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僕………は、誰だっけ。
まどろむ頭で、誰かに呼ばれた気がして、目を開ける。
ベッドと、机、椅子、本棚。それだけの簡素な部屋だ。どこだろう、ここ。
いや、知っている。僕はここを知っている。
ただよってくる匂いの場所も、そこに立っているであろう人のことも。
知っているけれど、何も知らない。
足が勝手に階段を降りた。少しだけ鼻をつくような匂いがして、顔をしかめる。
「起きたか」
柔らかい声に顔を上げた。少しぎこちない微笑みを浮かべた女の人がいた。
「お前はオリヴァー、私の子。私はレイラ、お前の母だ」
「かぁ、さん」
お気に召す呼称だったらしく、どこか満足げに彼女は頷いた。
「腹が減っているだろう。すぐにご飯にしよう」
母さんの言葉に返事をするように、僕の腹が音をたてた。