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ほんの一晩ことりと寝こけて、ひとりで起きてきたオリヴァーに私……レイラはできるだけ何もなかったように挨拶をした。
“今度”の彼は、私を『母さん』と呼んだ。前の仰々しい呼称に比べたら、ずいぶんとマシである。
「………」
「………さっきから視線がうるさいぞ、シャーロット」
そうメイドを少し睨むと、彼女は心底楽しそうに「ふふ」と笑った。
「だって面白いんですもの。レイラ様、かなり頑張っておられるものですから」
「うるさい」
言葉選びや普段の会話から、彼女が、私の幼い頃や成長過程を知っているということは分かっている。
本人も隠そうとは思っていないらしく、案外あっさりと肯定した。ただ、私の両親については全く知らないという。
この館で1番秘密が多いのは、彼女だったりするのかもしれない。