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ドーピング  作者: 銀槍
10/29

ふたつの出会い

あれから一年が過ぎた、

今、僕は小屋の裏側で、犬先生に魔獣の肉の捌きかたを教わっている。


「そうだ、その感じだ、だいぶ上手くなったじゃねえか」


それはその筈だ、もう何十匹ものピーを捌いたり、犬先生が時々持って来てくれる捌く前の魔獣や動物の肉も捌いているからだ。

ちなみにピーは自前だ たまに飛んでくるので、『氷の矢』で打ち落としている。

『爆炎弾』では黒こげになってしまうからだ

おかげでレベルも上がった、この世界では頭の中で念じると、

レベルが頭の中に浮かび上がる。ちなみに僕のレベルは7になった

ピーを捌き終わると、その肉を犬先生に渡す。


「おっ 何時も済まねえな、おかげで近頃は食卓に肉が上がる日が多くなって嬉しい限りだぜ」


「それを言うならお互い様です、薬草に関する本を貸してくれたり、茹でられた魔力草もくれるのですから」


魔力草は、この近くではもう採れなくなっている。

そのため、魔獣の森の奥まで採りに行かなければならない。

だが魔獣の森は、奥に行けば行くほど、魔獣の強さが上がる

魔力草を手に入れる為に、週に一度騎士団で魔獣の森の奥まで採りに行くのだ。


だが、魔力草以外の薬草は、この近くでも採れる。

ぶっちゃけ、この林にも、結構な種類と数の薬草が自生する。

犬先生は、林に薬草を採取に来て、その帰りに僕の所に寄ってくれるのだ。


ちなみに僕も、林で採れた薬草を食べている。

食べている薬草は 力草 と 素早草 だ


力草はその名の通り、食べると力が上がる薬草だ、食べると筋肉が付く

その為、筋肉マニアに結構人気がある。


素早草は、素早さが上がる薬草だ、主に軽戦士や盗賊に重宝されている。


僕は、一年前の騎士との件で、腹に蹴りを入れられるまで全然動けなかった。そのため魔力草だけではダメだと思い、二つの薬草も食べ始めた。二つの薬草も凄く不味かったが、例の方法で簡単に食べられた。


だがしかし、思わぬ副作用が有った。

二歳児にして、体がボディビルダーのようになってしまったのだ。

しかも、腕回りの筋肉が付きすぎて、腰に手が付かず

気お付けが出来なくなってしまった。

それに、力が急激に上がったので、力加減が分からず、

しばしば、コップを握りつぶしたりもした。

そのため今は、素早草と魔力草のみを食べている。


三歳児に成った今では、だいぶ体も元のスリムな体型に戻りつつある。


それと本館の父親だが、10か月程前に王都に呼び戻され、

それっきり帰って来ない、なにかあったのだろうか

まあ僕としては都合がいい、早く一人で生きて行ける力を身に付けて、

この家を出て行かなくてはならないのだから


(こんな僕に親切にしてくれる人達とマリーに、迷惑なんて掛けたくないから)


犬先生と別れ、手を洗う為に、すぐ近くにある小川に向う

小川の水はとても澄んでいて、川底まで良く見える

小川の先には池があり、小川の水は池に流れ込んでいる。


昔は、小川の澄んだ水を利用して、池で猫獣人の大好物である

魚のチラの養殖をしていた事もあったらしい

僕が今住んでいる小屋は、チラの管理をする為に建てられたと、

メイド長さんが教えてくれた。


川の水で、手と顔を洗い口をすすぐ、

小屋に戻り、小屋の軒先に干してある肉の様子を見る

干し肉を作っているのだ。此処まで来るのに苦節数カ月、本当に苦労した

魔法を使い、海から塩を作ったり、手間を考えたら、買った方が早いけど

ぶっちゃけ僕一文無しです ハイ


吊り下げられている肉の一つを手に取り、小屋の中に入る

肉を木箱の上に置き、魔法を唱える


『スライス』


肉の塊が、等間隔で薄く切られてゆく

その内の一枚を手に取り、口に放り込む


(塩だけにしては、まあまあかな)


胡椒やハーブなども欲しかったが、無いものは仕方ない


スライスした干し肉を袋に入れ、ナイフを持ち、部屋を出る

目指す先は、小屋の少し離れた場所にある大きな岩だ


奴 に出会ったのは三日前程だ

試食していた干し肉を、木箱の上に置きっぱなしにしていたら、

何時の間にか無くなっていた。おかしいなと思い、

もう一度干し肉を木箱の上に置いて、隠れて様子を見ると

床下の隅の方の隙間から、モソモソと這い出る小動物が現れる。


少し尖った顔に、長めの胴体、短めの手足、まるでモグラを少しデフォルメしたような愛らしい生き物が、木箱の前まで来ると、後ろ足と短い尻尾を使って器用に立ち、空いた前足で干し肉を掴むと、モシャモシャと食べだした。


その愛らしい姿に、思わず見続けていたが、これ以上干し肉を食べられては困るので、隠れている場所から飛び出すと、モグラもどきはこちらを見てビクッとすると、持っていた干し肉を捨てて床を掛け始める。そして木の床ではなく、土の地面のある場所まで来ると、身体を玉の様に丸めると、まるで吸い込まれるかの様に、土の地面から消えてしまった。


「あれは魔法だ」


どうやらモグラもどきは、魔法を使って地面の中を進んでいた。


干し肉を盗った犯人が判ったので、シンは木箱の蓋を開けて、その中に干し肉を入れ、蓋をして保管する事にした。これならあのモグラもどきも食べられない筈だ。


しかし、予想は見事に裏切られる。

翌朝、シンが木箱の蓋を開けるとそこには、モグラもどきがしたと思われる ウン もとい、排泄物がタップリ入っていた。


さすがにこれにはシンも怒る

モグラもどきを懲らしめるために、罠を仕掛ける事にしたのだ。


岩の少し先に、干し肉のスライスを幾つか置き、自分は岩の上に登る

地面の上に居ると、奴にはシンの居場所が分かるので、中々近付いてこない。

岩の上で、地面に向けて魔法を発動する


『索敵』


地面の下二十メートル程下に 奴 の反応を感じる

干し肉があるのを感じ取ったのか、急速に干し肉に向ってくる

奴と干し肉との距離がドンドン縮まってゆく

やがて奴が、干し肉の真下辺りまで来ると、シンは『雷の矢』の魔法の準備をする 

ちなみに魔法の出力は、気絶する程度に抑えている


そして奴の顔が干し肉の横に、ポコッと現れる 『雷の矢』を発動するシン

だが奴はそれが分かっていたかの如く、ヒョイと飛んでくる矢をかわすと、

干し肉を掴んで地面に消える


シンが残念がっていると、地面から奴のお尻だけが出て、シンを馬鹿にするかのようにフリフリとお尻をふり続ける。


その態度に、流石に頭に来たシンは、


「お前だけが地面を潜れると思うなよ」と、お尻を振り続けている奴に言い放ち


『土中潜行』


シンは魔法を発動する。土が水の様に感じる様にイメージする。


そしてプールのジャンプ台から飛ぶかの如く、

岩から飛び出し、地面へ頭を向けて飛び出すシン

シンの手と頭がスゥと地面へと消える、魔法は成功したが、

ガン という凄まじい衝撃をシンは頭に感じ、意識が飛びそうになる

身体は首から上が地面の上に出た状態で止まっている

さながら、地面から逆さまに生えている人間の木のようだ


地面の下には土だけではなく、大小様々な岩も存在する、シンはたた土だけを液状化にしただけで、岩などはそのままにしてしまった。だから地面の下にあった岩にぶつかってしまったのだ


今回は完全にシンの負けだ

頭部に出来たタンコブを気にしながら

トボトボと小屋に帰ると、『土中潜行』の魔法について考える


「まず、土と岩を水の様に考えるのはいい、でも問題はそこからだ。 水の中と同じだから、息継ぎの必要もあるし、奴を捉える 索敵の魔法もし続ける必要もある。更に奴は、土の中をかなりの速さで突き進む、それに対する対策も必要だ


四つの魔法を同時に発動し続けなければ、奴には勝てない


今のシンでは、三つまでが限界だ、それに魔力総量の関係もある

魔法を四つも使い続ければ、魔力総量はかなりの速さで減少する


今シンが出来る事は、幾つもの魔法が同時に使えるようになる訓練と、

身体能力の向上を図る事だ。


翌朝からシンは小川に向い、小川の辺りで、


『索敵』 『生体循環』 『遠視』を発動する


生体循環の魔法は、常に自分の状態を万全にする魔法であり

遠視の魔法は言葉の通り、遠くが良く見える魔法だ

その三つを発動しつつ


小川を流れる木の葉に向けて 『振動波』の魔法を発動する


振動波の魔法は、相手の周りにある物質を振動させて、

相手にダメージを与える魔法だ


発動された魔法は、木の葉を破壊せずに、木の葉の周りの水に当たり

小川の水面を波立たせる


(最初から上手くはいかないか)


ふとそんな事を考えると、すぐに掛けていた三つの魔法も解けてしまった。

まだまだシンの特訓は始まったばかりである。




・・・・・一年後


シンは四歳になった、もはや川辺での特訓は習慣になってきている

結局、干し肉は全部モグラもどきに食べられてしまった。

だが特訓のかいがあり、シンはなんと同時に十以上の魔法を唱える

事に成功していた。

では何故奴に戦いを挑まないかというと、魔力総量が圧倒的に足りないのだ

今現在シンの魔力総量は12000あるが、魔法を四つを同時に使うと、

約二十分程で底を尽く、地面の下で魔力が尽きるという事は、死につながるのだ


だがシンは知らない、自分が如何に異常かという事に


通常普通種の人間の限界魔力総量はレベル250掛ける10の2500となる

その状態で魔力草を食べてもそれ以上は上がらないのである。

しかも普通、魔法は同時に幾つも使用する者はいない。


(奴は強い、もっと魔力総量を増やさなくては)


今日も特訓に精を出すシン

特訓の最中に、『索敵』の魔法に何かが引っ掛かった

それは川の水が池に入る寸前の川の底、水草の隙間にあった

20センチ位の長さの筒の物体を発見した。


『水流操作』


シンは魔法を発動し、川の水を操作して、川底にある筒を水面へと導くシン

水面に浮き出た筒を手に取ると


『解析』の魔法を発動する


<魔道具 イメージした物を魔力によって具現化する道具、初期設定はムチ>


(つまり、ただ何も考えずに魔力を込めればムチになるのか)


試しに、筒に魔力を込めてみる。筒の先から青白い光を宿したムチが現れる

ただ子供が振るうには長すぎる。シンはムチに動けと念じる

するとムチはシンの意思を受けて、シンの思い道りに動き出す。


(スゴイぞ、この魔道具 なんでこんな物がこんな所にあったんだ?)


シンは今度は頭の中で、剣を思い浮かべながら魔力を込める

すると今度は、手の中に剣が現れる

シンは近くの木に寄り、その木に向って剣を叩きつける。

剣はカンという音と共に、木に弾かれてしまう。

今度は何でも斬れるとイメージを加えながら剣を振り下ろす。

すると木は、スパッ という音と共に、真っ二つになってしまった。


(これは凄い、これなら奴に勝てる)


シンはこの筒が他に何が出来るのか、試してみることにしました



・・・・・・・そして・・・・・


更に一年が経ち、シンは五歳になり、遂に奴との闘いの時が来た。

この日の為に、干し肉をわざわざ作り、例の岩場の近くの地面に

干し肉のスライスを数枚置いて、奴を待ちます


 『索敵』の魔法を発動して奴を探す


いた、奴は久しぶりの干し肉に喜び、すでに干し肉の直ぐ側まで来ている

奴が顔を出すと同時に、筒に魔法を込める


込められた魔力に反応して現れたのは、数十本もの細い魔力の糸だ

糸の先には、マジックハンドみたいな小さな手が付いている

その無数の糸が一斉に奴に迫る

その様子に驚いたモグラもどきは、すぐに地面の中に逃げ出す


( だが、逃しはしない  )


無数の糸も奴を追って地面の中に入って行く

すると、今までの事がウソだったかのように、アッサリと奴を捕まえる事が出来た

糸でがんじがらめに縛られているモグラもどきを、自分の目の前に持って来させる

モグラもどきは、恐怖に怯えている。そんな奴に向ってシンは、


「勝手に人の物を食べたらダメだろ、欲しかったら、ちゃんと下さいとお願いしないとね」


軽くモグラもどきを小突くと、糸から解放する

そんな様子を、ポカンとした感じで立ちつくすモグラもどき


シンは立ちつくすモグラもどきを無視して、小屋に向って帰る。


そして次の日、目覚めたシンの目の前に、沢山の果物が置いてあった。


シンとモグラもどきは、友達になった。


感想有難うございます。

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