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9話 真実


「…そろそろ来るか」


俺は古文書から目を離して一息ついた。時計を見ると

既に3時間ぐらい経っている。そろそろ昼食の

時間だ。


(昨日、町へ行った時に美味しそうな店がたくさん

あったな。パン、ハンバーグ、パスタ………何でも

いいから食べたい)


「セト兄さん!」


「来たか」


ノヴァには嬉しそうに走りながら、俺の向かい側の

席に座った。


「有力な情報が得られたってホント!?」


「ああ。この古文書に書かれてある文字を読んで

 みろ」


「ん〜?」


………読めない。本当に何を書いているのか分から

ない。暗号みたいだ。


「…えっと、読めない」


「簡単に言うと、1000年前にヴァルグリアスという

 化け物を封印した時にその体を6つに分けた。

 それが『戒めの体』。簡単に言えばそんな内容だ」


「こんなよく分からない文字よく読めるね……でも、

 似たようなことをアンゴルキア王から聞いたよね」


「ああ、まぁ化け物の名前がヴァルグリアス

 というのは知らなかったがな。問題は次だ」


兄さんは丁寧にページをめくった。


「『戒めの体』は世界に散らばった。魂も含めてな」


「魂?ねえ、その魂ってアンゴルキア王の中に居る

 奴かな?」


「王は古の戦いで敗れた化け物と言っていたから、

 まず間違いないだろう」


「ヴァルグリアス、かぁ……」


その瞬間、僕は背筋が凍るようなことを想像して

しまった。


「…あーのさ、兄さん。もし、もしだよ?僕達が

 普段接してる方がその化け物だったら………?」


俺は、はっとしてノヴァの方を振り向いた。


「『戒めの体』を探している理由が自分の本当の体を

 取り戻すためだとしたら……?」


セトは嫌な想像した。彼はその想像を消し飛ばすかの

ように、ノヴァの言葉を遮った。


「待て。それはあくまでも憶測に過ぎない」


「うん。まあ…そうだね」


(だが辻褄が合う。となると、『戒めの体』を集めるな

と言った方が本当のアンゴルキア王なのか……?)


分からない。これだけの情報では何とも言えない。


「僕の方はあんまり良い情報がゲットできなかった

 かな。一応この4冊は借りたけど」


「何が書いてたんだ?」


「暗号?かな。さっき兄さんが読めてた古代文字

 みたいなやつ。どうしても読めなくてさ」


「見せてみろ」


ノヴァは本を開いて俺に見せた。どうやら古文書に

書かれていた古代文字と同じもののようだ。俺は目を

凝らしてよく見てみた。


「『鎖で繋がれた全てのパーツが揃いし時、現世と

 冥府が混ざる。その時、世界は再び滅びの道を

 辿るだろう』……この一行以外はかすれて読め

 ないな」


「パーツ…それって『戒めの体』のことかな?」


「だろうな…いや、待て。だとすると……

『戒めの体』は集めてはいけないんじゃないか?」


「!そ、それって……今の…普段、僕達と接している

 王はーーー」


        『化け物(ヴァルグリアス)


「っ…くそっ!何が富と名声を手に入れられる、だ!

 俺達が今まで失敗していたから良かったものの、

 手に入れていたら……」


兄さんは本が軽く浮くぐらいの力で机を叩きつけた。


「ある意味ロファーに邪魔されてて良かったね…

 これからどうすればいいのかな。アンゴルキア王に

 逆らったらダメだろうし……」


「……任務を全部失敗するのはどうだ」


「ダメだよ、そろそろ本気で怒られちゃう。

 このことをソフィア女王に伝えるってのは

 どうかな」


「それだとあの人を巻き込んでしまう」


2人はお互いの顔を見つめたまましばらく考え込んで

いた。誰にも迷惑がかからず、アンゴルキア王に

不審がられない方法を。


「……兄さん、僕もう無理」


「奇遇だな…俺もだ」


ノヴァは椅子を倒して立ち上がった。


「腹が減ってちゃ何にもできない!ね、ご飯食べに

 行こうよ!」


「ああ、昼飯を食べ終わったらまたここへ調べに

 来よう」


「何食べる?あっ、そういえば昨日大臣さんから

 金貨貰ったんだっけ」


「2人合わせて金貨1000枚……店1つ買い占めても

 余裕でお釣りが来るレベルだな。今なら何でも

 食べられる」


「じゃあナポリタンとハンバーグとカレーと…あとは

 サンドイッチも食べたいな」


「そんなに食うのか……お前、胃袋は大丈夫なのか」


図書館を出た時の太陽の光は異様に眩しかった。

僕達の何とも言えない気持ちを晴らしてくれるんじゃ

ないかって思えるほどに。


「13時か……丁度混んでる時間だね」


周りを見渡すと、どこの店も行列ができていて

入れそうになかった。


「どこも待ち時間が多そうだな。どうする?」


多種多様な食べ物の匂いの中から、不意にパンの

匂いが鼻についた。


「……パン。僕、パンにする!」


「パン?」


ノヴァが指差す方向には行列はできていないものの、

賑わっているパン屋さんがあった。ショーケースの

中にはクリームパン、サンドイッチ、そして一際目を

引く、スターチャ・ロットという聞き馴染みのない

名前のパンがあった。


(何だアレは……)


「行こうよ兄さん!」


俺はノヴァに手を引かれるがまま、店に入って

いった。


<カランカラン>


「いらっしゃいませー」


店の扉を開けた瞬間、焼き立てのパンとバターの

匂いが鼻をくすぐった。店内は温かい橙色の光で

照らされていて、落ち着いた雰囲気を醸し出して

いた。


「何食べよっかな〜」


ノヴァはショーケースの中の黄金色に輝いたパンを

吟味している。そういえば、さっき見かけたよく

分からない名前のパンはどこだろうか?


「兄さんは何探してるの?」


「実はさっき、変な名前のパンを見つけてな。

 気になっていたんだ」


「あ、もしかしてこのスターチャ・ロットっていう

 やつじゃない?」


「ああ……これか」


そのパンは不思議な形をしていた。他のパンより

一際大きく、星型でふっくら膨らんでいる。簡単に

言えば、星型のピザと言った所だろうか。しかし、

中身は見えない。


「あの、これの中身って何ですか?」


「こちらにはベーコンとチーズ、トマトなどが入って

 おります。どの食材も国産なので、当店のオススメ

 商品なんですよ」


「ふ〜ん…兄さん、コレ一緒に食べようよ。この

 大きさじゃさすがに1人で食べきれなさそう

 だからさ」


「ああ」


「じゃあコレと、クリームパン3つ。あとはチョコ

 入りクロワッサン下さい。飲み物はオレンジ

 ジュースで」


「かしこまりました」

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