「え? 魔力なんているかよ!」魔法を女の子のように扱って極大魔法を放つ追放令息、ハッタリとパフォーマンスで伝説の賢者となる
「お前は追放だ」
その言葉に俺は戸惑う。
「当たり前だろう。この魔法が絶対の世界で魔力が無いお前になんの価値がある?」
「いや、でも魔法は使えます」
俺は懸命に言い繕った。
「しょせん、初級魔法程度だろ」
「いえ、少し時間がかかりますが、大きな魔法が使えるんです。やってお見せしますよ」
俺がそう言うと、父の侯爵は、疑い深い目で俺を見ている。
「そこまで言うなら、見せてみよ」
侯爵はしぶしぶながら俺の言うことを聞いてくれた。
☆★☆
「ブータよ。まさかそんな格好で魔法を使うつもりか?」
侯爵が呆れて言う。
何しろ俺は自分でもこれはダメだと分かる格好をしていたからだ。
派手なローブ。長すぎるとんがり帽子。手には明滅する杖。
どれも目立つことに特化させた特注品だ。
「はい。少しアレですが、これは俺が研究で得た最適解。魔法に俺を注目させるための、儀式様式なのです」
俺は頭の固い親父にも分かるように説明する。
「馬鹿な。儀式魔法など聞いたこともない。魔法は魔力でねじ伏せて操る技術だ」
親父の言うことは確かに一般に言われていることだ。
「お父上。魔法に魔力など必要ないのです。魔力は魔法を起動させるきっかけに過ぎないのです」
「馬鹿な。ならば魔力が無くとも魔法が発動してしまう。魔力量が貴族の価値のようなもの。お前は貴族制度そのものを否定するのか?」
侯爵が目を怒らせて言う。
「そんなつもりは全くありません。魔法の特性を正しく理解しようとしているだけです。
体制批判など俺ごときがするつもりはありません」
「何を言い出すかと思えば、危うい思想を持ち出しおって、お前の話など聞く耳は持たん。
お前などどうせ派手なパフォーマンスをして目をくらませることでも考えていたのだろう。
もう良い!」
侯爵は、疲れ果てたと言う顔でその場を後にした。
その背中が見えなくなってから俺はつぶやいた。
「親父、“目をくらませる”と言う部分は合ってるぜ」
俺はそう言うと、魔法の詠唱を始めた。
そう、これも魔法の目を騙すためのパフォーマンスだ。
魔法は俺をじっと観察している。
だって、こんなに派手なんだからな。
「魔法よ! 汝は、偉大なり!」
俺は考案した、恥ずかしくなるような単語を大声で唱え始める。
聞けよ
聞けよ
お前ら
俺はここにいるぞ!
「火の大王よ。炎の嵐を顕現せよ!」
俺は、何度も何度も「魔法」に呪文を唱え、理解させてきた。
俺の最後のワードが空中に広がると俺が突き出した杖から、大空に向かって巨大な火柱が立ち上がった。
それは、大賢者の放つ、極大魔法よりもはるかに強大な魔法だった。
☆★☆
自室に戻った侯爵は、窓からブータの様子を見ていた。
そして極大魔法が天に向かって放たれに。そのあまりの光景に彼は腰を抜かして床に座り込んだ。
「セバス。あれはなんだ?」
老紳士がすっと現れた。
「はい。お坊ちゃんの魔法ですね。しかしあれは異常ですね」
執事のセバスが目を大きく開いて言う。
「いや、おかしいだろ。魔力なしがあんな魔法を放つなんて。ありえん」
侯爵が抗弁するが力が無い。
「と、申されても私には分かりかねます。魔法は貴族の特別な力。魔力と言われましても我々一般庶民には、理解できません」
「何をとぼけたことを、お前も貴族で魔力持ちだろうが」
侯爵が反発する。
「いえ、私の魔力量など旦那様に比べたら大したことはありませんよ。
なによりもお坊ちゃんは、日夜魔法の研鑽に励み、私などに詠唱魔法と言う特別な技術を教えてくださいました。
知らないのは旦那様ぐらいなものですよ。
時代は変わるのかもしれませんな」
老紳士の淡々と語る言葉に、侯爵はただ口を大きく開き、呆然とすることしかできなかった。
後にブータが有名になってから侯爵家は優秀な彼を追放したと名声を失いその後、落ちぶれていく。
そして、その日から半世紀。
彼は、魔法理論の革命児と言われ、詠唱魔法、魔法陣理論を完成させ魔法理論の父と呼ばれるようになる。
完
世界を変革する伝説の魔法《世界魔法》。
それを使えるのは、彼ひとりだけ。
なぜか?――答えは下へ




