リムノスの王都は城壁の内側から生活の貧しい者が住む下級区、

商人や騎士、冒険者の多くが住む中級区、貴族や王族が住む高級区に分かれている


馬車は十分程で商業ギルドが有る建物の前に到着する

商業ギルドは三階建てで、一階は迷宮から出た品を取引する販売、買取所、

二階は商人の登録や書類の手続きをする事務所

三階はギルドの職員が住む住居で、職員が商業ギルドに住む事によってギルドは24時間、品物の販売、買取が可能になっている


馬車を降り、ダールトン伯爵と共に商業ギルドの扉を潜る

建物の一階には多くの商人が販売所の受付の前に並び、迷宮から出た品物を買うために並んでいる

二人は一階脇にある二階へと続く階段を上り事務所へと向かう

二階にある事務所は一階の販売所と比べて人が居らず、受付の男性が暇そうにしている

ダールトンが受付に向い、受付の男性の前に立つと


「これは、これはダールトン様、本日はどの様な用件で参られたのでしょうか」


「ギルド長には話は通してあるが、今日はこの少年の商人への登録をしに来たのだが」


「ギルド長から話は承っています」


受付の男性は伯爵の脇に立つシンを見ると、登録するのが黒髪だとは思わなかったのか

一瞬変な顔をするが直ぐに普通に戻り


「ではシン様、こちらの紙にお名前と出身地、年齢を記入して下さい」


紙を受付の前に出されるが


(紙がみえねー)


受付の台が大人用の高さに有る為、目線が受付の台まで届かない

受付の男性が身を乗り出し、シンの手に紙とペンを渡す

床の上に紙を置きペンを右手に持ち紙に記入してゆく


(ええっと、名前はシンで歳は五歳、出身地はと、あの街なんて名前だったっけ? さっぱり分からん、魔獣の森でいいや)


必要な事を書き込み、男性に紙を返すシン

返された紙を確認の為に読み上げる男性


「名前はシンで年齢は五歳、出身地は魔獣の森……え?…魔獣の森―――」

驚きながら紙を読み上げる男性


「失礼しました、以上で間違いは無いでしょうか」


「はい、間違いありません」 コクリと縦に首を振るシン


(魔獣の森ってそんなに驚く事なのかな?)


男性は近くに置いてある箱型の魔道具に紙を入れると魔道具の上に付いているボタンの一つを押す、ブーンという音と共に魔道具が動き始める。三分ぐらい時間が経過し魔道具の側面から一枚の黒いカードと腕輪が出てきた。受付の男性は腕輪とカードを手に取るとシンに腕輪とカードを渡し、シンに対して説明を始める。


「まずはシン様、カードに魔力を通してみて下さい」


言われた通りにカードに魔力を通すと、カードが輝き銀色になり、カードには自分の名前、歳、出身地が書かれており、数分するとカードはまた真黒に戻り、書かれた内容も読めなくなってしまった。


「これでシン様の魔力がカードに登録されました、他の人がそのカードに魔力を通してもカードは反応しません、次に腕輪の説明ですが、とりあえず腕輪を付けて魔力を通してみてください」


取りあえず左手に腕輪をはめてみると、自動的に腕輪は左手首の太さと同じになりピッタリとはまり、魔力を通して見ると、腕輪に金貨199と浮かぶ


「こちらの数字は今シン様が商業ギルドに預けているお金の総額です、お金を出し入れしたい時はこちらの受付で出来ます。それと他の国や都市の商業ギルドでもお金の出し入れは出来ます。ちなみにカードと腕輪の発行手続き料として金貨一枚分引かせてもらっています」


「では今後の生活費として金貨9枚と王都の案内本が欲しいのですが」


「では腕輪をこちらに渡してください」


腕輪を取り外し男性に渡すと、腕輪を脇にある魔道具の中に入れると、魔道具のボタンを操作して魔道具の中から金貨9枚と腕輪を取りだす、そして金貨9枚と腕輪をシンに渡す

ポケットに金貨を入れ腕輪を左手にはめる

腕輪に魔力を通すと金貨189枚、銀貨9枚と表示される


「では本を取って来ますので、少しお待ちください」


受付の男性は席を外し、暫くすると本を片手に持ち戻ってきた


「こちらが王都のガイド本になります、値段は銀貨一枚です」


受付の男性に本を手渡され、本の表紙を見ると

リムノスの王都全ガイドと書かれている


「以上で御用と質問は無いでしょうか」


「魔獣の素材や薬草も此処で買い取りをしてくれるのですか」


「はい、一階にある買取所の受付で買い取って貰えますよ」


「そうですか、有難うございます」


「いえいえ、他に何か質問はありますか」


「他には有りません」


「では、ここでの用事は済んだようだね」シンに尋ねるダールトン


「はい、色々と有難う御座いました」お辞儀をし、礼を述べるシン


「私はギルド長と話が有るからこの場で失礼させてもらうよ」

そう言って、三階へと続く階段へと向かうダールトン


一人になったシンは本を開き読みながら一階へ続く階段へ歩いてゆく


(商業ギルドのすぐ隣に宿屋があるのか、先に宿をとった方がいいかな)


本を読みながら階段を降りるシン


(なるほど、なるほど、迷宮では魔獣は死ぬと死体も全部消えて倒した者の経験値に全て変換されるから、死体が残る迷宮の外の魔獣に比べて得られる経験値が多くなるのか)


本を読みながら一階の扉を開けて大通りに出るシン


(王都では馬車による交通事故が多いので注意か、僕も気をつけないとな)


道路の真ん中で本を読むシン

気付くと目の前に馬の蹄が迫る


ドカッ 衝撃と共に吹き飛ばされるシン


(アペッ)と変な声を発しながらキリモミ状態で吹っ飛ばされる


「バカヤロー死にてえのか」叫びながらシンを轢いた馬車は遠ざかっていく


商館の壁に当たりそのまま地面に落ちるシン

少しの間動かないシンに対して、薄汚れた子供と大人が我先にと近付いてゆく

彼らは浮浪者で、倒れて死んでいると思われているシンの身ぐるみを剥ぐつもりなのだ

だがそんな彼らの歩みもシンから一メートル程の場所で歩みが止まる

シンが魔法を発動したのだ


『結界』


シンの周りに見えない壁が展開する


「痛ってー」叫びながら立ち上がるシン

突然立ち上がったシンに驚いて、蜘蛛の子を散らすかの様に離れる浮浪者達

立ち上がり怪我の具合を確かめる


(身体が少し痛む位だ、あれだけの事故でこの程度の怪我で済んでラッキー)


だがシンは知らない、シンの中の神の血の力が、高速を時速200キロオーバーで突き進む車の如く全開バリバリで身体を修復中だということを


(とりあえず身体を休める為にも宿屋に入ろう)


目の前にある宿屋に向い、宿屋の扉を開き中に入る

受付のカウンターには、今にもくたばりそうな老婆が目を閉じた状態で店番をしていた

受付の老婆に向い


「あのー、泊りたいんですが一泊幾らですか」


反応が無い、まるで生ける屍のようだ


少し大きな声で「泊りたいのですが」


またしても反応が無い


小さな声でボソッと「クソババア」シンが呟くと


「誰がクソババアじゃとー」

いきなり目を見開き大声で叫ぶ生きた干物、もといお婆さん


(聞こえない振りをしているのか、子供だと思って馬鹿にされていると思っているのかな、だったら)


ポケットから金貨を一枚出し、老婆に見せつける


「お姉さん、ここに泊りたいんだけど」


老婆の目が カッ と見開き


「おや、お客さんかい、素泊まりなら一泊銀貨1枚、食事付きなら銀貨2枚になるよ」


「食事付きで5泊お願いします」


「はいよ、部屋は二階の203号室だよ」


金貨1枚を渡し、部屋の鍵を受け取ると、自分の泊る部屋へと向かう

鍵を使い部屋の中に入り、部屋を確認すると、部屋の中央にテーブル、その脇にベッドとトイレとシャワー室がある


部屋のドアに鍵を掛け、テーブルにカードと本と魔道具と金貨8枚を置きベッドに横になろうとするが


(地面に横になったから服も身体も埃だらけだ、少しまだ身体も痛むけど先にシャワーを浴びよう)


シャワーを浴びる為に服を脱ぎだすが、パンツを脱ごうとした時にある異変に気付く

パンツの隙間から光が溢れているのが見えたのだ

不思議に思い、一気にパンツを脱ぎ全裸になり、身体を見ると

お尻の方に、紋章の様なものが3個ほど固まりながら輝いている


「ナンジャー コリャー」驚くシン


(やだ 何これ、ちょっと怖い)


紋章を指で突いたり、触ったりして調べてみるが全く判らない

暫く紋章を見ていると


(何かこの紋章カッコイイナ、どうせなら手の甲にでも有れば良かったのに、手の甲だったら指をパチンと鳴らして魔法を発動したら格好良かったのにな)


残念がっていると紋章の一つが移動を開始し、腹を通り右肩を過ぎ右肘を経て右手の甲で止まり、輝き続ける


(おおー 紋章が右手の甲に来た、なんか格好良いな他の二つも動かせるかな、取り合えず一つは左手の甲ともう一つは額でいいかな)


念じると残り二つの紋章は動き出し、額と左手の甲で止まる


(残り二つも来て欲しい場所に来てくれた、なんか嬉しいぞ)


嬉しさの余り、全裸で色々なポーズをして喜ぶシン

傍から見るとその姿は全裸で有る事を除けば、ヒーロー物の真似をしている子供に見える


暫く自分に酔っていると、身体の治療が完了したと共に紋章も姿を消してしまった


(アレ? 紋章が消えた? 紋章カムバック)


念じても紋章は輝き出さないので、諦めてシャワーを浴びる

シャワーを済ませ服を着るが、埃まみれの服なので身体を綺麗にしても綺麗になった感じが全くしないので、替えの服と下着を買う為に部屋の鍵を掛け、受付に部屋の鍵を預けて宿屋を出る


(どんな服を買おうかな)


シンは軽やかに王都の街を歩いてゆく


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